著者
鈴木 泉 山本 正悟 塩山 陽子 藤田 博己
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
日本衛生動物学会全国大会要旨抄録集 第57回日本衛生動物学会大会
巻号頁・発行日
pp.59, 2005 (Released:2005-10-17)

陸生ヘビ類へのマダニ寄生例に関する報告は少ない.そこで,宮崎県宮崎市内の1地域(K渓谷)でヘビ類を捕獲し,その種類と寄生マダニについて調査した.ヘビ類捕獲時に触診法と視診法でマダニ寄生が確認された場合には,飽血までヘビ類を飼育してマダニを採取した.また,マダニ付着を認めない場合も,許される範囲で約2週間飼育し,寄生の有無を確認した. 調査地域ではシマヘビ,ヤマカガシ,アオダイショウを主体に7種類のヘビの棲息が観察されている.今回,ヤマカガシ,マムシ,アオダイショウでマダニ寄生が認められたが,寄生種はタカサゴキララマダニ若虫のみで,成虫や幼虫の寄生は確認されなかった.また,フラッグスィープ法で行なった同地域のマダニ相の調査では,チマダニ属が優勢で,タカサゴキララマダニの採取例は希であった. 以上の結果から,ヘビがタカサゴキララマダニの生活環の中の一部に含まれていること,ヘビ捕獲法がマダニ相の調査に有用なことが示された.
著者
梶 光一
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
日本衛生動物学会全国大会要旨抄録集 第57回日本衛生動物学会大会
巻号頁・発行日
pp.1, 2005 (Released:2005-10-17)

大型草食獣は、個体数の激減後や環境が好転した場合、新たな好適な環境に持ち込まれた場合などに、環境収容力と個体数のギャップに反応して爆発的に増加すること、その結果、植生を破壊して餌不足に陥り、群れの崩壊が生じ、その後低密度となる、という食物仮説が一般に支持されてきた。しかし、実証的な研究は限られていた。そこで、エゾシカの個体数変動のパターンとメカニズムを明らかにするために、1980年代から洞爺湖中島や知床半島でモニタリングを開始した。もともとエゾシカが生息していなかった洞爺湖中島(面積約5平方キロ)には、1950_から_60年代に3頭が導入され、20数年間にわたって年率16%で増えつづけ、1983年秋に60頭/平方キロとなって植生を破壊し、翌冬大量死亡が生じた。群れの崩壊後、冬期の主要な餌であったササが食い尽くされて消失したにもかかわらず、それまであまり利用していなかった落ち葉に依存しながら年率6%でゆっくりと増加し、2001年には84頭/平方キロと初回のピークを越える高密度となり、その後再び群れの崩壊が生じている。一方、知床岬のエゾシカは1970年代初頭に再分布し、年率20%で増加を続け、1998年には118頭/平方キロと個体数のピークに達し、翌年冬に大量死亡が生じた。その後も個体数の回復と減少を繰り返し、増加率は冬期の気象の影響を受けている。これらの事例は、新天地や好適な環境では、低密度から出発した場合に爆発的な増加が生じること、餌資源制限と冬期の気象条件の組み合わせが個体数を調節していることを示唆している。洞爺湖中島や知床半島で見られたような爆発的増加は、1990年代に北海道東部で、2000年以降には北海道西部地域で生じている。増えすぎたエゾシカは、深刻な農林業被害のみならず、天然林の樹皮剥ぎ、列車事故、交通事故等の増加をもたらしている。また、最近では国立公園などの保護区において、自然植生に悪影響を与えるようになった。これらの問題に対処するために、北海道では1998年に農林業被害の軽減、絶滅回避、安定的な生息数水準の確保を目的とする「エゾシカ保護管理計画」を策定して、個体数の削減に努めている。 北海道では、エゾシカの分布域は生息数の回復と増加にともなって過去30年間に拡大を続けた。1980年代までは積雪が少なく、冬期の餌として重要なクマイザサとミヤコザサ地帯である北海道東部を中心に分布域が広がっており、シカの生息に不適当な多雪地である道西部と道南部を除いて、潜在的に分布可能なほとんど全ての地域に分布していた。しかし、1990年代に入ると、暖冬による積雪の減少とエゾシカの個体数増加に伴う個体群圧の影響によって、道西部地域にも急速に分布域が拡大したことが明らかになった。