- 著者
-
田井村 明博
松本 孝朗
大渡 伸
- 出版者
- 長崎大学
- 雑誌
- 一般研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 1995
本研究ではこれまでの水泳中の発汗量(体重減少量),水分摂取量についての結果を踏まえたうえで,水温,運動強度(泳速度)が発汗量および体温におよぼす影響と(実験1),水泳選手の体温調節反応の特性(実験2)を検討することを目的とした.対象は実験の目的,方法についての説明を行い,被験者として協力の承諾が得られた大学男子選手5名であった.実験1では水温2種類(26.4℃,29.2℃),泳速3種類(1,500m自由形ベスト記録の90%,95%,97.5%の泳速度)の条件で1,500m自由形を行わせた.測定は1,500mの記録,体温,心拍数,自覚的運動強度(R.P.E.)および体重減少から求めた発汗量であった.実験2では人工気象室内26℃,33%rhの条件にて,Water Bath法により温熱刺激を与え,下肢局所加温時の局所発汗量,発汗波,鼓膜温,皮膚温,を連続記録した.実験1では,心拍数,R.P.E.,体温変化は泳速(運動強度)による有意な差が認められ,泳速によって上昇することが認められたが,水温による有意な変化は認められなかった.発汗量は泳速,水温において有意な差が認められ泳速の上昇に伴い,また水温が高いほど発汗量が多くなった.以上の結果より,本研究で設定した水温の範囲では水泳中の体温は水温よりも泳速に影響されると考えられる.水温が高くなると発汗量が増えるので,水温が30℃前後あるいはそれ以上の水温での泳速度の大きい水泳トレーニングでは,水泳中の脱水予防と過度の体温上昇を押さえるために発汗に応じた水分摂取が必要であることが示唆された.実験2では陸上種目の鍛練者と比較して発汗開始時間が早く,発汗量が多い傾向にあった水泳選手の体温調節反応の明確な特徴は見いだせなかった.今後の検討課題としたい.