著者
石野 友子 北川 知佳 田中 貴子 中ノ瀬 八重 與座 嘉康 田所 杏平 三川 浩太郎 千住 秀明
雑誌
長崎大学医学部保健学科紀要 = Bulletin of Nagasaki University School of Health Sciences (ISSN:09160841)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.1-5, 2003-06

本研究の目的は,慢性呼吸器疾患患者に対するADL指導の有用性を検討することである.対象は慢性呼吸器疾患患者(12名)と高齢者(9名)で,洗濯物を干す動作を上肢挙上位と非挙上位にて行い,異なる作業方法が呼吸循環応答と自覚症へ与える影響を呼気ガス分析,Borg scaleを用いて検討した.結果,呼吸器疾患患者では分時換気量,体重あたりの酸素摂取量,Dyspnea index,上肢の疲労感において上肢挙上位が有意に高かった.一方高齢者では動作間の有意差は認められなかった.このことから呼吸器疾患の特異性が示唆され,ADL指導での工夫は有用であった.
著者
横山 茂樹 千住 秀明 管原 正志 田井村 明博
雑誌
長崎大学医学部保健学科紀要 = Bulletin of Nagasaki University School of Health Sciences (ISSN:09160841)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.63-68, 2002-12

この研究の目的は,運動中において腹式呼吸による呼吸コントロールの有効性を明らかにすることである.対象は12名の健常男性とし,運動負荷は自転車エルゴメーターを用いて,Ramp負荷法によって最大酸素摂取量(maximum oxygen intake:Vo2max)の80%(80%Vo2max)まで施行した.実験条件は呼吸コントロールを行わない場合と,運動開始時から腹式呼吸を用いて呼吸コントロールを行った場合の2条件とした.呼吸代謝測定は呼気ガス分析器を用いて分時換気量(minute ventilation:VE)や体重あたりの酸素摂取量(oxygen intake/body weight:Vo2/BW),一回換気量(tidal volume:TV),呼吸数(respiratory rate:RR),心拍数(heart rate:HR)などの換気パラメータを測定した.その結果,運動中における腹式呼吸の効果としてVE減少やTV増加,RR減少が確認できた.また80%Vo2maxの運動負荷中において,運動初期にVEをはじめRR,HRの項目にCentral command説によると考えられる一時的な変化がみられた.運動時間70%以降の運動後半において,腹式呼吸によってVo2/BW増加とVE/Vo2減少という影響が出現していた.またV-slope法による無酸素性作業閾値(anaerobic threshold:AT)ポイントも,腹式呼吸により有意に高値を示しており,有酸素系エネルギーの供給が高められると考えらえた.
著者
田川 泰 浦田 秀子 井口 茂 中野 裕之 石橋 経久 楠本 真理子 片田 美咲 Saunders Todd 山口 美和子 松本 愛 山根 幸子
雑誌
長崎大学医学部保健学科紀要 = Bulletin of Nagasaki University School of Health Sciences (ISSN:09160841)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.89-94, 2002-06

音楽の種類による心理的,身体的影響の差異はいまだ明らかではない.そこで,整形外科領域で同様の体動制限を受けている症例を対象に,クラシック音楽群4症例とロック音楽群5症例による受動的音楽療法下における心理的ストレス反応と細胞性免疫能を検討した. クラシック群はほとんどの症例において快感を感じ,空想,回想のため思考低下を認めたが,睡眠傾向はほとんど認められなかった.免疫能の指標であるCD4/CD8は音楽療法開始時より終了時に低値を示した.一方,ロック群は快感と不快感を感じる個人差を呈したが,空想,回想は認められなかった.5症例中3症例に睡眠傾向を認めた.CD4/CD8は個人差を認めたが,快感を感じた症例は終了時に低値を認めた. 上記のように,音楽の種類により,心理的,免疫学的差異があり,これらの特徴を理解して音楽療法を評価・活用すべきである.