著者
八重樫 徹
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

2008年度から継続して、フッサールを中心とした初期現象学における倫理学と行為論の研究を行なってきた。2008年度後半からは研究指導委託によりドイツに滞在し、ケルン大学フッサール文庫で調査・研究を行なった。今年度前半も引き続き、同地でディーター・ローマー教授の指導のもと、研究を続けた。フッサール文庫では、主に未公刊草稿群『意識構造の研究』を題材として、フッサールの価値論および行為論の全体像を見定める作業を行なった。同草稿は以前からその重要性が指摘されているものの、未公刊ということもあり、十分な研究がなされてこなかった。今回の滞在中にその全体に目を通すことができ、大きな成果を得ることができた。その成果の一部は研究発表(2)-2および(2)-3に含まれているほか、現在執筆中の博士学位申請論文に盛り込まれる予定である。帰国後は、現代のメタ倫理学および規範倫理学と照らし合わせつつ、フッサールの倫理学上の立場を明確化する作業を行なった。研究発表(1)-1では、彼のメタ倫理学上の立場が、超越論的観念論に立脚した一種の道徳的実在論であることを示した。研究発表(1)-2では、彼の規範倫理学上の立場が、個別主義的でありながら非相対主義的な義務論であることを明らかにした。行為論に関しては、引き続き『意識構造の研究』などを題材にフッサールの行為論の理解を深める一方で、フッサールの影響を受けつつ独自の現象学的行為論を構築したヒルデブラントの著作をはじめとして、初期現象学派の行為論を研究した。これらの成果をまとめるかたちで、博士学位申請論文「道徳的行為の現象学(仮題)」を執筆中である。

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[Husserl] ケルンにて「ディーター・ローマー教授の指導のもと」

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