著者
田中 裕也
出版者
同志社大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

今年度の研究実施状況を下記に、三点に分けて報告する。1、昨年度に投稿し、ジャッジメントを経ていた「三島由紀夫「親切な機械」の生成-三島由紀夫とニーチェ哲学-」が「日本近代文学」第84集(2011年5月)に掲載された。主に、三島が事件資料をどのように選別し執筆を行ったのかを検討した。また三島が同時代の「主体性」を巡る論争自体を無効にするために、流動的で統一されない「主体」を主張するニーチェ哲学を援用していると論じた。2、昨年度から継続して調査・研究していた「青の時代」(1950年12月)を論文化し、「三島由紀夫「青の時代」の射程-道徳体系批判としての小説-」として、「昭和文学研究」第64集(2012年3月)に掲載された。三島は「アプレゲール」の代表的人物と見なされていた、山崎晃嗣に関する資料を収集しつつも、クレッチマーやニーチェ哲学を用いて主人公を描いていることを明らかにした。また戦後言説空間では「道徳」という言葉が国家再建の理念と密接に結びついていたが、一方で反社会的で秩序に当てはまらない若者たちを、「不道徳」な「アプレ-ゲール」として排除していく流れがあった。「道徳」と「不道徳」が一見対立する概念に見えながらも、この二つの概念は共犯関係的なものであることを、三島がニーチェ哲学を援用して「青の時代」の中で批判的に描いていることを明らかにした。3、山中湖文学の森・三島由紀夫文学館」において二回(各四日間・計八日)の草稿調査・研究を行った。主に「愛の渇き」(1950年6月)の草稿400枚弱について調査・研究を行った。「愛の渇き」の草稿には、二つの大きな改編箇所があることが分かった。今後研究内容をまとめ論文化する予定である。

言及状況

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こんな研究ありました:生成論の実践―三島由紀夫の草稿調査を中心に(田中 裕也) http://t.co/ilWFPkCuNz

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