著者
池谷 のぞみ
出版者
東洋大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1999

救急医療は119番に通報する市民にはじまり、災害救急情報センターで119番通報を受ける受付指令員、救急隊から連絡を受け、医療機関と連絡をとりあう救急管制員、医療機関における医師、看護婦、その他のスタッフなど、多様な専門領域の人々が,それぞれの場所で分業を担うことによって特定の患者を搬送し、治療を受けさせるという一連の活動を可能にしている。この時間および空間をこえたところでの協働作業が可能となるためには、適切な情報環境の構築が重要である。そこで本研究では、救急医療情報システムにおいて、実際にどのように業務が遂行されるのか、すなわちそれぞれの分業の場面において情報がどのように扱われることで互いの協働作業がどのようになされるのかについて、ある大学の救急救命センターを拠点としてエスノメソドロジーの立場に立ったフィールドワークを通じて明らかにすることを試みた。特に、消防庁から患者受け入れ要請を救急救命センターにするためのホットラインに焦点をあて、その通話内容を分析した。実際の患者を目の前にしていない消防庁の管制員が、救急隊の連絡を受けて、それを正確に、医師にとって意味のある形で、しかも迅速に伝達することは容易ではないことが明らかになった。さらに、119番通報が年々高騰するなかで、救急救命センターに患者を搬送する際の判断基準を踏まえた活動の必要性を医師は感じていることがわかった。また、「上申」と呼ばれる、毎朝上級医師に対して行われるカンファレンスについても観察および録画を行い、複数のチームによる、チーム医療のもとでいかに情報の共有が行われ、クオリティ・コントロールがなされるのか、また具体的なケースを扱う中でインターを含めた若い医師に対していかに教育がなされるのかについても明らかにした。

言及状況

Twitter (1 users, 1 posts, 1 favorites)

こんな研究ありました:組織における言説の社会学的研究-救急医療システムにおける実践的知識マネジメント(池谷 のぞみ) http://kaken.nii.ac.jp/ja/p/11710114

収集済み URL リスト