著者
江下 雅之
出版者
目白大学
雑誌
目白大学経営学研究 (ISSN:13485776)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.89-103, 2008
被引用文献数
1

2006年12月に発売された任天堂のゲーム機Wiiは、新たなゲーム市場を開拓し、全世界で好調な売れ行きを記録している。しかしながら、任天堂が大幅な増産を図らないために市場は慢性的な品薄状態となり、発売前の予約段階はもちろんのこと、発売から数ヶ月後に至るまでネット・オークションでの転売が活発であった。Wiiをめぐるオークションの入札動向は、店頭発売日前後で大きく異なる。落札価格、各オークションへの入札計数とも、店頭販売当日まで上昇を続けた。しかし、こうした過熱は出品数が急増することで解消されている。また、落札価格、入礼者数ともに単調な増減を示すことはなく、おなじ日でも上下に振幅している。他方、オークション参加者はこうした傾向を考慮した入札を行っているのではなく、入礼者の参加時点で把握可能な出品機会のもとで競合の度合いを判断しているものと考えられる。
著者
江下 雅之
出版者
目白大学
雑誌
目白大学経営学研究 (ISSN:13485776)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.87-98, 2007
被引用文献数
1

インターネットを利用した電子取引のなかで、近年、ネットオークションの取引額が急増している。その規模はすでに巨大流通産業に匹敵しており、個人の消費行動のなかで無視できない影響力を発揮しつつある。本研究では、稀少価値の高い漫画古書に注目し、ネットオークションにおける取引の成立過程のデータを収集、定量的に分析した。分析の結果、ネットオークションにおいて実際に入札者が競合する割合は低く、入札価格の変動を対象とした従来の入札行動は、オークション全体のごく一部の現象しか捉えていないことがわかった。他方、落札に至るオークションの割合は、最初の出品時の落札率によって決定される可能性がデータ分析の上で示された。また、落札に至る入札行動には、オークションの参加者がオークションを通じて蓄積した経験の度合いが強く反映されている可能性も明らかになった。
著者
井上 綾野
出版者
目白大学
雑誌
目白大学経営学研究 (ISSN:13485776)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.63-74, 2007-03

本稿は,消費者情報処理モデルに代表される功利的買物行動と対極にある快楽的買物行動の基本的視座を快楽消費との関連で提示する理論的研究と,特定の店舗における快楽的買物動機と支出行動の関連を示す実証的研究から成り立っている。快楽的買物行動は,「快楽消費」から派生した概念でありながら,快楽消費と同一のものとは言い難い。また,功利的買物行動との関連で快楽的買物行動の理論的枠組みを提示する必要がある。さらに,快楽的買物行動の本質に迫るために,どのような楽しさを追求しているのかを知る必要がある。そのために必要とされるのが,買物動機研究の系譜を辿ることである。次に,理論的研究に基づいて実証的研究を行う。その手順は以下のとおりである。第一に,快楽的買物行動における快楽的買物動機を因子分析によって確認する。第二に,店舗別(駅前商店街・コンビニエンスストア・スーパーマーケット・百貨店)にデータを分割し,各店舗における快楽的買物動機とその店舗における支出金額との関係性を,共分散構造分析によって検証する。最後に,その結果に基づいて各店舗における戦略を提案する。
著者
今林 正明
出版者
目白大学
雑誌
目白大学経営学研究 (ISSN:13485776)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.29-42, 2004-03

筆者が4年間8回にわたって担当した「放送大学面接授業(スクーリング)土日型」の例をもとに、本稿は、会計についての実務的経験や、年齢など、すべての面において多様な受講生に管理会計学を講義する際のスキルについて考察する。管理会計学を、簿記の初心者から会計事務所勤務者さらに税理士に至る多様な受講生に講義するためには、複数の視点が必要である。第一は、簿記の初心者である受講生に対して、管理会計的発想は身近な市民生活の中にも存在することを概説する視点。第二は、実務などで会計に日々接している受講生に対しては、制度会計と異なり、管理会計は柔軟な発想が求められるということを理解してもらう視点。その双方の視点に立った講義を行うためには、損益分岐点、部門共通費配賦、外注内作意思決定問題など管理会計学の主要な論点を理解するために「身近な例」を用いた複数の計算問題例を、放送授業用テキストの講義に入る前に利用することが効果的であるといえる。
著者
佐藤 一郎
出版者
目白大学
雑誌
目白大学経営学研究 (ISSN:13485776)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.55-65, 2005

拙稿は、主に日本の大企業におけるコーポレィト・ガバナンス(企業統治)について論じるが、この概念自体がアメリカからの輸入概念であるため、アメリカ企業の動向や斯論の展開に関わらざるをえない。周知のように、CalPERSやTIAA-CREFのような年金基金の株主行動が経営者の一連の解任劇につながってから、一躍統治問題が注目されるようになった。ITバブル崩壊後は企業犯罪の多発が統治と経営規律をめぐる議論を活発化した。こうした議論の流れは一部、日本企業にも共通するが、とはいえより大きな問題はバブル以後明らかになったビジネスモデルの陳腐化である。同時に、時代のヘゲモニーは生産者から消費者に完全に転換した。したがって、企業統治の仕組みも被統治側のガバナビリティをも含めてこのうねりの圏外にあってよいはずはない。企業統治は、すぐれて今日的な問題であると同時に企業の在り方の根幹に関わる問題でもある。