著者
長野 真紀
出版者
一般社団法人 芸術工学会
雑誌
芸術工学会誌 (ISSN:13423061)
巻号頁・発行日
vol.86, pp.22-29, 2023 (Released:2023-03-31)

本研究は、台湾金門島に現存する伝統的集落の移住経緯と空間特性を明らかにすることを目的とする。これまで個別に捉えられてきた全143の伝統的集落の立地環境、歴史的建築物の種類と残存数、集落規模、建物棟数、方位軸、抱護の種類と空間範囲、居住者の主要姓氏、移住前後の居住地をまとめ、集落空間を類型化した。その結果、立地環境を平地から山裾、斜面地までの10類型、自然地形と植生による抱護の種類を9つに分類した。さらに集落を構成する建物棟数から空間規模を小・中・大に設定し、歴史的建築物の残存数と合わせて、各集落の現状を明らかにした。また、居住者の主要姓氏から単姓村76、複姓村67が確認された。文献資料とヒアリング調査に基づいて長期間にわたる移動前後の居住地とその変遷を追い、現地調査により居住地の環境を理解することで、集落の移住形態を5つの型(移住群:拠点型Ⅰ、Ⅱ、転移型、定住群:発展型、安定型)に分類した。これらの結果から、周囲を海に囲まれた島嶼の環境と歴史的な居住地の移動によって構築された集落の空間特性を明らかにした。
著者
長野 真紀
出版者
日本生活学会
雑誌
生活学論叢 (ISSN:24332933)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.41-55, 2015-09-30 (Released:2021-03-29)

This paper clarifies the location of the settlement, residential environment, local culture, and way of living of Taiwan people residing in the Nagura and Takeda settlements in Ishigaki Island of the Yaeyama Islands, from the perspectives of settlement, way of life, and community. Due to various historical factors, Ishigaki Island has witnessed the phenomena of village building, deserted villages, and village transferring. Further, depending on the generation, the location, size of the settlement and the number of settlements has changed drastically. How have the people of Taiwan who had migrated and come from outside the island in the early Showa period built their residential environments and thus inherited their ethnic identity in the environment described above? Through field surveys and using historical documents and materials, this paper explores the historical transitions and way of life in Ishigaki Island.
著者
長野 真紀 今村 文彦 Maki NAGANO Fumihiko IMAMURA
出版者
神戸芸術工科大学
雑誌
芸術工学2018
巻号頁・発行日
2018-11-27

1950年代に南米ドミニカ共和国に移住した日本人移民を対象に、生活学と文化人類学の視点から、居住環境の持続性と民族固有の文化的アイデンティティの保持・継承について明らかにすることを目的とする。 ドミニカ共和国へ入植後、現在まで全移民の約1/5にあたる家族が残留して生活を営んでいる。彼らの定住化を支えた要因の一つには、ドミニカ社会との相互交渉の中で日本人としての生活、行動、文化を強く規定してきた民族的な生活思考がある。それは、日系人社会においてどのような機能を果たし、表現され、受け継がれてきたのか、移民集落の中で育まれてきた生活文化継承の実態把握と約60年にわたる生活の記憶、移民母村となる日本での暮らしの記憶を辿りながら、日本人の生活文化と、その背後にある暮らし方の原理を探る。 移住の経緯、入植地の環境、生活習慣、住まいの形態、移民母村について調査・分析し、一時的な居住目的とは異なる、現地に定住することを決意した海外移民の暮らし方を読み解き、民族的文化と移住先の文化を互いに補完し合う地域や暮らしの特性を捉え直した。 なお、本研究では在ドミニカ共和国日本国大使館を通じて、各コロニア(集落)に居住する日本人と連絡調整を行い、研究を展開することができた。
著者
長野 真紀 齊木 崇人
出版者
一般社団法人 芸術工学会
雑誌
芸術工学会誌 (ISSN:13423061)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.96-103, 2009-10-24 (Released:2017-11-30)

本研究は、台湾の山間部に居住する10種族の台湾原住民を対象に、現地調査と日治時期の文献を通して集落移動と立地選定を明らかにし、持続と変容のプロセスを探究することを目的とする。台湾原住民に関する研究は1945年以降困難な状況にあり、そのため約半世紀外部に対して閉ざされてきたが1994年以降、原住民の認定に伴い現地での許可を得た調査が可能になった。固有の文化や習俗を持つ原住民は、現在までの台湾史の視点から見ても非常に重要な課題であると考えられる。新竹縣、苗栗縣、嘉義縣、南投縣、屏東縣、台東縣、花蓮縣に居住する原住民を研究対象に選定し、場所選定とその地理位置及び自然環境からみた特性把握調査として、10民族の概要と訪地した10集落の歴史、立地状況、集落規模、集落移動の時期について現地調査で得られた資料と文献により、その内容を明らかとした。また、日冶時期の台湾地形図と当時の写真から、現在の集落との比較を行い、更に文献から明らかとなった各集落の移動経緯から各族の集落立地の変遷を辿り、移動前・後の集落空間の変容を明らかにした。その結果、各集落の移動要因は災害(1集落)、災害と国民政府時期の還村計画(1集落)、日治時期の番社移住計画(4集落)、生業による焼畑(1集落)、不明(3集落)であることが分かった。対象集落の日治時期以降の集落移動は、災害と還村計画による1集落のみであり、その他の集落はほぼ定住化し、集落形態や規模、立地は約60年間変化することなく現在に至っている。また、原住民集落を立地環境と生業別に、(1)標高500〜1,200mの山腹斜面地・テラス・鞍部に立地する狩猟・採集型、(2)標高500m以下の山裾または平地に立地する農耕・畜産型、(3)標高100m以下の島嶼に立地する半漁半農型、(4)山裾の湖畔に立地する漁業型の4つに分類し、原住民集落を体系的に捉えた。そして、集落移動と立地環境から持続型、変容型、変容持続型、順応型、発展型、融合型の6つに分類し、各集落の環境構築要素を明らかにした。
著者
長野 真紀 今村 文彦 黄 國賓 Maki NAGANO Fumihiko IMAMURA Kuo-pin HUANG
出版者
神戸芸術工科大学
雑誌
芸術工学2016
巻号頁・発行日
2016-11-25

本研究では、福佬(Ho-lo)人の移住文化を対象に、その歴史と暮らしの変遷、居住環境について分析・考察した。研究対象地は周囲を海に囲まれた環境下にあり、独自の伝統文化や習俗、空間構造を継承している。このような地理的・文化的環境の中で、東アジアの結節点となる台湾領域中国福建省金門島及び八重山諸島石垣島を主対象に捉え、研究を展開した。 金門島では、血縁による結びつきが重視され、同一氏族により形成された宗族的つながりを強く持つ単姓村と、多数の氏により形成される複姓村に分類される。対象集落は、海岸線に沿った緩やかな台地に立地し、1315 年頃に福建省厦門からの移住者が開墾した農漁村集落である。住居は四合院で構成され、一定の領域内で中規模な空間を形成しているが、宗族ごとに住居の向きが異なり、それぞれに方向軸を持っているため各時代の空間形成の発展性を読み取ることができる。 また、集落は明確な境界域を定めず、人口増加に対応しながら空間を拡張している。これは、島に福佬人しか居住していないこと、地形条件に対する制限が少ないことが要因として考えられる。台湾本島や石垣島では、住居の周囲は自然地形や植栽などにより空間を補っている場合が多い。
著者
長野 真紀 齊木 崇人
出版者
Architectural Institute of Japan
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.75, no.650, pp.829-835, 2010

The purpose of this study is to redefine Hakka village in the whole land of Taiwan by using the Taiwan Bao-tu in which the spread of residential area and their spatial compositions of each ethnic groups can be recognized, and to clarify the characteristics of the locations and the forms of village. Moreover, I intend to grasp systematically the viewpoint of environment to Hakka, beyond the countries and districts, through the shares of the research of Hakka in Taiwan and the communications with local researchers. The results of this study are as follows. The Hakka village is classified into 4 types by village form and the characteristic of location space : these are 1)Independent Defense Type and 2)Scattered Adaptation Type and 3)Scattered Stably Type and 4)Scattered Cooperation Type.
著者
齊木 崇人 小玉 祐一郎 宮代 隆司 土肥 博至 杉本 正美 上原 三知 佐藤 滋 土肥 博至 杉本 正美 上原 三知 佐藤 滋 中井 検裕 鎌田 誠史 橋本 大樹 長野 真紀
出版者
神戸芸術工科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

新しい住宅地開発プロジェクト、神戸・ガーデンシティ舞多聞の実践と、本研究の指針とした、E・ハワードの田園都市思想とガーデンシティ、それらの系譜にみるコミュニティのフィールドワークを同時進行的に行うことにより、将来の持続可能なコミュニティの創出・再生を目指す居住環境計画に対する、「特有価値を持つ空間デザインを生み出す手法」「コミュニティ形成を促す方策」「空間とコミュニティを持続・向上させるエリアマネジメントの仕組み」の指針を導き出した。