著者
奥山 剛 藤田 晋輔 林 和男 鈴木 滋彦 大谷 諄 岡野 健
出版者
名古屋大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1990

最近の木造住宅は、省エネルギ-と、室内環境制御装置の導入によって、ますます気密化が進んでいる。一方、室内には無機材料が多用されるようになっている。このような住宅は将来増加の一途をたどることは明らかな状況である。住宅内のラドンの問題は、北欧やカナダ・アメリカでは大きな問題としてとりあげられているが、日本では、ここ5〜6年の間に、放射線安全工学の分野でとりあげられるようになったばかりである。放射線、特に低レベルの放射線に対する人間の健康への影響は不明な点が多いが、複合的な環境汚染が進むなか、木造住宅内のラドン濃度を低くおさえるための基礎的な調査が必要と考え、本総合研究を組識した。二年間にわたり、北海道から鹿児島まで12名の研究者に協力をいただき合計28の建物のラドン濃度を通年測定した。結果を要約すれば以下のとおり。1).全体としてみると、木造住宅はRC造住宅よりラドン濃度は低い。RC造住宅の新築のものに特に高いレベルのものがみられた。2).木造住宅では、床下及び地下室の濃度が高く300Bq/m^3を越える場合がある。そして、1階、2階と上階へいくに従って低くなる。このことから、木造住宅の最大のラドン発生源は床下地面であり、それは居室へと拡散していく。3).床下ラドン濃度は、一般に冬に低く、高温多湿となる夏期に高い。4).床下ラドン濃度は、床下地面の防湿施工によって低下する。5).床下換気口の適切な配置は床下ラドン濃度を低下させる。6).室内の空気が滞溜する押入れなどでは高いラドン濃度を示す。特にRC建物では1200Bq/m^3を越える場所がみられた。以上から、無機建材が用いられ換気が少なくなれば室内ラドン濃度が上昇することが明らかで、将来の日本の住宅もラドン対策が必要。

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