著者
原田 隆之 鈴木 由夫 鈴木 雄介 小松 真一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0887, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】平成24年度に児童福祉法が改正され,児童発達支援・放課後等デイサービスが開始された。その中で,主たる対象を重症心身障がい児とする施設(以下,重症児デイ)は,定員5名の小規模が多数で,近年増加している医療的ケアの必要な子どもたちも受け入れ利用している。その為,重症児デイでは,一般の放課後等デイサービス(以下,放課後デイ)とは異なり,人員配置として,看護師・療法士・保育士・嘱託医の配置が義務付けられている。この様に,重症児デイ事業を開始するにはハードルが高く,利用希望者が多いにも関わらず,事業所が足りておらず,住み慣れた地域で通所サービスを受けられない現状がある。今回,全国重症児デイサービス・ネットワーク(以下,重症児デイネット)によって,重度の障がいを持った子どもたちの地域生活白書を発行したので,白書の紹介とともに,重症児デイの現状と問題点について検討した。【方法】2015年10~11月に,重症児デイネットに所属する事業者とそれらに関係する事業者と保護者に対して,アンケート調査を実施した。質問項目は,事象者アンケート23問,保護者アンケート25問とした。内容は,事業者に対しては職員配置,利用児の身体特性,サービス内容等について,保護者に対しては,お子さんの身体特性,利用しているサービス,重症児デイの利用状況・要望等について質問した。【結果】重症児が利用している全国の重症児デイおよび放課後デイ410ヵ所へ発送し,事業者アンケートに回答した210事業所のうち,データ対象となるのは重症児デイ121事業所とした。保護者アンケートでは,全国およそ400人の保護者へ配布し,215人から回答があった。事業者アンケートの回収率51.2%,保護者アンケートの回収率53.8%であった。アンケート結果から,専門職の配置状況では,療法士が不足していると答えた事業所が一番多かった。医療的ケアの内容では,経管栄養,吸引,てんかん発作時の処置(坐薬の投与等)の順で多かった。事業所のサービスや運営特長では,医療的ケア,リハビリテーションに力を入れている事業所が多かった。併設サービスについては,児童発達支援,生活介護が多かった。【結論】白書を通じて,重症児の身体特性,重症児デイの1日の流れ等について紹介し,重症児に関する認識を広めている。また,保護者のアンケート結果で事業所への要望として,医療的ケア,リハビリが多かったが,92.6%で医療的ケア,57.9%でリハビリテーションを特長としており,ある程度,対応できている可能性が考えられたが,療法士が不足している事業所は46.6%もあった。我々の先行研究(2016年)において,PT養成校の学生が重症児デイに療法士の配置が必要である事の認識はわずか14.7%しかなかった。今後,療法士の確保に向けて早くから情報を普及させていく必要性が考えられた。
著者
藤井 香菜子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0914, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】小児に関わる理学療法士の職域は拡大しており,当施設も職員配置基準に理学療法士(以下,PT)が含まれていないにも関わらず,昭和58年の開設間もなくからPTが携わっている施設である。当施設は,平成24年4月の児童福祉法の改正以前は肢体不自由児療護施設であり,主な入所者は常時医療を必要としない肢体不自由児であった。職員体制は,保育士などの直接処遇職員が23名,看護師が約2名/日,PTは1名である。嘱託医として整形外科医が1回/月来園している。旧肢体不自由児療護施設は,全国に6施設のみであり,その内PTの常勤配属は当施設のみである。診療報酬を算定していないこともあり,PTの業務内容は多岐にわたる。今回,当施設入所者の状況と,PTの業務内容を提示し,福祉型障害児入所施設におけるPTの役割や課題を明らかにすることを目的とした。【方法】平成28年9月における当施設入所者の内訳を,1)年代,2)就園・就学の状況,3)主たる疾患・障害,4)日常生活動作(Barthel Index)において分類した。PTの業務は,業務管理・評価シート(以下,Do-CAPシート)を用い,平成28年4月から9月までの主要業務とそのウエイトを出した。【結果】入所児童の年代は,幼児が9名,小学生が17名,中学生が11名,高校生が11名,18歳以上の方が2名であった。就園・就学の状況として,幼稚園に2名,地域の小学校特別支援学級に9名,地域の中学校特別支援学級に3名,一般高等学校に2名,県立養護学校に25名であった。主たる疾患・障害の状況として,50人定員中,脳室周囲白質軟化症を含めた脳性麻痺が12名,知的障害が7名,自閉症スペクトラム障害が5名,硬膜下血腫後遺症が4名,頭部外傷後遺症1名,SBS症候群1名などであった。日常生活動作としては,項目[歩行]では,15点が28名,10点が6名,5点が7名,0点が9名であった。PT業務として,①理学療法評価や機能訓練,②補装具関連業務,③入所児童の通院付添,④カンファレンスを含む現場職員との連携業務,⑤施設内デイケア,⑥食事や摂食関連,⑦嘱託医健診の対応,⑧学校教員との連携,⑨身体測定,⑩新入所児の対応が,順に25%,20%,20%,15%,7%,7%,3%,1%,1%,1%であった。【結論】入所児童の年代も疾患も多岐にわたり,就園・就学している数も多い。生活施設のPTの役割は,理学療法評価や機能訓練と殆ど同じ割合で,他の業務の割合が大きかった。これは,①や②の入所児童と個別に関わる業務だけではなく,生活の中で機能維持や向上を目指すために,他職種との連携に時間を費やしていたことを意味している。また,③のPTが通院に付添う割合が20%と多く,施設全体として医療知識の向上が課題だと示唆された。
著者
穴吹 泰典
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0915, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】理学療法士(以下PT)は主に肢体不自由児の療育に関わる事が多いが,発達遅滞などの知的障害を持つ子どもたちも対象となることが少なくない。今回,PTにどのような支援ができるのかを検討するため,知的障害児の療育状況について調査したので報告する。【方法】対象は香川県立中部養護学校幼稚部・小学部・中学部・高等部に在籍する児童・生徒の保護者である。調査は療育状況についてのアンケート調査票を作成し,質問紙法にて実施した。調査内容は①基本的情報②障害について③就学前の療育状況④現在の療育状況⑤求めている支援⑥PTや療育に対する希望,とした。回答は選択方式とし複数回答も可とした。⑥については自由記載も設定した。【結果】回収率は52.5%(189名)であった。身体的な問題では姿勢の問題49件,歩行の問題42件,体力の問題33件,道具使用の問題77件,全身運動の問題72件であった。就学前より療育を受けていたのは174名,受けた施設は医療機関が最も多く163件,次いで民間療育施設65件であり,頻度は週1回と月1回が最も多く共に49名であった。PTは70名に関わっていたが,身体的な問題があると答えた児童の中で理学療法士に療育を受けていた者は47.3%であった。ダウン症・てんかんなど原因疾患が明らかな子供では56.0%が0~1歳代で療育を開始していた。広汎性発達障害など原因が明らかでない発達遅滞児は2歳から開始が29.4%,3歳から開始が42.0%と遅れる傾向にあった。療育についての負担では負担無し44件,時間の負担99件,人的負担33件,金銭的負担26名,期待した効果が得られなかった18件であった。就学後に療育を受けているのは92名,受けている施設は民間療育施設が76件で最も多く,PTに療育を受けているのは9名にであった。保護者が望む支援は発達に対する支援86件,障害に対する支援68件,専門スタッフの充実67件,行政サービスの充実79件,教育プログラムの充実25件,家族の負担軽減60件であった。またPTによる支援を118名が望んでいた。療育に対する希望では「就学しても療育が受けられるようにしてほしい」「頻度・回数を多くしてほしかった」などの意見がみられた。【結論】知的障害児においても身体的問題を抱えている児童が多く存在することが分かった。就学前にはPTを始めとする専門職による療育が行われているが,問題がある児童全てが受けられたわけではなく,開始時期・頻度についても不足しており,保護者も機会の増加や継続的に行えることを望んでいた。就学後は専門職による支援が減少しているが,身体的な問題は残存していた。香川県ではPTによる支援はほとんどが医療機関で行われており,保護者や民間療育施設職員へのアドバイスなど,何らかの対策を行い,療育環境を整える必要性がある。