著者
米山 喜晟 米山 喜晟
出版者
大阪外国語大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

本年度の研究実積はI.3年間の研究成果を中心に、従来の研究代表者の論文その他を収録した『イタリア・ノヴェッラの森』の刊行、II.論文1点と研究ノート1点、III.I.のために書き下ろした解説と要約3点である。まずII.について記し、その後I.とIII.について記す。本年度発表した論文は「G.セルミーニの心の中の障壁」と題したもので、シエナのノヴェッラ作者セルミーニのノヴェッラ集を素材として中世イタリアのコムーネの市民の心性を探究し、イタリア・ノヴェッラに頻出する悪戯のモチーフは、領域民に対する「差別と排除」のテーマを基盤としていることを論じた。研究ノートは、「ノヴェッラの起源と『ノヴェッリーノ』と題したもので、セグレやツムトルの近年の研究成果を紹介しながら、ノヴェッラというジャンルの定義と成立について論じている。同時に『ノヴェッリーノ』の新しい評価を紹介した。研究代表者が『イタリア・ノヴェッラの森』のために新しく書き下ろした解説は、1.「イタリア.ノヴェッラの森への案内」、2.「ジェンティーレ・セルミーニの人と作品」、3.「(ジラルディ・チンツィオの)『百物語』のノヴェッラの要約」で、1.はわが国で初めて試みられたイタリア中世・ルネサンス期のノヴェッラの通史であり、極めて不十分なものではあるが、これによってほぼ流れの全貌を把握することが可能となった。2.は『ロミオとジュリエット』の源流とされる作品を含んでいる作品集の全作品の要約、3.は『オセロ』や『以尺報尺』の原作を含むことで名高いが、わが国ではほとんど知られていない作品集の全作品の要約である。以上の成果を中心として、研究代表者の論文その他12点、それにイタリア口承文学研究に関してすでに定評のある気鋭の研究者鳥居正雄Gの論文3点を加えて現在刊行予定中で、すでに原稿を印刷屋に引き渡し済みの資料集が『イタリア・ノヴェッラの森』である。

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こんな研究ありました:イタリア中世・ルネサンス期のノヴェッラの発展過程とその歴史的背景に関する研究(米山 喜晟) http://kaken.nii.ac.jp/ja/p/03610253
こんな研究ありました:イタリア中世・ルネサンス期のノヴェッラの発展過程とその歴史的背景に関する研究(米山 喜晟) http://kaken.nii.ac.jp/ja/p/03610253

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