著者
佐々木 恵彦 小島 克己 丹下 健 井出 雄二 八木 久義
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1991

これまでマングローブ林を農地開発した場所や開拓地で第四系海成堆積物を起源とした酸性硫酸塩土壌が問題となってきた。しかし農地開発や土木工事の規模が大きくなるにつれ、第三系堆積岩を起源とする酸性硫酸塩土壌の生成も顕在化してきた。本研究により、酸性硫酸塩土壌の母材となるパイライトを含む第三系堆積岩が、これまで問題となっていなかった場所も含め、広く日本に分布することがわかった。インドネシア東カリマンタン州やタイ南部でパイライトを含む第三系堆積岩を発見し、これまで第四系堆積物のみが問題となっていた熱帯地域においても、今後開発にともない第三系堆積岩を起源とする酸性硫酸塩土壌が問題となる可能性があること明らかにした。常磐自動車道の建設地で露出した古第三系堆積岩からは酸性化により特徴的にマンガンの溶出が起こり、植栽された樹木にもマンガンの過剰障害が顕著に現れた。このような強酸性土壌には低pHに対する耐性だけでなく、マンガン過剰に対する耐性が植栽樹木に要求される。このため比較的マンガン過剰に耐性があると考えられるシラカンバを用いて、マンガンによる障害の発生機構を調べ、光合成系に障害が発生することがわかった。熱帯産マメ科樹木のAcacia mangiumとA.auriculiformisは、低pHやマンガン、アルミニウムの過剰に対して耐性が大きく、熱帯での酸性硫酸塩土壌による荒廃地の森林再生に有効な樹種であることがわかった。さらなる耐性をもつ新樹木の作成にむけて、A.mangiumとA.auriculiformisの組織培養系を確立し、さらにA.mangiumの細胞培養系を用いて低pHとマンガン過剰に対する細胞レベルの反応を明らかにした。また高マンガン耐性細胞系の選抜をおこなった。これらの研究を基盤にして、酸性土壌に起因するストレスに対する耐性機構を解明し、また新たな耐性の付与を行い、荒廃地への造林樹種の開発と森林再生を目指して研究を進めて行く。

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