著者
平井 啓久
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

(1)ヒト第2染色体形成メカニズムを再検討する目的で、ヒト第2染色体ペイントDNAおよびα-サテライトDNAをプローブとして、ヒト、チンパンジー、およびゴリラの染色体に蛍光in situsハイブリダイゼーション(FISH)を行った。その結果、ペイントDNAは、従来の見解(ヒト第2染色体はチンパンジー第12・13染色体の末端融合によって形成された)を、確認した。α-サテライトDNAは、厳しい条件下で、ヒト第2染色体、チンパンジー第12染色体および小型メタセントリック(未同定)、およびゴリラ第11染色体のセントロメアに対してポジティブな反応を示した。今回のデータからでは、ヒト第2染色体の形成メカニズムに新しい知見を加える事はできなかったが、チンパンジーに、共通セントロメアを有する2対の染色体が存在する事は、その2対の染色体が共通の染色体から派生した可能性を示唆している。そこで、現在、染色体顕微切断法を用いて、チンパンジー第13染色体のセントロメアのDNA採取およびそれを用いてのFISHを行っている。また、チンパンジーの染色体分化の解明のための新戦略を検討中である。(2)シロテテナガザル、アジルテナガザル、ミューラーテナガザル、クロッステナガザル、およびワウワウテナガザルの染色体をC-バンド染色で観察したところ、従来発表されているパターンと異なるデータが得られた。腕内介在バンド、末端バンド、短腕全ヘテロクロマティン等を有する染色体が多く観察された。また、G-バンド染色で従来観察されていた第8染色体の逆位多型も、以前とは異なる状況で観察された。現在、染色体44本型テナガザル類の染色体分化のメカニズムを、今回観察した事実を基に、従来とは異なる方向から検討している。さらに、そのデータを基に、染色体変異ネットワークおよび核グラフ法を用いて数量的に解析中である。

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こんな研究ありました:ヒト上科の染色体進化に関する分子細胞遺伝学的研究(平井 啓久) http://kaken.nii.ac.jp/ja/p/06640916
こんな研究ありました:ヒト上科の染色体進化に関する分子細胞遺伝学的研究(平井 啓久) http://kaken.nii.ac.jp/ja/p/06640916

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