著者
山尾 大
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的は、現代イラクにおけるイスラームと政治の動態を、シーア派宗教界とシーア派イスラーム主義政党の関係性とその変化に着目して分析することにある。21年度は、昨年度に分析したイスラーム主義政党の歴史的なイデオロギーの変容を元に、なぜそのような変容が生じたのかを分析し、それが2003年のイラク戦争後にいかなる影響を与えているかという問題を解明することに力点を置いた。また、これまでの研究成果を、博士論文にまとめる作業を行った。具体的には次のことを行った。(1)1990年代のイラク国内のイスラーム主義運動を、社会運動の観点から分析する作業を進めてきたが、それを論文にまとめ、海外ジャーナルに英文で投稿する。(2)1990年代の亡命組イスラーム主義政党、具体的にはダアワ党とイラク・イスラーム革命最高評議会の歴史的展開とイラク政治との関係を、彼らが発行していた地下機関紙を解析することで明らかにする。(3)1980~90年代の亡命組イスラーム主義政党と、国内のシーア派宗教界、および国外の宗教界との関係を分析し、とりわけ金銭的な支援のネットワークを解明する。この作業は、党の内部文書の解析とともに、聞き取り調査を実施することで、明らかにする。(4)以上で分析した関係性が、2003年のイラク戦争後の政治運営において、いかに影響しているかという問題を、イスラーム主義政党の離合集散、合従連合に着目して明らかにする。その結果、とりわけ1980年代から1990年代後半のイラク国内外のイスラーム主義政党のイデオロギーと活動実践が明らかになり、同時にそれらが2003年の戦後イラクにおいて、政治対立のいかなる側面で問題となっているのか、この構造とメカニズムを明らかにした。これらの成果を、国外の学術雑誌と国内のジャーナルに投稿し、さらに共著の論文集として発表した。この分野は、実態の解明が喫緊の課題であるにもかかわらず、我が国のみならず、世界的にも研究が未着手である。これを解明したことで、イラク政治の重要な一側面の解明に貢献した。

言及状況

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こんな研究ありました:現代イラクにおけるイスラームと政治:シーア派宗教界と政党の動態的関係(山尾 大) http://kaken.nii.ac.jp/ja/p/07J01823

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