- 著者
-
松木 直章
- 出版者
- 東京大学
- 雑誌
- 基盤研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2008
小型犬で頻発する壊死性髄膜脳炎(NME)の家系調査、病態解析ならびに治療研究を実施した。家系調査ではNME発症個体を含むパグ犬の3家系ならびにNME発症例のいないパグ犬の1家系について、脳脊髄液中のグリア線維性酸性蛋白質(GFAP)あるいは抗GFAP自己抗体をマーカーとして保因犬を割り出した。その結果、NMEの発症因子は常染色体劣勢遺伝形式で遺伝する可能性が示された。病態解析では、NME症例の脳脊髄液中にGFAP-抗GFAP複合体が特異的に存在すること、抗GFAP抗体にはIgGのみでなくIgAが存在し、健康犬の血液中や糞便中にも抗GFAP-IgAが存在すること、NME症例ではアストロサイトのトランスグルタミナーゼに対する自己抗体が存在することが明らかとなった。治療研究ではNME症例に対して3種類の免疫抑制療法を用いた前向き研究を実施したが、生存期間や神経症状スコアには治療法による有意差が認められなかった。