著者
長野 真紀 今村 文彦 Maki NAGANO Fumihiko IMAMURA
出版者
神戸芸術工科大学
雑誌
芸術工学2018
巻号頁・発行日
2018-11-27

1950年代に南米ドミニカ共和国に移住した日本人移民を対象に、生活学と文化人類学の視点から、居住環境の持続性と民族固有の文化的アイデンティティの保持・継承について明らかにすることを目的とする。 ドミニカ共和国へ入植後、現在まで全移民の約1/5にあたる家族が残留して生活を営んでいる。彼らの定住化を支えた要因の一つには、ドミニカ社会との相互交渉の中で日本人としての生活、行動、文化を強く規定してきた民族的な生活思考がある。それは、日系人社会においてどのような機能を果たし、表現され、受け継がれてきたのか、移民集落の中で育まれてきた生活文化継承の実態把握と約60年にわたる生活の記憶、移民母村となる日本での暮らしの記憶を辿りながら、日本人の生活文化と、その背後にある暮らし方の原理を探る。 移住の経緯、入植地の環境、生活習慣、住まいの形態、移民母村について調査・分析し、一時的な居住目的とは異なる、現地に定住することを決意した海外移民の暮らし方を読み解き、民族的文化と移住先の文化を互いに補完し合う地域や暮らしの特性を捉え直した。 なお、本研究では在ドミニカ共和国日本国大使館を通じて、各コロニア(集落)に居住する日本人と連絡調整を行い、研究を展開することができた。
著者
石原 肇 Hajime ISHIHARA
出版者
神戸芸術工科大学
雑誌
芸術工学2018
巻号頁・発行日
2018-11-27

本稿は、芸術工学を専攻している学生に合わせた教養教育としての人文地理学の講義を目指した実践と今後の課題について報告することを目的とする。高校での地理の履修状況について把握したところ、全体的には履修している学生は少ない状況にある。このため、学生が人文地理学を体系的に理解することができるよう、テキストを使用することが必要であると考える。学生は自らが将来創作するであろう作品と人文地理学との間の関係性は希薄であると考えている場合が多い。一方、学生は自らが将来創作するであろう作品と風土との間の関係性はあるものと考える者の数が増える。人文地理学と風土は同義ではない。しかし、人文地理学は風土を理解する学問の1つである。学生が人文地理学により強く関心を持つことができるよう、自らが将来創作するであろう作品と風土との関係にも触れて講義を展開する工夫が必要と考えられた。