著者
松木 直章
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

小型犬で頻発する壊死性髄膜脳炎(NME)の家系調査、病態解析ならびに治療研究を実施した。家系調査ではNME発症個体を含むパグ犬の3家系ならびにNME発症例のいないパグ犬の1家系について、脳脊髄液中のグリア線維性酸性蛋白質(GFAP)あるいは抗GFAP自己抗体をマーカーとして保因犬を割り出した。その結果、NMEの発症因子は常染色体劣勢遺伝形式で遺伝する可能性が示された。病態解析では、NME症例の脳脊髄液中にGFAP-抗GFAP複合体が特異的に存在すること、抗GFAP抗体にはIgGのみでなくIgAが存在し、健康犬の血液中や糞便中にも抗GFAP-IgAが存在すること、NME症例ではアストロサイトのトランスグルタミナーゼに対する自己抗体が存在することが明らかとなった。治療研究ではNME症例に対して3種類の免疫抑制療法を用いた前向き研究を実施したが、生存期間や神経症状スコアには治療法による有意差が認められなかった。
著者
稲葉 睦 松木 直章 土居 邦雄 高橋 迪雄 高桑 雄一 長谷川 篤彦
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

赤血球の主要膜内在性蛋白質であるバンド3は、従来、生命推持に必須とされてきた。本研究は、黒毛和種牛の遺伝性バンド3欠損症における知見をもとに、この定説の妥当性を検討し、代償機構を解明することを目的とする。得られた成果の概要は以下のとおりである。1)遺伝子型と赤血球表現型との解析により原因遺伝子異常がR664X変異であること、本疾患が優性遺伝形式をとることを実証した。2)赤血球膜病態の解析に基づき、ホモ接合型とヘテロ接合型の赤血球球状化機序が異なること、即ち、前者ではバンド3-アンキリンースペクトリン間結合の消失が、後者では変異バンド3のドミナント・ネガティプ作用によるバンド3減少がそれぞれ球状化の原因となることを示した。これらの知見から膜骨格の形成とバンド3の生合成とが独立した現象であり、バンド3は膜骨格形成には不要であるが、その後の膜安定化に必須であることを提唱した。3)バンド3完全欠損赤血球には本来は前駆細胞のみにみられるバンド3の構造類似体AE2によるアニオン輸送能が存在することを解明した。さらに、迅速なアニオン輪送は全く代償さえておらず、バンド3によるアニオン輪送は平常時のガス交換に必須の要索ではないことを実証した。
著者
大和 修 遠藤 大二 国枝 哲夫 竹花 一成 山中 正二 落合 謙爾 内田 和幸 長谷川 大輔 松木 直章 中市 統三 板本 和仁
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

多数の新規および既知の動物遺伝病(特に、ライソゾーム蓄積病)について、診断・スクリーニング法を開発した。また、その一部の犬疾患(GM1ガングリオシドーシスおよび神経セロイドリポフスチン症)については、予防法を確立・実践し、発症個体が出現しない程度にまで国内キャリア頻度を低下させることに成功した。さらに、猫のGM2ガングリオシドーシスに対しては、抗炎症療法を試行し、本治療が延命効果を有する可能性を示唆した。一方、次の研究に継続発展する新規の動物遺伝病を数件同定した。