著者
市嶋 典子
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.142, pp.134-144, 2009 (Released:2017-04-25)
参考文献数
5

本稿では,M-GTA(修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ)によって,学習者の相互自己評価活動に対する認識を調査・分析した。分析からは,学習者らが,学習者同士が互いに行うという相互自己評価活動に対して心理的負担を抱きながらも,これらの葛藤と向き合い,評価を再解釈していくプロセスを生み出していったこと,自身の価値観が変化したことに意義を見出し,この変化を将来の日本語学習への動機付けとして位置づけるようになったことが明らかになった。一方で,このように相互自己評価活動に対して意義を感じつつも,不満も抱いていることが明らかになった。以上の分析結果を踏まえ,相互自己評価活動の意義と課題を考察した。
著者
市嶋 典子 Noriko ICHISHIMA
出版者
国立国語研究所
雑誌
日本語教育論集 (ISSN:13469762)
巻号頁・発行日
no.25, pp.3-17, 2009

早稲田大学本稿では,日本語教育学会の学会誌『日本語教育』に掲載された「実践研究」の質的変化を分析し,問題点を考察した。分析の結果,(1)1966-1979年には,「実践と教育理論の関わりをそれほど重視しない」論文が掲載されていた,(2)1980-1989年には,教授法や理論を前提とした論文が現れた,(3)1990年以降,(2)の研究に加え,仮説検証型,実験型の研究や,教室内でのインターアクションや自己の内省に基づいた論文も見られるようになってきた-という傾向が浮かび上がってきた。また,問題点としては,多くの論文が,自身の教育観や教育実践のプロセスを示すデータ・次の実践への示唆を明らかにしていないという点が明らかになった。
著者
市嶋 典子
出版者
秋田大学国際交流センター
雑誌
秋田大学国際交流センター紀要 (ISSN:21869243)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.1-20, 2016-03-01

本稿では,シリアの元日本語教師,日本語学習者の語りに焦点を当て,彼女たちがなぜ日本語を自身の人生と結びつけて考えるようになったのか,紛争という社会的状況が彼女達の人生にどのような影響を与え,いかなる市民性を形成させたのかを考察する。その上で,日本語教育が果たす役割を問い直し,平和構築としての日本語教育の可能性を主張する。
著者
市嶋 典子
出版者
秋田大学
雑誌
秋田大学国際交流センター紀要 (ISSN:21869243)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.43-52, 2012-03

本稿では,対話的読解授業を通して,学習者は,「文化」という抽象的な概念をどう解釈したのか,学習者の書いたレポートの分析を行うことによって明らかにした。その上で,本授業の意義と課題を主張した。学習者のレポートを分析することによって,学習者の文化観,(1)集団の傾向性とて捉える視座,(2)文化相対主義的な視座,(3)可変的で多様なものとして捉える視座,(4)体験の中で作られていくものとして捉える視座,(5)他者との関係性によって作られていくものとして捉える視座が明らかになった。また,様々な読み物を読み,対話を重ねることによって,学習者の間に文化を集団の傾向性として捉えることに対する批判性が生まれ,文化を可変的で多様なもの,他者との関係性によって作られていくものとして捉える視座が生成されていったことを示した。