著者
小野里 好邦 斉藤 美貴 照屋 健
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-I, 通信I-情報通信システム・理論 (ISSN:09151877)
巻号頁・発行日
vol.78, no.10, pp.438-443, 1995-10-25

ディジタル衛星通信時代における多元接続方式では,各ユーザのもつ多元性と衛星通信路全体としての統合を調和的に実現することが要求される.スロット付アロハ方式は基本的なランダムアクセス方式であり,時間軸をスロット化し,スロットに従って各地球局はランダムにパケットを送出する.本論文では,まずスロット付アロハ方式の安定条件より,その利用限界を示す.これは,ランダムアクセス方式の基本的な形態における利用可能範囲を与えている.つぎに,ユーザの多様な要求に適合した多元接続が可能なインスタンス競合割当て方式について概説する.これは,ユーザの多様な要求に応えながら同時に衛星通信路としての基本的な要求も満たすことができる方式である.
著者
小川 耕司 中川 健治
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-I, 通信I-情報通信システム・理論 (ISSN:09151877)
巻号頁・発行日
vol.80, no.2, pp.64-73, 1997-02-25
被引用文献数
11

ATM網では10^<-12>オーダのセル廃棄率の特性を知る必要がある. この特性を一般的なモンテカルロ(MC: Monte Carlo)シミュレーションで得るには膨大な時間を必要とする. インポータンスサンプリング(IS: Importance Sampling)法はMC法の高速化に有効である. ISでは真の分布を変化させたシミュレーション分布でシミュレーションを行う. ISで高速化を図るためにIS推定値の分散が最小となる最適シミュレーション分布を決定することが重要である. ATM網のキューイングにおいて, 定常状態のキュー長Qがある値qを超える確率をP[Q>q]とする. 本論文では, ISの最適シミュレーション分布を用いて高速に10^<-12>オーダのP[Q>q]の推定値を得ることを目的とする. 最適シミュレーション分布を決定する従来の方法では決定に相当の時間を必要とする, 等の問題がある. 本論文では, これらの問題を克服して, マルコフ連鎖の性質とLarge Deviation Theoryを利用して理論的に最適なシミュレーション分布を導出した. そして実際に導出した最適シミュレーション分布でISシミュレーションを行った. その結果, M/D/1, 2状態MMPP/D/1モデルにおいて10^<-12>オーダのP[Q>q]の推定値を高速に得ることを可能にした.
著者
栗田 孝昭 井合 知 北脇 信彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-I, 通信I-情報通信システム・理論 (ISSN:09151877)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.331-339, 1993-04-25
参考文献数
8
被引用文献数
41

テレビ電話やテレビ会議などのオーディオビジュアル通信を経済的,効率的に提供するため,信号の高能率符号化や通信衛星,ATMなどの技術の通信網への導入が検討されている.これらの技術は信号の伝搬遅延時間を増加させるため,通信品質を劣化させる可能性がある.伝搬遅延が通信品質に及ぼす影響は電話による音声通信において多数検討されているが,オーディオビジュアル通信における検討例は少なく,音声に映像が加わったことによる遅延品質への影響は十分に把握されていない.本論文ではオーディオビジュアル通信における遅延品質規定に資するため,音声通信とオーディオビジュアル通信における遅延品質を主観評価試験により測定し,両通信の品質を比較することにより映像の有無が遅延品質へ及ぼす影響を検討した.その結果,音声と映像の遅延時間が等しい通話では,映像の有無による遅延品質への影響は認められず,遅延品質の支配的な要因は音声の遅延時間であることが明らかになった.また,音声と映像の遅延時間が異なる通話における許容遅延時間を検討した結果,音声の許容遅延時間は音声と映像の遅延時間が等しい通話の許容遅延時間に等しく,かつ音声と映像の遅延差は音声と映像のずれの検知限まで許容されることを明らかにした.
著者
加藤 正美 中村 耕太郎 田坂 修二
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-I, 通信I-情報通信システム・理論 (ISSN:09151877)
巻号頁・発行日
vol.81, no.11, pp.709-719, 1998-11-25
被引用文献数
7

本論文では, 蓄積されたビデオと音声をインターネットプロトコルを適用してPHSで伝送する場合を考える.PHSによるデータ通信では, データリンクレベルのプロトコルとしてPIAFSが適用され, インターネットアクセス時には, トランスポートプロトコルとしてTCPやUDPを利用できる.このような環境下で複数の連続メディアを伝送すると, 再送による遅延の発生がメディア同期を乱す.しかし, PHSによるインターネットアクセスに関するこれまでの研究では, メディア同期性能の定量的な評価はなされていない.そこで, 筆者らは, モバイル端末とダイアルアップルータ間にPIAFSを, モバイル端末とインターネット上のメディアサーバ間にUDPを適用し, モバイル端末において, 受信したビデオと音声を同期・出力する実験システムを構築した.特に, メディア同期制御方式として, 筆者らの既提案のスライド制御方式を一部拡張して実装し, メディア同期性能の評価実験を行った.同期の平均2乗誤差等のシステム性能の測定結果により, その有効性を示す.