著者
柳本 広二 中城 有香子 大和 恵子
出版者
洛和会ヘルスケアシステム
雑誌
洛和会病院医学雑誌 (ISSN:13411845)
巻号頁・発行日
no.28, pp.7-24, 2017-03-31

分泌性タンパク質BDNFは、神経系前駆細胞の分化と成長、および、神経突起の伸展促進を司る神経栄養因子であり、脳神経の生存や神経突起の維持に欠かすことができず、中枢神経系に見られる神経細胞による複雑なネットワーク構築は、局所的なBDNFの産生調整に支えられている。脳の成長発達が終了した後のBDNFの産生は、シナプスの形成と消滅、および学習と記憶に関する神経の可塑性を司り、正常な脳機能を維持している。BDNFは、膵臓内の受容体を介して全身の糖代謝を制御し、視床下部にある受容体を介して食欲や食事行動を制御し、また、広範囲に存在する受容体を介して虚血後の神経脆弱性をも制御する。BDNF量が低下すると、うつ症状や不安が発現するが、脳内のBDNF量が適切に増加した場合には、正常な学習記憶能が増強し得る。ここでは、BDNFが有する多彩な機能性を展望し、人の脳内BDNFを安全に増加させることを目的として現在新たに開発されつつある手段、本邦で生まれた高電位治療器の原理を用いた進化系医療機器、および、新たな手法を用いて作成する新規発芽玄米(進化系和食)による脳内BDNF維持、増強法も併せて紹介する。(著者抄録)
著者
神谷 亨 井村 春樹 松村 拓朗 池田 宣央 土谷 美知子
出版者
洛和会ヘルスケアシステム
雑誌
洛和会病院医学雑誌 (ISSN:13411845)
巻号頁・発行日
no.32, pp.11-17, 2021-03-31

2019年12月末、中国湖北省武漢市より始まった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、世界中で多くの感染者、死者を出し、未だ収束の目処は立っていない。当院では、感染流行の第2波中に第1回目のCOVID-19院内クラスター、第3波中に第2回目の院内クラスターが発生した。第1回目の院内クラスターは、2020年8月31日に発覚し、職員2名、入院患者6名、合計8名が感染し、16日後の9月16日に感染の終息を確認した。第2回目の院内クラスターは、12月28日に発覚し、職員3名、入院患者13名、合計16名が感染し、25日後の2021年1月22日に感染が終息した。COVID-19は、感染しても症状が乏しく、症状の乏しい患者が感染力を持ち、感染力が強く、潜伏期が長く、感染対策が極めて困難な性質を有している。病院や施設でのクラスターを防ぐためにも、有効なワクチンの普及と治療薬の開発が待たれる。
著者
長坂 行雄 土谷 美知子 坂口 才 南 卓馬 小南 亮太 堀 哲雄 一瀬 増太郎
出版者
洛和会ヘルスケアシステム
雑誌
洛和会病院医学雑誌 (ISSN:13411845)
巻号頁・発行日
no.25, pp.18-22, 2014-08-31

問診とバイタルサイン、身体所見は効率的な診断、治療に直結する。急性の症状はバイタルサインに、慢性期の病態は身体所見に反映され、脈拍数は呼吸数の4~5倍の数値をとるが、呼吸困難時に相対的に呼吸数の増加が著しければ肺疾患を示唆することが多い。また、頸部の呼吸補助筋が発達しておれば肺気腫の可能性が高い。肺野でクラックルを両側の肺底部で左右対称に聴取すれば間質性肺炎の可能性が高い。四肢末梢の皮膚温で心拍出量も推定できる。必要な検査や処置の選択も速やかにできるように、自信を持てる身体所見を把握することが必要である。(著者抄録)
著者
長坂 行雄 土谷 美知子 坂口 才 中西 陽祐 味水 瞳 森川 昇 一瀬 増太郎 上田 桂子
出版者
洛和会ヘルスケアシステム
雑誌
洛和会病院医学雑誌 (ISSN:13411845)
巻号頁・発行日
no.29, pp.1-7, 2018-03-31

聴診器発明から200年になる。肺聴診は病態を即時に判断できる技術である。肺音は呼吸音(肺胞音、気管支音)と副雑音(ラ音、それ以外)に分けられる。肺胞音が聴かれる肺の大半で呼気がはっきり聴こえれば気管支音化である。軽度の気道狭窄や肺の硬化の可能性がある。ラ音は連続音のウィーズ、ロンカイ、ランブルと不連続音のクラックルに分けられる。連続音は気道狭窄で聴かれ胸部X線の異常を伴わない。不連続音は肺炎、間質性肺炎などの肺胞病変で聴かれ胸部異常陰影を認めることが多い。このような所見は聴診器をしっかりと当てて、患者に少し大きい息をさせることで得られる。前胸部と背部でそれぞれ4ヶ所聴診するのが基本であるが、各部位でよく聴かれる音の特徴を理解すれば聴き逃しなく、正確な所見が得られる。(著者抄録)