著者
馬場 恒子 マクヒュー 芙美
出版者
神戸松蔭女子学院大学学術研究会
雑誌
Journal of the Faculty of Human Sciences, Kobe Shoin Women's University = 神戸松蔭女子学院大学研究紀要. 人間科学部篇 : JOHS (ISSN:21863849)
巻号頁・発行日
no.1, pp.1-17, 2012-03

「化学物質」に対する消費者のイメージは、人工的なもの、有害(有毒)なものであって、自然界に存在しないものであることが明らかになった。消費者は主にマスメディアを通して化学物質に関する情報を受け取っているという結果が得られた。マスメディアが化学物質を大きく取り上げる時は、事件や事故の原因物質として特定された場合である。消費者は「生態系のすべての物は化学物質で構成されている」という認識がないので、マスメディアからの危険情報だけをそのまま蓄積していると考えられる。しかし、どの年代の人々でも化学に関する基礎的な話を聞くことによって化学物質の認識が変わり得ることも明らかになった。
著者
魏 然 陸 一菁
出版者
神戸松蔭女子学院大学
雑誌
神戸松蔭女子学院大学研究紀要. 人間科学部篇 (ISSN:21863849)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.63-79, 2014-03-05

本稿は、中国語圏のジャニーズファン及びジャニーズファンによって形成されるファンコミュニティの実態と特性を明らかにするために、中国語圏最大のジャニーズファンBBS「J家闲情」におけるアンケート調査を行った。その結果、北京、上海など経済水準が高い地域在住の20代の女性というのが中国大陸のジャニーズファンの典型像だといえる。彼女たちは日本国内のファンと比べると、アイドル情報や音楽映像、関連グッズの入手が困難な環境にあるが、それでも様々なルートを通じて、大量のお金を費やしアイドルの応援活動に没入している。応援活動では、特にインターネットの使用が際立つ。また、ジャニーズファンのオンライン匿名コミュニティから、オフ会を行い、お互いに認知できる少人数の特定コミュニティに転化するケースが多く観察される。このようなコミュニティは「ファン同士の集まり」よりも、「同じ趣味をキッカケとした交友関係」であると認識したほうがより妥当だと考えられる。更に、日本のファンコミュニティのキー概念ともいえる「担当制」は中国語圏のジャニーズファンコミュニティにも存在するが、しかし決して日本ほど重要な要素ではないと考えられる。This article outlines a questionnaire survey conducted on the largest fan site of Johnnys in China. It investigated the current situation and characteristics of Johnnys' fans. The survey shows that the majority of Johnnys' fans are women aged 20 to 30 living in prosperous cities such as Beijing and Shanghai. Compared with fans living in Japan, Chinese fans can not access the latest resources and information about Johnnys as conveniently. However, the fans in China invest large amounts of money to support their idols through the internet. Some anonymous fans who get to know each other through the internet even become real-life friends. The "tanto" system which mostly exists in Japanese fan groups of Johnnys also exists in Chinese fan groups, but it can no longer be considered a very important factor.
著者
魏 然 陸 一菁
出版者
神戸松蔭女子学院大学学術研究会
雑誌
神戸松蔭女子学院大学研究紀要. 人間科学部篇 = Journal of the Faculty of Human Sciences, Kobe Shoin Women's University (JOHS) (ISSN:21863849)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.63-79, 2014-03-05

本稿は、中国語圏のジャニーズファン及びジャニーズファンによって形成されるファンコミュニティの実態と特性を明らかにするために、中国語圏最大のジャニーズファンBBS「J家闲情」におけるアンケート調査を行った。その結果、北京、上海など経済水準が高い地域在住の20代の女性というのが中国大陸のジャニーズファンの典型像だといえる。彼女たちは日本国内のファンと比べると、アイドル情報や音楽映像、関連グッズの入手が困難な環境にあるが、それでも様々なルートを通じて、大量のお金を費やしアイドルの応援活動に没入している。応援活動では、特にインターネットの使用が際立つ。また、ジャニーズファンのオンライン匿名コミュニティから、オフ会を行い、お互いに認知できる少人数の特定コミュニティに転化するケースが多く観察される。このようなコミュニティは「ファン同士の集まり」よりも、「同じ趣味をキッカケとした交友関係」であると認識したほうがより妥当だと考えられる。更に、日本のファンコミュニティのキー概念ともいえる「担当制」は中国語圏のジャニーズファンコミュニティにも存在するが、しかし決して日本ほど重要な要素ではないと考えられる。
著者
藤本 浩一
出版者
神戸松蔭女子学院大学学術研究委員会
雑誌
Journal of the Faculty of Human Sciences, Kobe Shoin Women's University = 人間科学部篇 : JOHS (ISSN:21863849)
巻号頁・発行日
no.6, pp.1-16, 2017-03

中高教職課程履修生1 回生21 名にインクルーシブ教育についての3 つの質問を行った。Q1もしもあなたが教師3 年目で、担当するクラスに発達障害児童生徒がいたらどう思いますか。また、あなたはどんな心配や悩みがありますか。自由に記述して下さい。Q2 もしもあなたが健常児童生徒の保護者なら、自分の子どもが発達障害児童生徒と一緒に教育を受けることをどう思いますか。自由に記述して下さい。Q3 発達障害児童生徒にとって、健常児童生徒と一緒に教育を受けることについて、自由に記述して下さい。学生たちは調査のために、3 回の発達障害授業の前後に質問に回答し、調査結果として、事前・事後の比較による検討が行われた。彼らの自由記述は、KHcoder というソフトによって解析され、それぞれの共起ネットワークを比較した。学生たちは事前調査では発達障害児をどう扱うかを心配していたが、授業後には、対象児への理解や相談によって子どもたちが成長する重要性に気づいた。学生たちは3 回の授業によって、発達障害についての適切な知識と理解を得た。このことは彼女らが3 人称から2 人称の気持ちに変化したことを示している。
著者
松岡 靖
出版者
神戸松蔭女子学院大学学術研究委員会
雑誌
神戸松蔭女子学院大学研究紀要. 人間科学部篇 = Journal of the Faculty of Human Sciences, Kobe Shoin Women's University (JOHS) (ISSN:21863849)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.35-52, 2016-03-05

本稿の課題は道徳教育で私たちが希望をどう語れるかを検討することである。この研究は2015 年に改訂された学習指導要領を二つの段階で検討した。第一にオースティンの言語行為論を枠組みとして、発語行為・発語内行為・発語媒介行為という三つの水準で指導要領を分析した。第二に玄田らによる希望の社会科学の成果、とくに職業希望に関する知見を参考に、指導要領にみる希望の語り方を考察した。結論は次の二点にまとめられる。第一に指導要領の希望の語り方には、成果主義と初志貫徹という特徴があり、それぞれに長所と短所がある。また指導要領は規則の遵守を強調しつつ、「結社の自由」に沈黙している点は不充分である。第二に個人による職業希望の語り方には、可能性・関係性・物語性という三つの要因が影響していた。個人の希望はその人の社会的な条件にある程度左右される。また希望は他者との関わりを契機に創られ、人生の各段階で作り直されていく。言語行為論や希望の社会科学に学ぶことで、道徳教育と希望の概念をより深く理解できる。
著者
藤本 浩一
出版者
神戸松蔭女子学院大学学術研究委員会
雑誌
神戸松蔭女子学院大学研究紀要. 人間科学部篇 = Journal of the Faculty of Human Sciences, Kobe Shoin Women's University : JOHS (ISSN:21863849)
巻号頁・発行日
no.6, pp.1-16, 2017-03-05

中高教職課程履修生1 回生21 名にインクルーシブ教育についての3 つの質問を行った。Q1もしもあなたが教師3 年目で、担当するクラスに発達障害児童生徒がいたらどう思いますか。また、あなたはどんな心配や悩みがありますか。自由に記述して下さい。Q2 もしもあなたが健常児童生徒の保護者なら、自分の子どもが発達障害児童生徒と一緒に教育を受けることをどう思いますか。自由に記述して下さい。Q3 発達障害児童生徒にとって、健常児童生徒と一緒に教育を受けることについて、自由に記述して下さい。学生たちは調査のために、3 回の発達障害授業の前後に質問に回答し、調査結果として、事前・事後の比較による検討が行われた。彼らの自由記述は、KHcoder というソフトによって解析され、それぞれの共起ネットワークを比較した。学生たちは事前調査では発達障害児をどう扱うかを心配していたが、授業後には、対象児への理解や相談によって子どもたちが成長する重要性に気づいた。学生たちは3 回の授業によって、発達障害についての適切な知識と理解を得た。このことは彼女らが3 人称から2 人称の気持ちに変化したことを示している。
著者
藤本 浩一
出版者
神戸松蔭女子学院大学学術研究委員会
雑誌
Journal of the Faculty of Human Sciences, Kobe Shoin Women's University = 人間科学部篇 : JOHS (ISSN:21863849)
巻号頁・発行日
no.5, pp.1-8, 2016-03

本研究は認知的/非認知的能力と学業成績の関係を検討した。70 名の女子大学生が順唱、逆唱、語音整列、謎かけ、類推テストの5 つの認知的テストを受けた。非認知的能力を検査するために、エゴグラムが実施された。認知的能力に関する結果は、短期記憶を測る順唱、ワーキングメモリを測る逆唱と語音整列は学業成績と有意な相関がなかった。謎かけと類推テストも学業成績と有意な相関がなかった。エゴグラムの2 つの状態が学業成績と有意な相関があった。FC(フリーチャイルド)は学業成績と負の相関があった。FC は規則や制限に注意を払わず、自然の本能に従う。他方で彼らは無邪気でイマジネーションに溢れ、強い好奇心を持つ。しかし彼らはまた自己中心的で感情的である。A(アダルト)状態は学業成績と少しだけ有意な相関があった。A は物事を事実に基づいて合理的に考える。以上より、誘惑を適度に抑えて欲求を制御し、長期計画に基づいて合理的判断を下すことが、学業成績を向上させる上で必要であると結論づけられた。学業的満足遅延(ADOG)が言及された。The present study examined the relationship between cognitive/non-cognitive ability and academic grades. 70 first-year female undergraduates has conducted 5 tests of cognitive ability such as Digit-Span, Backward Digit Span, Letter-Number Sequencing, Particular Type of Riddle, and Analogy Test. To assess non-cognitive ability, Egogram(EG)test was conducted. The results on cognitive ability showed that Digit Span, evaluating short-term-memory, and Backward Digit Span as well as Letter-Number Sequencing, evaluating working memory, did not indicate significant correlation with academic grades. Particular Type of Riddle and Analogy Test also did not have correlation with academic grades neither. Two states of Egogram had significant relation with academic grades. FC(Free Child)had a significant negative correlation with academic grades. "FC" pays no attention to rules and constraints, and has natural instincts. On the one hand, they are innocent, full of imagination and have strong curiosity, but they are also self-centered and emotional. A(Adult)state indicated a slight significant correlation with academic grades. "A" judges things on the basis of facts rationally. It was concluded that controlling desire to temptation properly and rational judgment based on long-term prospect are necessary to improve academic grades. The Academic Delay of Gratification(ADOG)was mentioned.
著者
内田 祐貴
出版者
神戸松蔭女子学院大学学術研究委員会
雑誌
神戸松蔭女子学院大学研究紀要. 人間科学部篇 = Journal of the Faculty of Human Sciences, Kobe Shoin Women's University (JOHS) (ISSN:21863849)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.67-74, 2016-03-05

「理科離れ」が理科教育の大きな問題の1 つになって長い年月が経つ。これまでにも、主に小中高校での授業での取り組みや大学教員の出張授業など様々な取り組みが行われてきたが、問題の完全解決には至っていない。近年では、PISA やTIMSS などの国際比較調査により、日本の児童生徒の特徴として、学力は国際的に上位だが、学年が上がるに連れ、理科が嫌いな児童生徒が増えるという傾向がわかり、理科離れの対策の重要性がより鮮明になった。理科離れの対策の1 つに、実験の充実がある。しかし、平成20 年度の全国的な小学校教員に対する調査において、現役教員の半数以上が実験観察の知識技術に不安を抱えていること、授業で理科実験を行うには、「時間」、「費用」などの様々な問題があることがわかった。そこで、児童生徒の理科への興味関心を高め、教員の実験の知識技術の向上を目的とし、器具から作る実験教材として、注射器を使った真空ポンプを、簡易に安価で作成できるようにし、大学での教材作成演習や現役教員への講習に用いた。
著者
奥 美佐子
出版者
神戸松蔭女子学院大学学術研究委員会
雑誌
神戸松蔭女子学院大学研究紀要. 人間科学部篇 = Journal of the Faculty of Human Sciences, Kobe Shoin Women's University (JOHS) (ISSN:21863849)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.53-65, 2016-03-05

本研究は、子どもが音を描いた絵を別の子どもがどのように読み取るかについて、実践を通じて明らかにし、表現者の感覚と鑑賞者の感覚の間に何らかの交感の要因を見出そうとするものである。単音を色彩に変換する実践では低音部と高音部に共通した色彩選択が見られた。擬音の描画表現では線の形状から音を読み取る傾向が見られた。単音を色に変換する実践と、擬音を描いた絵を読み取る実践を実施し検討した結果、単音の変換における実践では高音部や低音部で共通した色彩の選択が出現し、擬音を表現した描画の読み取りにおいては、線の形状や形態が読み取る音のイメージに繋がることが明らかになった。
著者
藤本 浩一
出版者
神戸松蔭女子学院大学
雑誌
神戸松蔭女子学院大学研究紀要. 人間科学部篇 (ISSN:21863849)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.13-26, 2013-03-05

何かをしながら別のことを記憶し続けるとき、私たちは保持と処理の両方に関わる脳の機能であるワーキングメモリ(作動記憶、作業記憶)を使っている。Baddeley によれば、ワーキングメモリとは、聴覚言語的記憶、視覚的記憶、エピソード記憶、そしてそれらを組み合わせて考え判断する中央実行系から成る。本論では、ワーキングメモリの弱さが発達障害児に共通しているという指摘に基づき、ワーキングメモリ訓練教材の作成とその効果の検証を試みた。グー・チョキ・パーの絵柄を単語カードに一枚ずつ貼り付けて束ねたカード式教材(ジャンケン・メモリ)と、PC 上で実施するマトリクス教材等を作成し、健常女子大学生33 名に試した。リーディングスパン・テスト(RST)などによる事前・事後テストを実施して比較したところ、どちらの教材群もわずかな訓練期間にもかかわらず効果が認められた。しかしながらRST テストの慣れの影響などが否定できず、むしろ今後の問題点として以下の事柄を指摘した。それは、①集団式の事前・事後テストは実施上限界がある、②被験者の興味が湧く教材が必要である、③訓練日数や訓練の仕方を出来るだけ細かく指導し統制する、などである。また、脳をトレーニングすることの効果について反論を取り上げて検討し、なお効果があるとの見通しを示した。
著者
馬場 恒子 野阪 美貴子 西内 由紀子
出版者
神戸松蔭女子学院大学学術研究委員会
雑誌
神戸松蔭女子学院大学研究紀要. 人間科学部篇 = Journal of the Faculty of Human Sciences, Kobe Shoin Women's University : JOHS (ISSN:21863849)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.1-9,

トランス脂肪酸の多量摂取は健康に悪影響を与えることから、平均摂取量を一日当りの総エネルギー摂取量の1% 未満とする目標が設定された。日本では菓子類を多く食べる若年女性の摂取量が多く、菓子類の中でも特にパイ中のトランス脂肪酸含有量が高いことが2007年に報告された。日本において規制は行われていないが、これらの食品からトランス脂肪酸を低減する取り組みが各企業で自主的に進められている。そこで今回実際に含有量が減少しているかどうか検証する目的で、2011 年5 ~ 7 月に購入した14 種類の市販パイと、2種のカップ麺のトランス脂肪酸と飽和脂肪酸含有量を測定した。その結果、5 種類(36%)がトランス脂肪酸高含有食品(1.5-9 g/100 g 総脂質)で、トランス脂肪酸高含有食品の数は2007 年の80%に比べ著しく減った。高含有パイのうち1 種は、1 個中に1.8 g 含んでいた。これを1 個食べると、10 歳未満の子供では推定エネルギー必要量の1%を超え、身体活動レベルの低い若年女性では1%に相当する。また、カップ麺の天ぷらと麺はパーム油同様の飽和脂肪酸の多い組成となっていた。これは、トランス脂肪酸の代替品としてパーム油の使用が進み、飽和脂肪酸の摂取量が増加する可能性を示している。含有量表示の義務化と、種々の脂肪酸を含んだバランスの良い食事をとるように啓蒙することが、国民の健康維持につながると思われる。
著者
竹田 美知 山下 美紀 大石 美佳 正保 正恵
出版者
神戸松蔭女子学院大学学術研究委員会
雑誌
Journal of the Faculty of Human Sciences, Kobe Shoin Women's University : JOHS (ISSN:21863849)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.43-58, 2015-03

本研究の目的は教育から労働への移行期である女子大学生を対象として、どのように将来のライフコースを設定しているか、将来のライフコースを設定するときに家族資本がどのように期待されているか、さらに社会的資本がどのように認知され期待されているかについて明らかにした。調査は、2012 年11 月から12 月に実施され、関東、関西、中国地区の女子大生を対象として無記名による自記式質問紙法により実施された。調査の結果、現在の両親の役割分担の現状が女子大生のライフコースに大きく影響をおよぼし、さらに「性別役割分業」に対する意識が将来のライフコースを規定していることが明らかになった。また、母の職業経歴は娘である女子大生の役割モデルとして捉えられており、理想のライフコースも母のライフコースを踏襲している。専業主婦コースを選択した群は家族内経済資源が裕福であるが、家族内社会関係資源である性別役割規範に将来のライフコースを縛られている。両立コースを選択した群は資格・技能といった個人資源を持つことを希望し、女性が働くことについて家族がサポートしており、家族外社会関係資源を豊富に持っていた。
著者
土肥 伊都子
出版者
神戸松蔭女子学院大学学術研究委員会
雑誌
Journal of the Faculty of Human Sciences, Kobe Shoin Women's University : JOHS (ISSN:21863849)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.11-23,

本研究の目的は、日本型家族への志向性を、心理的個人化の観点から検討することであった。そこで、在豪日本人にインタビュー調査を行い、日本型家族の特徴が表れると考えられる性別役割分業、子ども中心主義、家族内外の境界意識、夫婦の恋愛意識、ジェンダー・パーソナリティについて訊ねた。その結果、在豪日本人の日本型家族志向性は、豪での労働環境や社会保障制度などからの影響を多分に受けていることがわかった。豪では仕事より家庭生活が優先され、結婚の有無などによる社会的立場への影響は小さかったが、これが心理的個人化を促進し、家族ユニット志向を抑制することが示唆された。また、こうした家族内の心理は、個人のパーソナリティに対して、ジェンダーの影響を受けにくくしていると考察した。ただし、子ども中心や夫婦間の恋愛意識のなさは、家族ユニット志向に沿ったものとなっていた。
著者
魏 然 陸 一菁
出版者
神戸松蔭女子学院大学学術研究会
雑誌
神戸松蔭女子学院大学研究紀要. 人間科学部篇 = Journal of the Faculty of Human Sciences, Kobe Shoin Women's University (JOHS) (ISSN:21863849)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.63-79, 2014-03-05 (Released:2014-03-10)

本稿は、中国語圏のジャニーズファン及びジャニーズファンによって形成されるファンコミュニティの実態と特性を明らかにするために、中国語圏最大のジャニーズファンBBS「J家闲情」におけるアンケート調査を行った。その結果、北京、上海など経済水準が高い地域在住の20代の女性というのが中国大陸のジャニーズファンの典型像だといえる。彼女たちは日本国内のファンと比べると、アイドル情報や音楽映像、関連グッズの入手が困難な環境にあるが、それでも様々なルートを通じて、大量のお金を費やしアイドルの応援活動に没入している。応援活動では、特にインターネットの使用が際立つ。また、ジャニーズファンのオンライン匿名コミュニティから、オフ会を行い、お互いに認知できる少人数の特定コミュニティに転化するケースが多く観察される。このようなコミュニティは「ファン同士の集まり」よりも、「同じ趣味をキッカケとした交友関係」であると認識したほうがより妥当だと考えられる。更に、日本のファンコミュニティのキー概念ともいえる「担当制」は中国語圏のジャニーズファンコミュニティにも存在するが、しかし決して日本ほど重要な要素ではないと考えられる。 This article outlines a questionnaire survey conducted on the largest fan site of Johnnys in China. It investigated the current situation and characteristics of Johnnys’ fans. The survey shows that the majority of Johnnys' fans are women aged 20 to 30 living in prosperous cities such as Beijing and Shanghai. Compared with fans living in Japan, Chinese fans can not access the latest resources and information about Johnnys as conveniently. However, the fans in China invest large amounts of money to support their idols through the internet. Some anonymous fans who get to know each other through the internet even become real-life friends. The "tanto" system which mostly exists in Japanese fan groups of Johnnys also exists in Chinese fan groups, but it can no longer be considered a very important factor.