著者
長濱 章雄
出版者
学校法人順正学園 九州保健福祉大学大学院社会福祉学研究科
雑誌
最新社会福祉学研究 (ISSN:18809545)
巻号頁・発行日
no.1515, pp.15-24, 2021-03-31

本研究における障害者支援施設でのセレクトメニューの取り組みは,利用者への食事の楽しみとともに基本的な生活における自己決定の機会として提供されている.メニューを選択する際に,知的障害者の自己決定はどのように実施されているのかを,メニューの聞き取りを行っている担当者に対しアンケート調査を実施した.その結果,知的の障害が重くなるほど,能力的に自己決定が難しくなる傾向と共に,支援者から見た能力にばらつきがでることが確認された.最重度知的障害者自身による自己決定の困難さを支えるためには,支援者間における能力評価の共通性と,自己決定に至るまでの意思決定支援に配慮する必要性の高さが示唆された.併せて自己決定された自己には,どの程度支援者の影響を受けているのかを検証することが今後の研究課題とされた.
著者
三宮 基裕
出版者
学校法人順正学園 九州保健福祉大学大学院社会福祉学研究科
雑誌
最新社会福祉学研究 (ISSN:18809545)
巻号頁・発行日
no.15, pp.25-32, 2021-03-31

住宅政策としての高齢者住宅整備のあり方を示す知見を得るために,高齢期の転居の意向に影響を与えている要因を探るアンケート調査を実施した. 転居に対する抵抗感と転居願望により「消極群」「継続群」「葛藤群」「不安群」「積極群」に分け,クロス集計分析によって各群の特徴を捉えた.また,自由記述回答をカテゴリーに分けて整理し,転居に対する意識の構造化を試みた. 男性は女性に比べて消極群・継続群の比率が高く,市部居住者に比べて郡部居住者は継続群の比率が高かった.また,不安群,積極群において転居に不安を感じている者が多かった.自由記述の内容から38ラベル10カテゴリーが抽出でき,カテゴリーを関連付けて高齢期の転居に対する意識の構造化をおこなった.
著者
武田 誠一 Takeda Nobukazu
出版者
吉備国際大学大学院社会福祉学研究科
雑誌
最新社会福祉学研究 (ISSN:18809545)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.93-99, 2014-11-18

本研究では,特定事業所加算を取得している居宅介護支援事業所の「管理者」が「主任介護支援専門員」のどの役割を重要と捉えているのか,またその役割が機能しているかを明らかにするため,新潟県内の居宅介護支援事業所の「管理者」(210ヶ所)に対して郵送によるアンケート調査を実施した.結果,有効回答は81ヶ所(38.6%)であった.居宅介護支援事業所の「管理者」は「主任介護支援専門員」に対して以下の2点を期待していることが判明した.1.「事業所内」での他の介護支援専門員への教育的な役割.2.「事業所外(地域)」で「主任介護支援専門員」の能力の発揮すること.しかし,2点目の「事業所外(地域)」での役割については,十分に機能しているとはいえないことも明らかになった.In the present study, a questionnaire survey has been carried out by postal mail to Managers of Home Care Support Offices within the Niigata Prefecture (210 offices), in order to clarify what roles of a Senior Care Manager, the Managers of Home Care Support Offices that are qualified as designated offices, regard as being important ones, and whether or not those roles are effectively functioning. As a result, valid responses were obtained from 81 offices(38.6%). The survey revealed that Managers of Home Care Support Offices were expecting the following 2 roles from Senior Care Managers 1. An educational role in regards to other care managers within the office. 2. Exercise their abilities as Senior Care Managers outside the office(in the community). However, the survey also revealed that the role outside the office(in the community) stated in 2 above is not functioning satisfactorily enough.
著者
三宮 基裕
出版者
学校法人順正学園 九州保健福祉大学大学院社会福祉学研究科
雑誌
最新社会福祉学研究 (ISSN:18809545)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.25-32, 2021-03-31

住宅政策としての高齢者住宅整備のあり方を示す知見を得るために,高齢期の転居の意向に影響を与えている要因を探るアンケート調査を実施した. 転居に対する抵抗感と転居願望により「消極群」「継続群」「葛藤群」「不安群」「積極群」に分け,クロス集計分析によって各群の特徴を捉えた.また,自由記述回答をカテゴリーに分けて整理し,転居に対する意識の構造化を試みた. 男性は女性に比べて消極群・継続群の比率が高く,市部居住者に比べて郡部居住者は継続群の比率が高かった.また,不安群,積極群において転居に不安を感じている者が多かった.自由記述の内容から38ラベル10カテゴリーが抽出でき,カテゴリーを関連付けて高齢期の転居に対する意識の構造化をおこなった.
著者
藤原 幸子
出版者
学校法人順正学園 九州保健福祉大学大学院社会福祉学研究科
雑誌
最新社会福祉学研究 (ISSN:18809545)
巻号頁・発行日
no.15, pp.33-40, 2021-03-31

本研究は,犯罪被害者等に対するインターネット調査を通じて,被害後の実態,二次被害の実態,被害後に必要な支援等を明らかにすることである.調査は,犯罪の被害にあったことのある200名の男女を対象に実施した.犯罪被害者等の半数以上の者が心身の被害を訴え,身体的心理的影響が生活機能の低下をもたらしていることから心理面だけでなく生活面の支援の拡充が求められる.犯罪被害者等は,複数の人や機関等から二次被害を受けた人も多く,社会,専門機関,被害者に対する啓発を行っていく必要がある.事件後に必要な支援は,事件直後は様々な手続き等の支援への要望が多く,時間が経過するにつれて精神的なケアの要望が多くなる.犯罪被害者等が被害から回復するためには,時に長い時間を要し,犯罪被害者等のニーズは変化する.そのため,ソーシャルワーカーは長期的に支援するという犯罪被害者等の視点に立った支援が求められる.
著者
大谷 明弘 林 典生 おおたに あきひろ はやし のりお Akihiro OTANI Norio HAYASHI
雑誌
最新社会福祉学研究
巻号頁・発行日
vol.13, pp.15-27, 2018-03-31

本研究は, 認知症に伴う行動・心理症状(Behavioral and Psychological Symptoms ofDementia:以下,BPSD)の背景因子を捉えるためのケアの視点を明らかにするためにCiNiiおよびJ-STAGEを活用した文献研究を実施した.論文145本が対象となり,更に先行研究に基づき5要因(身体的要因,精神的要因,環境的要因,個人的要因,介護者要因)を抽出し,その後分類した.分類結果は,①BPSDの現状把握のための背景因子,②介護施設の現状,③実践的アプローチの現状の3つになった.この結果から,施設での多忙な業務の中でも5要因に着目することでBPSDの背景因子を推定できる可能性が明らかになった.また,介護負担感の概念の広さが,隣接する研究領域に重複させ,分類を困難にしている理由として考えられた.今後は,介護負担感の概念整理と共に本研究で明らかになった5要因に基づく背景因子の推定を実施した上でのケアが,利用者のBPSD減少やQOL向上,更に介護職員の介護負担感に与える影響を明らかにする必要があるIn this research, in order to clarify the viewpoint of care for grasping background factors ofbehavioral and psychological symptoms of dementia (hereinafter referred to as BPSD), a reviewresearch was conducted through utilizing CiNii and J-STAGE. With 145 papers as a subject,based on the previous researches, 5 factors (physical factors, mental factors, environmentalfactors, personal factors, and caregiver's factors) were extracted, and classified afterwards.Consequently, they were classified into the followings; (1) Background factors for grasping thecurrent status of BPSD, (2) Current status of nursing-care facilities, and (3) Current status ofpractical approach. From this result, it has become clear that the background factors of BPSDcan be estimated through focusing on 5 factors despite busy tasks at facilities. Additionally,it was deemed that a broad concept of caregiver's burden made adjacent research areasoverlapped, which resulted in difficult classification. From this time on, it is necessary to clarifythe effects of decreases in users BPSD, QOL improvements, and caregiver's burden exertedby the care in which not only the concepts of caregiver's burden were organized but also thebackground factors based on the 5 factors clarified in this research.
著者
村山 明彦 むらやま あきひこ Akihiko MURAYAMA
雑誌
最新社会福祉学研究
巻号頁・発行日
vol.13, pp.29-35, 2018-03-31

わが国における認知症高齢者の増加,認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)の策定などに伴い,これまで以上に認知症に対する関心が高まっている.しかし,認知症という言葉は身近になっているにもかかわらず,社会における認知症スティグマが軽減されているとは言い難い現状がある.このような背景から,認知症スティグマに着目した研究が増加しつつある.一方,認知症高齢者と高齢者ケア専門職,双方の認知症スティグマに着目した研究は少ない.そこで,本研究では文献研究の手法を用いて先行研究を踏まえ,本研究における認知症スティグマを定義するための理路を提示した.また,認知症のアセスメントとケアの現状と課題についても言及し,エビデンスとナラティヴに関する先行研究からの知見を援用した.以上の結果を統合し,実践への提言として,オノマトペ(擬音語・擬態語)を認知症ケアとアセスメントに使用することの可能性をまとめた.Interest in dementia has been increasing recently due to the growing number of elderlypeople with dementia in Japan, and the formulation of the Japanese national dementia strategy(New Orange Plan). Despite the situation, the stigma around dementia has not been reducedin society. While such background has increased the number of studies focusing on the stigmaaround dementia, there have only been a few studies focusing on the stigma of dementia fromthe perspectives of both the elderly with dementia and elderly care professionals. The aimof this study is to provide a rationale for defining the stigma of dementia based on review.Additionally, I mention the situation and challenges for dementia care and its assessment,and employ findings from prior studies on evidence and narrative. I integrate the results ofthe study and compiled the possibilities to use onomatopoeia (echoic and mimetic words) fordementia care and its assessment as a recommendation for dementia care practice.