著者
河内 啓二
出版者
東京大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1995 (Released:1995-04-01)

トンボのモーターニューロンを染色し、詳細に観察した。その結果、胸部ガングリオンからはばたき飛翔筋までの神経系は極めて複雑で、多くの神経情報を処理統合して、はばたき運動を行っていることが明らかになってきた。今後はセンサー系からの信号ループがどう連なっているかを調べる必要がある。一方、はばたき運動の外見の観察からは多くの事が明らかになってきている。トンボの翅は付け根において、胴体と一枚の翅につき2つの関節で結合されており、1つづつの関節に最低一対のはばたき飛翔筋が備わっている。左右前後の翅を合わせると、1匹のトンボで計8対(16本)以上のはばたき飛翔筋が見い出せ、それに加えて制御用と思われる筋肉が多数存在する。それぞれの筋肉が上記のモーターニューロンで制御されており、飛行に要する情報量は膨大なものとなっており、この情報処理の課程が、昆虫の知能を解くキ-ポイントである。トンボの翅は、はばたき運動で生ずる慣性力や空気力に比べて極めて剛く、殆ど弾性変形を利用しないではばたき運動を行なう。従って、打ちおろしと打ちあげの空気力の差は、殆どが翅の捩り制御によって行われ、この運動の1つ1つの筋肉によって正確かつ意図的にに行われていることが明らかになってきた。これに対して、蝶のような低アスペクト比の翅を使う昆虫は、翅の捩り制御が構造的に大きくできず、低速において捩り制御だけでは、必要なだけの制御を行なうことができない。その結果、胴体も翅と一緒にピッチング運動させ、大きな迎角の変化を実現させている。蝶が外から観察するとヒラヒラと飛んでいるように見えるのは、翼面荷重が極めて小さく加速度運動に優れていることに加えて、上記の制御方法をとっているからである。

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