著者
稲葉 睦 松木 直章 土居 邦雄 高橋 迪雄 高桑 雄一 長谷川 篤彦
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

赤血球の主要膜内在性蛋白質であるバンド3は、従来、生命推持に必須とされてきた。本研究は、黒毛和種牛の遺伝性バンド3欠損症における知見をもとに、この定説の妥当性を検討し、代償機構を解明することを目的とする。得られた成果の概要は以下のとおりである。1)遺伝子型と赤血球表現型との解析により原因遺伝子異常がR664X変異であること、本疾患が優性遺伝形式をとることを実証した。2)赤血球膜病態の解析に基づき、ホモ接合型とヘテロ接合型の赤血球球状化機序が異なること、即ち、前者ではバンド3-アンキリンースペクトリン間結合の消失が、後者では変異バンド3のドミナント・ネガティプ作用によるバンド3減少がそれぞれ球状化の原因となることを示した。これらの知見から膜骨格の形成とバンド3の生合成とが独立した現象であり、バンド3は膜骨格形成には不要であるが、その後の膜安定化に必須であることを提唱した。3)バンド3完全欠損赤血球には本来は前駆細胞のみにみられるバンド3の構造類似体AE2によるアニオン輸送能が存在することを解明した。さらに、迅速なアニオン輪送は全く代償さえておらず、バンド3によるアニオン輪送は平常時のガス交換に必須の要索ではないことを実証した。

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