- 著者
-
笹島 雅彦
- 出版者
- 跡見学園女子大学
- 雑誌
- 跡見学園女子大学文学部紀要 = JOURNAL OF ATOMI UNIVERSITY FACULTY OF LETTERS (ISSN:13481444)
- 巻号頁・発行日
- no.55, pp.A75-A92, 2020-03
米中対立は、21世紀型の覇権争いの様相を見せており、長期化する見通しだ。トランプ政権が中国を「現状変更国家」と位置付けたことで、米中の「大国間競争」は、先端科学技術競争の側面が強くなり、大学機関、研究機関など学術界にも及んでいる。トランプ政権と米連邦議会は、米国の大学と中国企業との産学連携や、増加する中国人研究者、留学生にも矛先を向けている。このため、米連邦捜査局(FBI)は、中国への技術流出を担う研究者や大学生の取り締まりを急速に強化している。ただ、行き過ぎた規制強化となると、中国系の優秀な頭脳を遮断することにつながり、大学の競争力、米企業への人材供給にも悪影響を及ぼしかねない。学術界では、開放性と成果の公表が産学連携の原則として認識されており、研究成果が秘密にされることなく、広く公表され、「知の共有」が進むこ とを当然視してきた。そこに、知的交流、人的交流や研究資金への制限が課せられることに戸惑いを隠せない状況だ。こうした現象から、米国の研究機関、大学における中国人研究者、留学生の動向と、その学術交流、人的交流が肯定的評価から否定的評価へと転換しているジレンマについて探っていく。