- 著者
-
田中 佑典
- 出版者
- 北海道大学大学院教育学研究院 臨床心理発達相談室
- 雑誌
- 臨床心理発達相談室紀要 (ISSN:24347639)
- 巻号頁・発行日
- vol.5, pp.49-69, 2022-03-18
障害当事者が自身の障害を語ろうとするときには何をいかに語ればよいのか、語り手と聞き手の相互作用という観点から「障害」の語りを実験的に検討し、考察した。先行研究では、当事者性の不確かな人が自分を語るときには、何をいかに語ればよいか、という知見が不在であった。そこで本稿では、自身が納得できるような「障害」の語りとはどのような場で何をいかに語ることか、そこでは「障害」はどのように語られていくのかを検討した。その結果、「障害」を語る際には、語り手が一方的に語るのではなく、語り手と聴き手が共に応答し合う必要性が明らかになった。また、引責から免責や主体の解体へ、因果論から現象や状況へと移行するように語り紡ぐことの重要性も示唆された。
なお、本研究では、筆者が医学的診断を受けた脳性麻痺や広汎性発達障害、それらの語義や症状を鍵括弧のつけない障害と定義する。それ以外の語られた物事をすべて「障害」として捉える。