著者
八木 伸行
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

非対称情報の下でプリンシパルが複数の仕事をエージェント達に行わせる問題で、グループを形成し、ノルマのような制約を課す非金銭手的手法による近似的な解決方法はJackson and Sonnenschein(2007)で、ある十分条件の下に議論された。Matsushima, Miyazaki, and Yagi(2010)はそのような非金銭的インセンティブによる解決手法と、結果に応じて賞罰の金額を変動させる金銭的インセンティブによる伝統的な解決手法の同値性を標準的なミクロ経済学の理論の枠組みで証明した。また、破産制約がある場合には非金銭的インセンティブの手法が優位性があることを示した。改訂要請を受けて再投稿した結果、Journal of Economic Theory誌に掲載が決定した。不確実性下の状況での現実の人間がいかにして協調行動を達成するか、を不完全モニタリングの無限回繰り返し囚人のジレンマを被験者を使い経済学実験で分析した、松島斉・遠山智久・八木伸行"Repeated Games with Imperfect Monitoring : An Experimental Approach"における統計的検定作業のためのプログラミングと検証作業を行った。不確実性が小さい場合、お互い協調した場合も裏切りが観察される可能性があるが、理論的には協調を維持するには裏切りを観察した場合には高い確率で報復行為をとってはならない、という結論が得られる。しかし実験結果は、被験者たちは過剰に報復してしまい、協調が理論ほど達成できず、金銭的利益を失っている。その理由は不確実性が小さいので裏切りを観察した場合に「疑わしい人間を罰したい」という人間の心理的欲求であると考える。この研究により、不確実性下での人間同士の協調問題における心理的インセンティブと金銭的インセンティブの相互作用を分析した。

言及状況

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こんな研究ありました:グループとインセンティブについての理論および実験研究(八木 伸行) http://kaken.nii.ac.jp/ja/p/07J05879

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