著者
米山 恭平 榊原 僚子 浅香 貴広 高田 治実 菅沼 一男
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第36回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.193, 2017 (Released:2019-04-03)

【はじめに】前院にて右下腿切断し筋力や立位能力を考慮し装飾用義足を作成された症例に対し,義足調整を行い歩行可能となった症例について報告する.【対象】対象は慢性腎不全と診断され血液透析を行っている80 歳代男性であった.2016 年8 月に糖尿病性の閉塞性動脈硬化症により右下腿切断術をし,装飾用義足を作成した後に理学療法を目的に同年10 月に当院に入院となった.入院時の身体機能は下肢MMT3~4 レベルであり移動は車椅子自立であった.本人の希望で義足を装着し平行棒内で歩行練習を実施した.しかし,装飾用義足であるため荷重部と免荷部が不明瞭であったため断端と義足の不適合により,脛骨末端前面と底面に荷重時痛を認め,義足側での片脚立位が不可能で歩行不能であった.新たな義足作成には、経済的問題があり装飾用義足での歩行練習の実施を余儀なくされていた.被験者には研究の主旨と目的を説明し同意を得た上で実施した.【方法】歩行練習は週3 回非透析日に実施した.断端と義足の不適合を調整するためにソケット内部にゴム板を貼り調整をした.脛骨末端前面と底面の荷重時痛の原因は,ソケット後壁の高さが低かった事とソケット前面支持力不足であった.そこで脛骨前面に貼物調整をし,脛骨末端前面と底面の除圧をし,ソケット後面に貼物調整を行う事で膝蓋腱への体重支持を行った.その後アライメント調整を行った.【結果】断端状態に合わせ,貼物とアライメント調整により即時的に疼痛が消失し平行棒内を近位監視で10 往復可能となった.2 回目の治療では平行棒外歩行が自立し,現在は100 m以上の自立歩行が可能となった.【考察】本症例は前院で歩行不能と判断されたが,身体機能が残存していたため本院ではソケット適合とアライメント調整により即時的に義足歩行が可能となった.理学療法士が義足製作,適合判定の知識を十分に習得し対応することで,患者の歩行能力の向上が期待できると考えた.
著者
榊原 僚子 加藤 宗規 菅沼 一男 芹田 透 知念 紗嘉
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.473-479, 2010 (Released:2010-07-28)
参考文献数
12

〔目的〕股関節痛と歩行困難を呈していた症例に対して,応用行動分析学に基づいた介入を行った結果について検討すること。〔対象〕両側変形性股関節症による股関節痛の増強により歩行不可能となり他院での4ヶ月の入院後,当院での外来通院を開始した52歳女性であった。〔方法〕1日で歩行した歩数(歩行量),歩行時痛についてベースライン測定後に行動分析を行い,規定した目標歩行量の遵守と自己記録を行動とした介入を設定した。介入の有効性について,1セッションが約3ヶ月間の7セッションの経過における歩行量,歩行時痛,使用する歩行補助具から検討した。〔結果〕行動は継続され,歩行量のばらつきと歩行時痛が減少し,歩行補助具は両松葉杖からT字杖に変化した。[結語]応用行動分析学を用いた今回の介入は,変形性股関節症で慢性的な強い歩行時痛を有していた症例に対して,理学療法士による1日の歩数を制限する指導を長期にわたり遵守させ,痛みと歩行能力の改善に影響したと考えられた。