著者
海老原 昌弘 川村 尚
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

酢酸を架橋配位子とし一酸化炭素と塩化物イオンをエカトリアル配位子に持つイリジウム(II)複核錯体[Ir_2(O_2CCH_3)_2Cl_2(CO)_2]を原料として,この錯体の軸位にアセトニトリル,ピリジン,ジメチルホルムアミド,ホスフィン,アルシンなどを結合させた化合物[Ir_2(O_2CCH_3)_2Cl_2(CO)_2L_2]を合成した.この内7種の化合物についてX線構造解析を行いIr-Ir距離がその配位子の違いによってアセトニトリル錯体の2.569(1)Åからトリシクロヘキシルホスフィン錯体の2.6936(7)Åまで約0.12Å変化することがわかった.また,どの錯体も化学的に可逆な酸化波が確認され,その電位は配位子の種類に依存してトリシクロヘキシルホスフィン錯体の0.21Vからアセトニトリル錯体の1.30Vまで変化することがわかった.ホスフィンを軸配位子とする錯体はそのg_⊥とg_<//>の値,およびそれぞれの超微細構造のパターンからそのHOMOはσ_<Ir-Ir>軌道であることが明らかとなった.[Ir_2(O_2CCH_3)_2Cl_2(CO)_2](酢酸イオンを架橋配位子とし一酸化炭素と塩化物イオンがエカトリアル配位子)の架橋配位子の置換を目的として合成を行った.この錯体を原料として,2-ヒドロキシイソキノリン(Hhiq)と反応させることにより錯体の酢酸架橋がhiq^-に置換した錯体を合成した.この錯体のアキシアル位にメチルピリジン(mpy)およびトリフェニルホスフィン(PPh_3)を結合させた化合物[Ir_2(hiq)_2Cl_2(CO)_2L_2]を合成しX線構造解析を行った.Ir-Ir距離は酢酸架橋の錯体とほぼ同じでそれぞれ2.5928(7),2.634(2)Åであった.また,4-メチル-2-ヒドロキシピリジン(Hmhp)と[Ir_2(O_2CCH_3)_2Cl_2(CO)_2]を封管中,130℃で反応させると3つの架橋配位子を持つ[Ir_2(mhp)_3(CO)_2Cl(Hmhp)]が生成した.Ir-Ir距離は架橋配位子が2つの錯体と比べて短く2.5491(3)Åであった.[Ir_2(hiq)_2Cl_2(CO)_2(mpy)_2]は不可逆な酸化波のみが観測された.[Ir_2(hiq)_2Cl_2(CO)_2(PPh_3)_2]および[Ir_2(mhp)_3(CO)_2Cl(Hmhp)]はスキャン速度を速めると0.53,0.95Vにそれぞれ可逆な波が観測された.

言及状況

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こんな研究ありました:イリジウム複核錯体の系統的合成法の開発(海老原 昌弘) http://kaken.nii.ac.jp/ja/p/11640560

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