著者
赤松 大輔
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.419-438, 2022-12-30 (Released:2022-12-30)
参考文献数
83

現在,教科固有の見方・考え方や,教科を超えた資質・能力を育む重要性が指摘されている。こうした問題意識を踏まえ,本稿では,学習に対する学習者の信念である学習観に着目し,教科・領域という観点から,学習観をはじめとした学習者の信念に関する知見の整理と展望を行った。特に,認識的信念研究と学業的自己概念研究で想定される信念の階層的構造に着目した。まず,信念の領域固有性に関する理論モデルである認識論の統合的領域理論(Muis et al., 2006)のモデルに基づき,先行研究を領域横断型研究と領域特定型研究に分類した。先行研究を整理・展望することを通して,近年は教科や学習全般のみではなく,教科で扱われる具体的なトピックや日常生活を含むより全般的な信念といった新たな階層の信念が取り上げられ,階層に応じて信念の機能や可変性に差異がある可能性が示唆された。次に,学業的自己概念研究では,教科の連続的な関係性や階層の異なる信念間の影響の方向性に関する知見が多くみられた。最後に,これらの知見を学習観研究のモデルに統合することで,特定領域で形成された学習観が他の領域に広がっていくという新たなモデルを提案した。
著者
赤松 大輔 中谷 素之 小泉 隆平
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
pp.27.2.9, (Released:2018-07-23)
参考文献数
16
被引用文献数
3

The purpose of this study was to examine the reciprocal causal relationships between beliefs about learning and learning strategies, which, although suggested by previous research, have been lacking sufficient empirical evidence. Undergraduates (N=105) completed self-reported questionnaires to indicate beliefs about learning including strategy orientation, and learning strategy use consisted of meta-cognitive strategy, deep-processing strategy, and autonomous help-seeking. Cross-lagged structural equation analyses revealed cross-lagged effects between strategy orientation and learning strategies. Results suggest that beliefs about learning and learning strategy use have reciprocal causal relationships.
著者
赤松 大輔 中谷 素之 小泉 隆平
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.171-174, 2018-11-01 (Released:2018-11-08)
参考文献数
16
被引用文献数
1 3

The purpose of this study was to examine the reciprocal causal relationships between beliefs about learning and learning strategies, which, although suggested by previous research, have been lacking sufficient empirical evidence. Undergraduates (N=105) completed self-reported questionnaires to indicate beliefs about learning including strategy orientation, and learning strategy use consisted of meta-cognitive strategy, deep-processing strategy, and autonomous help-seeking. Cross-lagged structural equation analyses revealed cross-lagged effects between strategy orientation and learning strategies. Results suggest that beliefs about learning and learning strategy use have reciprocal causal relationships.
著者
赤松 大輔
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.265-280, 2017 (Released:2017-09-29)
参考文献数
64
被引用文献数
15

本研究では, 高校生723名を対象として, 英語の学習観と学習方略および学業成績の関連を検討した。因子分析の結果, 教科共通の学習観として学習量志向と方略志向, 教科固有の学習観として伝統志向と活用志向, 間接的方略としてメタ認知的方略と社会的方略, 直接的方略として体制化方略, イメージ化方略, 反復方略, そして音声記憶方略が見いだされた。パス解析の結果, 学習観においては教科共通の学習観が教科固有の学習観を規定し, 学習方略においては間接的方略が直接的方略を規定するというように, 学習観内と学習方略内にそれぞれに規定関係があることが確認された。また, 学習観と学習方略の間には, 教科共通の学習観が間接的方略を予測する教科共通の学習プロセスと, 教科固有の学習観が直接的方略さらには学業成績を予測する教科固有の学習プロセスがあることが明らかになった。この結果を踏まえ, 学習行動全体を改善するためには教科共通の学習プロセスに注目し, 英語学習における学業成績を改善するためには教科固有の学習観に注目するというように, 学習観と学習方略の関係を教科共通と教科固有の両観点から捉える必要性が示唆された。
著者
赤松 大輔
出版者
日本行動計量学会
雑誌
行動計量学 (ISSN:03855481)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.113-130, 2022 (Released:2023-04-22)
参考文献数
94

This review addresses the development of computational models in educational psychology. First, we generally explained computational models and their background. Second, we searched academic articles relating to computational models in psychology and other fields. The search revealed that, on the one hand, international journals in behavioral or cognitive sciences include several articles relating to computational models, and the number is increasing in general psychology journals. On the other hand, domestic and international educational psychology journalsscarcely have relating papers. Third, we described the current challenges in educational psychology and how the ideas and analytical method on computational models would contribute to overcome these challenges.
著者
赤松 大輔 小泉 隆平
出版者
近畿大学 心理臨床・教育相談センター
雑誌
近畿大学心理臨床・教育相談センター紀要 (ISSN:24349933)
巻号頁・発行日
no.5, pp.1-12, 2021-03-15

[要旨]本研究では,昼間定時制高校の新入生を対象として,彼らの自尊感情の高さと変動性に関する検討を行った。118名の生徒に4月,7月,11月にわたる3時点の縦断調査を行った。相関分析の結果,自尊感情のレベル(3時点を通した自尊感情の平均的な高さ)と変動性(3時点にわたる自尊感情の個人内の変化の大きさ)の間には,統計的に有意ではなかったものの,理論的に妥当な負の相関(r = -.14)が示された。また,自他の情動を適切に認識し,調整する能力である情動知能との関連も検討した。その結果,状況対処や感情制御にかかわる情動知能は,自尊感情のレベルと有意な正の相関(r = .58)を,自尊感情の変動性と有意な負の相関(r = -.30)を示した。この結果から,状況対処や感情制御にかかわる情動知能が,自尊感情の高さと安定性に寄与する可能性が示唆された。考察では,教育場面において子どもの自尊感情のレベルと変動性の双方を支えるうえで,情動知能に着目した教育的支援の在り方の重要性について議論した。
著者
安田 正美 赤松 大輔
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、イッテルビウム(Yb)光格子時計における、光格子レーザー由来の不確かさ低減のために、Yb原子の青方離調魔法波長を探索することを目的として、以下の成果を得た。①Yb光格子時計のさらなる高度化を達成し、絶対周波数測定不確かさを1桁以上低減した。これによりYb光格子時計が秒の2次表現に採択された。②Yb/Sr光格子時計周波数比の直接測定に成功した。マイクロ波周波数基準による光シフト周波数測定と比べて、1桁以上測定時間を短縮できる。③光シフト誘起用青色レーザー光源の開発に成功した。赤外線半導体レーザーを光増幅し、第2次高調波発生により、波長399nmで100mWの出力を達成した。