著者
新沼 智之
雑誌
玉川大学芸術学部研究紀要
巻号頁・発行日
no.12, pp.35-41, 2021-03-30

俳優や劇作家や演出家などの芝居作りの中心にいる者と、デザインをしたりプランを組んだりするスタッフ、そしてそれを再現するスタッフ、そして広い意味での研究者など、その周縁にいる者とのかかわり、あるいは後者の仕事ぶりというのが、一般の観客にはなかなか見えて来ない。それはなぜなのか。そのことを探るべく、芝居作りおよび「演劇」の構造の分析を歴史的観点および美学的観点から試みる。美学的には「上演」とは何か、「演技」とは何か、「演出」とは何かの分析をする。そこには、単に内輪のこととして処理されて外へと語られない慣習というのではない構造上の原因が浮かび上がってくる。
著者
村山 にな
雑誌
玉川大学芸術学部研究紀要 (ISSN:18816517)
巻号頁・発行日
no.11, pp.17-31, 2020-03-31

千葉県市原市を南北に走る小湊鉄道沿線地域の南部で繰り広げられる「いちはらアート×ミックス」を事例に、既存の市民活動とアートプロジェクトを比較し、地域におけるアートの真価を問う。地方の芸術祭における新規作品展示の再魔術化と運営合理化の連鎖と、ノスタルジアを媒介とする来場者と地域の共犯と相反関係の錯綜を示唆する。内外から見えてくる市原市の芸術祭は身の丈で、アマチュアとプロの境なく、大規模な恒久作品もないが、専門用語で飾った言説で市民を疎外するものでもない。過疎化する地域に出現するアートに対する期待と現状の齟齬を擦り合わせ、まちづくりのビジョン形成と共有化、具現化の試行錯誤におけるアートの役割を考察する。
著者
松川 儒
雑誌
玉川大学芸術学部研究紀要
巻号頁・発行日
no.12, pp.27-34, 2021-03-30

ドイツ三大歌曲作曲家の一人と称されるH. ヴォルフの『イタリア歌曲集』はそれまでの歌曲集とは異なる上演形態が提示されてきた。そこで本論は『イタリア歌曲集』の作品形態を分析しその特徴を掌握することで、コンサートに於いて様々な上演形態を見せることが可能なこの歌曲集の有り方を探る。
著者
今野 哲也
雑誌
玉川大学芸術学部研究紀要 (ISSN:18816517)
巻号頁・発行日
no.11, pp.33-47, 2020-03-31

ゲーテの『ハンノキの王』は、ヘルダーの民謡思想の影響下に書かれたバラードである。『ハンノキの王』は、シューベルトの《魔王》D328の歌詞としても知られているが、その原型を辿ると、デンマークの伝承譚詩にまで遡る。この世の者ならぬ存在が、罪のない若者の命を奪うという筋書きこそ原型から一貫しているが、ゲーテは新たに、「中年男性による少年への誘惑」と「父親の無理解⇒親の子殺し」のモティーフを導入している。本研究の目的は、デンマークの伝承譚詩から『ハンノキの王』が成立してゆく過程を精査しながら、ゲーテの創作の意図を検証することにある。 子供の主張を無視し続けた馬上の父は、啓蒙思想の象徴とも捉え得るし、絶命する息子に、同性愛的な「ギリシアの愛」の対象として、古代ギリシアへの懐古趣味を見て取ることもできるかも知れない。これらの諸要因が総合的に咀嚼された結果、劇的効果をさらに強めるため、ゲーテは「少年愛のモティーフ」を導入したとする見解を述べ、本研究の結論とする。
著者
今野 哲也
雑誌
玉川大学芸術学部研究紀要 (ISSN:18816517)
巻号頁・発行日
no.11, pp.33-47, 2020-03-31

ゲーテの『ハンノキの王』は、ヘルダーの民謡思想の影響下に書かれたバラードである。『ハンノキの王』は、シューベルトの《魔王》D328の歌詞としても知られているが、その原型を辿ると、デンマークの伝承譚詩にまで遡る。この世の者ならぬ存在が、罪のない若者の命を奪うという筋書きこそ原型から一貫しているが、ゲーテは新たに、「中年男性による少年への誘惑」と「父親の無理解⇒親の子殺し」のモティーフを導入している。本研究の目的は、デンマークの伝承譚詩から『ハンノキの王』が成立してゆく過程を精査しながら、ゲーテの創作の意図を検証することにある。 子供の主張を無視し続けた馬上の父は、啓蒙思想の象徴とも捉え得るし、絶命する息子に、同性愛的な「ギリシアの愛」の対象として、古代ギリシアへの懐古趣味を見て取ることもできるかも知れない。これらの諸要因が総合的に咀嚼された結果、劇的効果をさらに強めるため、ゲーテは「少年愛のモティーフ」を導入したとする見解を述べ、本研究の結論とする。