- 著者
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長田 道
- 出版者
- 近畿大学 心理臨床・教育相談センター
- 雑誌
- 近畿大学心理臨床・教育相談センター紀要 (ISSN:24349933)
- 巻号頁・発行日
- vol.3, pp.43-50, 2019-03-15
[要旨]本稿は,不登校の小学生女児をスクールカウンセラーとして家庭訪問を行った2年間の過程を報告したものである。本児童は幼少期より消極的,受け身的な適応姿勢を続けていたが,周囲の子ども達が前思春期を迎え,密接な仲間関係を築き始めたことからその在り方が行き詰り,学校生活から退避したと考えられた。その背景要因として,本児の家族が社会との交流を避け,殻に閉じこもったような生活をしていた一方で,家族間には境界がなく未分化な状態であったため,本児の前思春期の歩みを支えるには脆弱であったことが考えられた。本児の家族のように閉塞した家庭には,家族以外の他者の存在が大きな意味を持ち,スクールカウンセラーは重要な役割を果たしうる。また,不登校の子どもや家族は積極的に支援を模索する力が不足している場合が多く,支援者が家庭に出向くことが有効である。その際には,明確な面接構造を保つことが,「安定した他者」として機能することを可能にする。この事例でも,スクールカウンセラーが安定した面接構造を設定したことで,本児にとっての「安定した他者」として存在することを可能にし,本児が家族と分離し,自己の確立に向かう前思春期の成長の過程を支えた。