著者
東 政明 小林 淳 石田 裕幸
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

細胞内外の水輸送を司る分子が,細胞膜にあるアクアポリン(水チャネル)である。生物の水やイオンのバランス維持は,細胞が有する必要不可欠な機能で,昆虫は小さな体でありながら,そのごく少量の体内水分をアクアポリンを介して効率よく循環させ,からだの乾き(渇き)を防いでいる。水を唯一の輸送溶質とするアクアポリンの基本的な性質に加え,細胞膜に対して通過性が高いとされる非電荷溶質(グリセロール・尿素等)をも通過可能な多機能タイプ(アクアグリセロポリン)の同定と特徴付けを,カイコおよび他昆虫を用いて実施した。さらなる分子機能を調査するべく,単純な小胞系やリポソーム系の確立をめざした。
著者
小島 友宏 塩見 邦博 石田 裕幸 梶浦 善太 中垣 雅雄
出版者
社団法人 日本蚕糸学会
雑誌
日本蚕糸学会 学術講演会 講演要旨集 日本蚕糸学会第72回学術講演会
巻号頁・発行日
pp.137, 2002 (Released:2004-02-03)

カイコの休眠ホルモン(DH)遺伝子の食道下神経節(SG)における発現はわずか14個の神経分泌細胞に限定される。このようなDH遺伝子の細胞特異的発現調節機構は先に形質転換キイロショウジョウバエで解析され、FXPRLアミドペプチド産生細胞において特異的な発現に関わるシスエレメントが同定された。さらに我々は組み換えAcNPV(rAcNPV)ベクターを用いた迅速かつ簡便なレポーター遺伝子発現解析システムを開発し、カイコ個体でのDH遺伝子の発現解析を進めた(日本蚕糸学会中部支部第57回·東海支部第53回研究発表会にて発表)。こうした解析系を用い今回はシスエレメントの同定を試みた。カイコはN4系統の5齢幼虫、および蛹を用いた。BAC-TO-BACバキュロウイルス発現システム(インビトロジェン)により12種類以上のDH遺伝子上流域を削除したコンストラクトを持つrAcNPVを作製した。rAcNPVをカイコに注射後、SGにおけるEGFPおよびDsRedの蛍光を観察した。その結果、形質転換キイロショウジョウバエで明らかにされたシスエレメントとは異なる領域もDH遺伝子の発現に関わっていることが分かった。
著者
廣安 知之 石田 裕幸 三木 光範 横内 久猛
出版者
同志社大学
雑誌
同志社大学理工学研究報告 (ISSN:00368172)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.24-33, 2009-04

一般的な進化的多目的最適化手法は、目的数の増加に伴い、導出される解集合の精度が著しく悪化する。この問題に対し、選択圧の強化、探索領域の削減、評価指標の利用など、様々な進化的多目的最適化手法の改良が行われてきた。そこで本稿では、これら手法の探索の様子を確認することにより、多数目的最適化の問題点について述べた。多数目的最適化における探索の問題点は2種類に分類される。1つ目は、パレート最適フロントへの収束が難しいことである。これは、探索中の選択圧の低下や、目的関数空間の広さに対する探索解数の少なさによってもたらされることを確認できた。2つ目は、探索解集合の多様性維持が難しいことである。選択圧を高めることによりパレート最適フロントへ収束したとしても、解集合の多様性が失われてしまうことを確認できた。これらの問題点を考慮し、探索領域を削減する手法の例として、意思決定者の選好情報を利用する手法の探索を確認したところ、解集合の精度と多様性にはトレードオフの関係がみられた。Well-known Evolutionary Multi-objective Optimization (EMO) algorithms, such as NSGA-II and SPEA2, show rapid degradation of accuracy with increasing number of objectives. To solve this problem, EMO algorithms have been modified by strengthening selection pressure, limitation of search area in the objective space, and use of indicator functions, etc. Here, we describe the difficulties of the search in many-objective space by examining the search of some modified EMO algorithms. The difficulties can be divided into two classes. The first is the difficulty of convergence toward the Pareto-optimal front, which was confirmed to be due to weak selection pressure and disproportion between the extent of search area and the number of solutions. The second is the difficulty of diversity maintenance; it was confirmed that the solutions lost their diversity even if they converged toward the Pareto-optimal front by strengthening the selection pressure. For these difficulties, we examined the search of a preference-based algorithm as an example of a strategy limiting the search area. We demonstrated a trade-off relation between accuracy and diversity through computational experiments.