著者
野本 健志
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集 水文・水資源学会2013年度研究発表会
巻号頁・発行日
pp.184, 2013 (Released:2013-12-01)

環境省・平成24年度水生生物放射性物質モニタリング調査結果(春期調査:(採取日)平成24 年6 月3 日~7 月11 日)によれば、河川・湖沼に生息する魚類と水生昆虫からの放射性セシウム(Cs-134、Cs-137)が前年度冬季と同様、依然として高く検出されている。水生昆虫で顕著なのは大型のヒゲナガカワトビケラやヘビトンボである。ヒゲナガカワトビケラの生活史は、本州では年2化性であることが多く、原発事故発生後は最低でも2世代の経過が考えられる。ここでは、底生生物の現存量の大半をヒゲナガカワトビケラが占める真野川の湖の上下流において、セシウム集積量の違いについて調べた。真野川は飯館村から南相馬市を流れる福島県の2級河川であり、飯館村内にはやま湖(ダム湖)がある。当該地区は避難指示解除準備区域であり、立ち入り可能である。平成24年6月2日と11月21日において、はやま湖を挟んだダム流入地点付近と放流地点から500m程度下流地点において、礫に付着するヒゲナガカワトビケラと流下物を採取した。ヒゲナガカワトビケラは採取直後にエタノールに漬けて保存した。流下物は粒径1㎜以下のサイズに着目し、実験室内においてふるいにかけて500μm以上、250μm以上、および64μm以上の3つに分けた(ここで、64μmのふるいに残った流下物量は微量であり、実際にはほとんどが124μmである)。放射性セシウムの測定のために試料を乾燥・粉末にして、計測は東京農工大学・五味高志・境優研究室において、ゲルマニウム半導体検出器によるγ線スペクトロメトリ法により行った。ヒゲナガカワトビケラおよび流下物からの放射性セシウム(Cs-134、Cs-137)線量の測定から、2地点の比較においては、Cs-134、Cs-137ともにダム上流で採取したほうがより高い結果となった。流下物を粒径別に調べると、粒径の細かいものほど高くなる傾向が見られた。ここで、ダム下流における流下物は浮遊性プランクトンの影響が大きい。ヒゲナガカワトビケラは主に流下物を餌としていることから、放射性セシウム量の違いは流下物の質の違いを反映していることが考えられる。
著者
渡邊 彩花 相馬 一義 末次 忠司 佐野 哲也 大石 哲 柿澤 一弘 石平 博
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集 水文・水資源学会2013年度研究発表会
巻号頁・発行日
pp.116, 2013 (Released:2013-12-01)

XバンドMP(Multi Parameter)レーダー(中心波長3.2cm,覆域約64km)は,気象庁のCバンドレーダー(中心波長5.7cm,覆域約120km)に比べ細かい降雨情報が取得可能であり,さらに水平偏波に加えて鉛直偏波を用いることで様々なパラメータを得ることを可能とし,全国的に導入され防災への活用が期待されている.しかし,山梨県では甲府盆地という山岳地域に囲まれた独特の地形により,レーダービームの遮蔽等により十分な精度を見込めず,XバンドMPレーダーによる降雨量推定には未だ多くの課題が残ることが指摘されている.本研究では,山梨大学が所有するXバンドMPレーダー(以下UYレーダー)から得られた降雨量推定値と地上雨量計での観測値を比較することでUYレーダーの精度評価を行った.その結果,雨の降り方によって推定精度にばらつきがあることがわかった.層状性の降水事例においては,低仰角のレーダーデータが取得可能な地点ではレーダーサイトから遠く離れた地域でも精度よく観測されていることがわかった.
著者
鎌田 大督 山田 朋人
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集 水文・水資源学会2013年度研究発表会
巻号頁・発行日
pp.192, 2013 (Released:2013-12-01)

中緯度において発生する豪雨、豪雪、旱魃等のいわゆる極端現象はブロッキングによって引き起こされることが多い。本研究では、北半球冬季(12~2月)を対象にブロッキング現象の頻度と南北地表面温度勾配の関係を分析した。本研究は複数の全球気候モデル(GCM)の現在気候の再現結果及び将来予測結果を分析することによって極端現象をもたらすブロッキング現象の発生頻度及び、その物理機構の解明を目的とするものである。本要旨では2つのGCMの出力値を解析した結果を報告する。Pelly and Hoskins(2003)のブロッキングインデックスを用いた判定手法により判定を行った。本研究では将来予測におけるブロッキング現象の出現頻度がMIROC GCM、MPI GCM 共に増加傾向にあることが分かった。本学会の発表では、複数の全球気象モデルにおけるブロッキング現象の出現頻度及び物理機構について議論を行う予定である。