著者
高田 治実 寺村 誠治 豊田 輝
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.223, 2003 (Released:2004-03-19)

<はじめに>疼痛・痺れは、ADLや精神面に大きく影響する。リハビリテーション施行の上でも、訓練の中止や遅延の原因になることが多い。疼痛の対処には、種々の方法があるが、我々はDNICアプローチで、疼痛に対する治療を行い有効な効果を認めているので報告する。<DNIC;diffuse noxious inhibitory controlsとは>DNIC(広汎性侵害抑制調節)は、1979年にLe.Barsらによって、麻酔したラットの研究で報告された。疼痛のある部位と別の部位を同時に刺激することにより、脊髄後角や三叉神経脊髄路核尾側亜核の疼痛を伝達する広作動域ニューロンの活動が抑制され疼痛が改善される現象である。1990年には人の屈曲反射に関する研究で、内因性オピオイドの関与の可能性が報告された。<DNIC アプローチとは>本治療は、DNICの現象を応用し、疼痛を起こしている筋肉(責任筋)を検査し、その筋肉を軽く圧迫した状態で、疼痛が改善する別の筋肉(反応刺激点)を圧迫刺激し疼痛を改善させる。<方法>疼痛・痺れおよび幻肢痛に対し本治療を施行。施行頻度は、可能な限り毎日行った。治療時間は、5分から60分。評価は、VAS、睡眠状態、食欲、心理状態、ROMおよびFFDなどを用いた。<症例>症例1: MT、49歳、女性、看護婦、頚椎ヘルニア。H14年3月30日・31日にハードなテニスの練習を行い、その後左頚部、肩甲帯から上肢にかけて疼痛・痺れ出現。4月12日より本治療を開始。症例2:T.F、58歳、男性、自動車リース業、変形性腰椎症、腰痛症。H13年8月胡座位で腰痛出現し寝返り不能となる。同年9月13より本治療開始。症例3:K.T、53歳、男性、医師、頚椎ヘルニア。数ヶ月前から右頚部、肩甲帯から上肢に疼痛・痺れ出現。H14年2月に前期症状が増悪、本治療開始。症例4:H.I、58歳、女性、調理師。約2ヶ月前から疼痛・痺れが増強し、H14年5月14日より本治療開始。症例5:T.S、26歳、男性、ビルのメンテナンス業、左前腕切断。H14年7月21日交通事故にて左手轢断、同年8月13日より幻肢痛・左腕の疼痛に対し本治療開始。<治療>症例1:本治療10回施行により疼痛・痺れ共に消失。症例2:本治療8回施行により疼痛・痺れ共に消失。症例3:本治療23回施行により疼痛が消失。痺れはVASで1、気にすれば感じる程度となった。症例4:本治療施行により疼痛・痺れ共に消失。夜間痛も消失。症例5:本治療10末まで施行し、疼痛消失。痺れはVASで0から1、食欲、睡眠状態良好。<まとめ>今回報告した症例では、本治療で疼痛・痺れ、幻肢痛に対して著名な効果を認めた。今後は、本治療法の適応に関する研究も必要と考えている。しかし、DNICも理論的に不明な点が多いため、ケースを通して検証して行きたい。
著者
米山 恭平 榊原 僚子 浅香 貴広 高田 治実 菅沼 一男
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第36回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.193, 2017 (Released:2019-04-03)

【はじめに】前院にて右下腿切断し筋力や立位能力を考慮し装飾用義足を作成された症例に対し,義足調整を行い歩行可能となった症例について報告する.【対象】対象は慢性腎不全と診断され血液透析を行っている80 歳代男性であった.2016 年8 月に糖尿病性の閉塞性動脈硬化症により右下腿切断術をし,装飾用義足を作成した後に理学療法を目的に同年10 月に当院に入院となった.入院時の身体機能は下肢MMT3~4 レベルであり移動は車椅子自立であった.本人の希望で義足を装着し平行棒内で歩行練習を実施した.しかし,装飾用義足であるため荷重部と免荷部が不明瞭であったため断端と義足の不適合により,脛骨末端前面と底面に荷重時痛を認め,義足側での片脚立位が不可能で歩行不能であった.新たな義足作成には、経済的問題があり装飾用義足での歩行練習の実施を余儀なくされていた.被験者には研究の主旨と目的を説明し同意を得た上で実施した.【方法】歩行練習は週3 回非透析日に実施した.断端と義足の不適合を調整するためにソケット内部にゴム板を貼り調整をした.脛骨末端前面と底面の荷重時痛の原因は,ソケット後壁の高さが低かった事とソケット前面支持力不足であった.そこで脛骨前面に貼物調整をし,脛骨末端前面と底面の除圧をし,ソケット後面に貼物調整を行う事で膝蓋腱への体重支持を行った.その後アライメント調整を行った.【結果】断端状態に合わせ,貼物とアライメント調整により即時的に疼痛が消失し平行棒内を近位監視で10 往復可能となった.2 回目の治療では平行棒外歩行が自立し,現在は100 m以上の自立歩行が可能となった.【考察】本症例は前院で歩行不能と判断されたが,身体機能が残存していたため本院ではソケット適合とアライメント調整により即時的に義足歩行が可能となった.理学療法士が義足製作,適合判定の知識を十分に習得し対応することで,患者の歩行能力の向上が期待できると考えた.
著者
高田 治実 寺村 誠治 豊田 輝
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2002, pp.223, 2003

<はじめに>疼痛・痺れは、ADLや精神面に大きく影響する。リハビリテーション施行の上でも、訓練の中止や遅延の原因になることが多い。疼痛の対処には、種々の方法があるが、我々はDNICアプローチで、疼痛に対する治療を行い有効な効果を認めているので報告する。<DNIC;diffuse noxious inhibitory controlsとは>DNIC(広汎性侵害抑制調節)は、1979年にLe.Barsらによって、麻酔したラットの研究で報告された。疼痛のある部位と別の部位を同時に刺激することにより、脊髄後角や三叉神経脊髄路核尾側亜核の疼痛を伝達する広作動域ニューロンの活動が抑制され疼痛が改善される現象である。1990年には人の屈曲反射に関する研究で、内因性オピオイドの関与の可能性が報告された。<DNIC アプローチとは>本治療は、DNICの現象を応用し、疼痛を起こしている筋肉(責任筋)を検査し、その筋肉を軽く圧迫した状態で、疼痛が改善する別の筋肉(反応刺激点)を圧迫刺激し疼痛を改善させる。<方法>疼痛・痺れおよび幻肢痛に対し本治療を施行。施行頻度は、可能な限り毎日行った。治療時間は、5分から60分。評価は、VAS、睡眠状態、食欲、心理状態、ROMおよびFFDなどを用いた。<症例>症例1: MT、49歳、女性、看護婦、頚椎ヘルニア。H14年3月30日・31日にハードなテニスの練習を行い、その後左頚部、肩甲帯から上肢にかけて疼痛・痺れ出現。4月12日より本治療を開始。症例2:T.F、58歳、男性、自動車リース業、変形性腰椎症、腰痛症。H13年8月胡座位で腰痛出現し寝返り不能となる。同年9月13より本治療開始。症例3:K.T、53歳、男性、医師、頚椎ヘルニア。数ヶ月前から右頚部、肩甲帯から上肢に疼痛・痺れ出現。H14年2月に前期症状が増悪、本治療開始。症例4:H.I、58歳、女性、調理師。約2ヶ月前から疼痛・痺れが増強し、H14年5月14日より本治療開始。症例5:T.S、26歳、男性、ビルのメンテナンス業、左前腕切断。H14年7月21日交通事故にて左手轢断、同年8月13日より幻肢痛・左腕の疼痛に対し本治療開始。<治療>症例1:本治療10回施行により疼痛・痺れ共に消失。症例2:本治療8回施行により疼痛・痺れ共に消失。症例3:本治療23回施行により疼痛が消失。痺れはVASで1、気にすれば感じる程度となった。症例4:本治療施行により疼痛・痺れ共に消失。夜間痛も消失。症例5:本治療10末まで施行し、疼痛消失。痺れはVASで0から1、食欲、睡眠状態良好。<まとめ>今回報告した症例では、本治療で疼痛・痺れ、幻肢痛に対して著名な効果を認めた。今後は、本治療法の適応に関する研究も必要と考えている。しかし、DNICも理論的に不明な点が多いため、ケースを通して検証して行きたい。
著者
豊田 輝 高田 治実 菅沼 一男 芹田 透
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Gc1040, 2012

【はじめに】 理学療法評価において歩行分析は,重要な手段として位置づけられ,特に義足歩行分析は切断者の残存機能を最大限に活かすためになくてはならない評価項目である.しかしながら,この義足歩行分析を的確に実施するために必要な情報の多くは,その現象の説明に留まっているのが現状である. そこで,義足歩行分析を熟練者はどのような方法で観察評価しているかを明らかにし,経験の浅い者の義足歩行評価技能向上の一助となる情報を提供することを目的とした.【方法】 切断者のリハビリテーションに5年以上従事している理学療法士10名(男性9名,女性1名,平均経験年数9.5±3.3年,以下熟練群)と同リハビリテーション従事年数が1年未満の理学療法士10名(男性7名,女性3名,平均経験年数0.1±0.2年,以下初心群)を対象とした. まず,筆者が作製した片側大腿切断者の10m直線歩行における正常歩行映像(ソケット不適合やアライメント異常がない状態の歩行映像)をスクリーンに投影させ観察させた.次に,2つの異常歩行映像(あるアライメント異常を筆者が意図的に設定した状態での異常歩行映像,課題1外側ホイップ,課題2側傾歩行)を分析し,3設問のアンケート(設問1.異常歩行の名称,設問2.その原因となる義足アライメント異常,設問3.その修正方法について)に回答することを事前に説明した.また,その義足歩行映像は対象者自身が課題ごとに「アンケート内容に回答できる」と判断するまで繰り返し流すことも説明した.その後の手順は,課題ごとに異常歩行映像をスクリーンに投影し,歩行分析させた.この際対象者は,眼球運動計測装置(モバイル型アイマークレコーダEMR-9,NAC社製,以下EMR-9)を装着した状態で,この映像をスクリーンから3m離れた位置で静止立位にて歩行分析を行った.また,歩行分析終了までの時間を評価所要時間として計測した.尚,アンケートには,歩行分析終了後に対象者自身で記入させた. 得られたデータの解析方法は,EMR-9によって歩行観察時の視野映像に注視点を表示させるとともに,解析ソフト(EMR-dFactory)によって視線軌跡及び停留点(0.1秒以上)の定量解析を行った.統計的手法としては,アンケート設問1の異常歩行名称正答率にはχ2検定を用い,評価所要時間にはMann-WhitneyのU検定を用いて検討した.また,いずれも危険率5%未満を有意水準とし,全ての分析にはPASW Statistics18を用いた.【倫理的配慮、説明と同意】 対象者には,本研究の趣旨を説明し同意を得た.また,本研究結果を個人が特定できる形で公表しないことも説明した.その他,映像作製に協力頂いた切断者にも本研究の趣旨を説明し同意を得た.【結果】 評価所要時間では,課題1で初心群が平均63,1±38.8秒,熟練群が6,2±1,3秒,課題2で初心群が平均65,0±34.9秒,熟練群が6,8±0,6秒であり,いずれも優位に熟練群が短時間で分析を終了していた.また,アンケート設問1の正答率は,初心群で10%,熟練群で100%であり,優位に熟練群が高い正答率であった.その他,EMR-dFactoryによる注視項目分析と停留点分析より,アンケート設問1を正答した者には,特定の異常歩行ごとに遊脚期,立脚期において共通した注視点,停留点及び注視順があることが明らかとなった.具体的には課題1では,遊脚初期において義足側足部と膝継手を注視及び停留しながら観察し,課題2では,遊脚期には義足側股関節周囲,膝継手及び足部を,立脚期には義足側肩関節周囲に注視及び停留しながら観察していた.一方,この設問に誤答した者は,異常歩行の種類,遊脚期,立脚期を問わず身体のあらゆる部位を無作為に観察しており,注視点,停留点及び注視順の全てにおいて分散した状態であった.【考察】 熟練群は初心群に比較し歩行分析に要する所要時間が優位に短く,正答率も優位に高かった.また,アンケート設問1に正答した者の注視点,停留点及び注視順は,共通したものであった.これらのことから,経験年数を重ねることで適切な分析が可能になる反面,初心者は,切断者に大きな負担をかけながら歩行分析を実施する可能性が高いことが示唆された.これでは,理学療法士全体の質が低下することに成りかねない. この問題解決のために,本研究の成果を教育方法のひとつとして活用できると考える.設問1で正答した者全てに共通する注視点,停留点及び注視順を抽出し,外側ホイップもしくは側傾歩行に対する歩行観察手順として示すことにより,理学療法士の卒前・後教育の資料として活用できると考える.【理学療法学研究としての意義】 義足歩行分析の教育的なひとつの方法論として,今回の研究成果は活用できると考える.これにより,初心者が外側ホイップもしくは側傾歩行の義足歩行分析を実施する際の有益な情報になることが示唆された.
著者
菅沼 一男 平林 茂 金子 千香 高田 治実 江口 英範
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.163-167, 2016 (Released:2016-03-05)
参考文献数
16
被引用文献数
3

〔目的〕理学療法学科1学年女子学生における精神的健康度と大学生活不安との関連を調査すること.〔対象〕平成27年2月に1学年に在籍する4年制大学の理学療法学科女子学生44名であった.〔方法〕コーネル・メディカル・インデックスによる精神的健康度と大学生活不安尺度を調査した.〔結果〕CMIにて32%の学生が神経症またはその可能性ありと分類され,これらの学生は,CLASの日常生活不安,評価不安,大学不適応感,総合点のすべてにおいて正常群と比べて有意に高値であった.〔結語〕神経症傾向の学生は,対人関係,学業成績,大学への適合感,就職について不安感を持つ学生が多い.このため,早期に良好な対人関係を作られる援助,職業意識を高める指導など不安を軽減させるための対策が必要である.