著者
松岡 靖
出版者
神戸松蔭女子学院大学学術研究委員会
雑誌
神戸松蔭女子学院大学研究紀要. 人間科学部篇 = Journal of the Faculty of Human Sciences, Kobe Shoin Women's University (JOHS) (ISSN:21863849)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.35-52, 2016-03-05

本稿の課題は道徳教育で私たちが希望をどう語れるかを検討することである。この研究は2015 年に改訂された学習指導要領を二つの段階で検討した。第一にオースティンの言語行為論を枠組みとして、発語行為・発語内行為・発語媒介行為という三つの水準で指導要領を分析した。第二に玄田らによる希望の社会科学の成果、とくに職業希望に関する知見を参考に、指導要領にみる希望の語り方を考察した。結論は次の二点にまとめられる。第一に指導要領の希望の語り方には、成果主義と初志貫徹という特徴があり、それぞれに長所と短所がある。また指導要領は規則の遵守を強調しつつ、「結社の自由」に沈黙している点は不充分である。第二に個人による職業希望の語り方には、可能性・関係性・物語性という三つの要因が影響していた。個人の希望はその人の社会的な条件にある程度左右される。また希望は他者との関わりを契機に創られ、人生の各段階で作り直されていく。言語行為論や希望の社会科学に学ぶことで、道徳教育と希望の概念をより深く理解できる。
著者
内田 祐貴
出版者
神戸松蔭女子学院大学学術研究委員会
雑誌
神戸松蔭女子学院大学研究紀要. 人間科学部篇 = Journal of the Faculty of Human Sciences, Kobe Shoin Women's University (JOHS) (ISSN:21863849)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.67-74, 2016-03-05

「理科離れ」が理科教育の大きな問題の1 つになって長い年月が経つ。これまでにも、主に小中高校での授業での取り組みや大学教員の出張授業など様々な取り組みが行われてきたが、問題の完全解決には至っていない。近年では、PISA やTIMSS などの国際比較調査により、日本の児童生徒の特徴として、学力は国際的に上位だが、学年が上がるに連れ、理科が嫌いな児童生徒が増えるという傾向がわかり、理科離れの対策の重要性がより鮮明になった。理科離れの対策の1 つに、実験の充実がある。しかし、平成20 年度の全国的な小学校教員に対する調査において、現役教員の半数以上が実験観察の知識技術に不安を抱えていること、授業で理科実験を行うには、「時間」、「費用」などの様々な問題があることがわかった。そこで、児童生徒の理科への興味関心を高め、教員の実験の知識技術の向上を目的とし、器具から作る実験教材として、注射器を使った真空ポンプを、簡易に安価で作成できるようにし、大学での教材作成演習や現役教員への講習に用いた。
著者
奥 美佐子
出版者
神戸松蔭女子学院大学学術研究委員会
雑誌
神戸松蔭女子学院大学研究紀要. 人間科学部篇 = Journal of the Faculty of Human Sciences, Kobe Shoin Women's University (JOHS) (ISSN:21863849)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.53-65, 2016-03-05

本研究は、子どもが音を描いた絵を別の子どもがどのように読み取るかについて、実践を通じて明らかにし、表現者の感覚と鑑賞者の感覚の間に何らかの交感の要因を見出そうとするものである。単音を色彩に変換する実践では低音部と高音部に共通した色彩選択が見られた。擬音の描画表現では線の形状から音を読み取る傾向が見られた。単音を色に変換する実践と、擬音を描いた絵を読み取る実践を実施し検討した結果、単音の変換における実践では高音部や低音部で共通した色彩の選択が出現し、擬音を表現した描画の読み取りにおいては、線の形状や形態が読み取る音のイメージに繋がることが明らかになった。