著者
奥 美佐子
出版者
一般社団法人 日本保育学会
雑誌
保育学研究 (ISSN:13409808)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.163-174, 2004-12-25 (Released:2017-08-04)

Imitation appearing in children's painting processes can be regarded as a positive activity in which they absorb information and use it to create their own expression, or it can be considered a negative activity, often called merely copying without understanding. The purpose of this article is to examine imitation in young children's painting process in terms of absorbing information and reflecting it in expression, and discuss the effects of imitation. The result of this case study reveals that visual stimulation is the most important element in imitation and that a spatial element and a human element are also related to imitation. Imitation can be classified into three types, each of which reflects in various ways the information young children absorb and use in their creative expression.
著者
奥 美佐子
出版者
神戸松蔭女子学院大学学術研究委員会
雑誌
神戸松蔭女子学院大学研究紀要. 人間科学部篇 = Journal of the Faculty of Human Sciences, Kobe Shoin Women's University (JOHS) (ISSN:21863849)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.53-65, 2016-03-05

本研究は、子どもが音を描いた絵を別の子どもがどのように読み取るかについて、実践を通じて明らかにし、表現者の感覚と鑑賞者の感覚の間に何らかの交感の要因を見出そうとするものである。単音を色彩に変換する実践では低音部と高音部に共通した色彩選択が見られた。擬音の描画表現では線の形状から音を読み取る傾向が見られた。単音を色に変換する実践と、擬音を描いた絵を読み取る実践を実施し検討した結果、単音の変換における実践では高音部や低音部で共通した色彩の選択が出現し、擬音を表現した描画の読み取りにおいては、線の形状や形態が読み取る音のイメージに繋がることが明らかになった。
著者
奥 美佐子
出版者
名古屋柳城短期大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:13427997)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.51-65, 2003-12-20

美術における摸倣は肯定的にも否定的にも扱われてきた歴史をもつ。摸倣の意味は変化し、現代美術においては表現ツールとしてのスタンスを得た。本稿では摸倣をポジティブに、且つ摸倣の意味を広く捉えて、幼児の描画表現の過程で出現した模倣の要件を幼児の模写能力から検討したいと考えた。前項「現代美術と幼児の造形における摸倣のスタンス」で分類した摸倣の3タイプにおける視覚的要件、空間的要件、人的要件について検討した結果、視覚的要件と空間的要件が密接な関係にあることがわかった。人的要件は前2者程には影響をもつとは考えにくく、人的要件が何らかの影響をもつ場合は、日常の人間関係を反映していると考えられた。描画過程における摸倣の出現はビジュアルな要素が優先していると考えられる。描画における幼児間での摸倣を扱った研究を進めているが、幼児間で摸倣がどれほどの精度で可能かを確認するため、幼児間で模範と模写の関係を決めて描画の摸倣の実験をした。パーツと構図から模倣度を求めた結果、数値にはばらつきがあるが、5歳児の模写能力はかなりの精度で模範を模写できることがわかった。視覚による情報摂取と、摂取した情報の表現への反映が可能であることで、描画過程における摸倣は、'絵がかけないから摸倣する'という見方を払拭することができたのではないだろうか。