著者
河﨑 宜史 池谷 のぞみ
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.54, no.10, pp.1028-1033, 2013-09-15

病院などの医療組織では,異なる専門性を持つスタッフによる複雑な協働を通して成り立っている.それぞれの専門性を最大限に発揮することで高度な医療を提供することが可能となるが,それを実現し,促進するようなしくみがこれまでになく求められている.しかし医療は高度に専門化され,複雑な協働によって成り立っているため,革新的なシステムをデザインするには,人々が複雑に作業をしている医療の現場に入ることで業務を深く理解する必要がある.事例として提示する検体検査業務のエスノグラフィ調査と分析を通じて,検査業務を始めとする病院業務における協働を支援するシステムデザインの問題といかに結びつけることができるかを示す.
著者
池谷 のぞみ
出版者
関東社会学会
雑誌
年報社会学論集 (ISSN:09194363)
巻号頁・発行日
vol.2019, no.32, pp.12-22, 2019
被引用文献数
1

<p>"Ethnomethodological studies of work" may be located as one branch within ethnomethodology and conversation analysis. It is a research program Harold Garfinkel, the founder of ethnomethodology had been concerned with during his later years. Studies of work have investigated how work is conducted in workplaces to feed information about the actual organization of work practices into design of work, technologies, and social policies. Thus, studies of work have been conducted in various interdisciplinary contexts. This paper looks into hybridity, i.e., the ambition to merge ethnomethodological studies with the investigative topics treated within the settings being studied, which Garfinkel introduced as a set of criteria studies of work should satisfy, to reflect on how Garfinkel intended this policy to be implemented. Two studies in emergency medical settings are examined in light of hybridity, and also in light of how studies prompted people to think reflectively about social issues.</p>
著者
池谷 のぞみ
出版者
関東社会学会
雑誌
年報社会学論集 (ISSN:09194363)
巻号頁・発行日
vol.2019, no.32, pp.12-22, 2019-08-23 (Released:2020-08-08)
参考文献数
27
被引用文献数
1

“Ethnomethodological studies of work” may be located as one branch within ethnomethodology and conversation analysis. It is a research program Harold Garfinkel, the founder of ethnomethodology had been concerned with during his later years. Studies of work have investigated how work is conducted in workplaces to feed information about the actual organization of work practices into design of work, technologies, and social policies. Thus, studies of work have been conducted in various interdisciplinary contexts. This paper looks into hybridity, i.e., the ambition to merge ethnomethodological studies with the investigative topics treated within the settings being studied, which Garfinkel introduced as a set of criteria studies of work should satisfy, to reflect on how Garfinkel intended this policy to be implemented. Two studies in emergency medical settings are examined in light of hybridity, and also in light of how studies prompted people to think reflectively about social issues.
著者
田村 俊作 三輪 眞木子 池谷 のぞみ 齋藤 泰則 越塚 美加 河西 由美子 齋藤 誠一
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

公共図書館の課題対応型サービスが定着するための条件を明確にすることを目的に各種調査を行い,以下の点を明らかにした。(1)サービスは複合的であり,重点の置き方は図書館により異なる。(2)図書館員はサービスの多様性を容認している一方,業務負担の増大に対して根強い抵抗がある。(3)従って,課題対応型のサービスに対する図書館員の理解と参加,および必要な技能の獲得が鍵となる。(4)また,関連組織との協働型の連携がサービス展開に効果的である。
著者
池谷 のぞみ
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.35, no.Suppl., pp.189-192, 2011-12-20 (Released:2016-08-08)
参考文献数
18

ワークのエスノメソドロジー研究は,理論に依拠しないで「リアリティの中の業務」を理解することをめざす.その結果,1)特定の文脈における学習機会をワークの詳細と関係づけて明らかにすると共に,2)その機会が誰に向けて,その人のワークとの関係でいかにデザインされ,実現されているのかを明らかにすることが可能になる.これを救急医療のカンファレンスとプロジェクト評価会議のフィールドワークに基づく研究事例を通じて示した.従来OJTと一括りにされてきたことを,こうした分析の対象とすることの意義を,職場における学習の再考,特に学習を業務の効果的な遂行と関係づけながら実現を考える上での示唆を提示した.
著者
山崎 敬一 葛岡 英明 山崎 晶子 池谷 のぞみ
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.32-45, 2003-03-20 (Released:2022-08-03)
参考文献数
15

この論文では,リモートコラボレーション空間において,遠隔地にいる作業者がどのようにして時間と身体的空間を組織化しているかを,エスノメソドロジー的相互行為分析の手法で明らかにする.さらにそうしたリモートコラボレーション空間での共同作業に対するエスノメソドロジー的・社会学的分析に基づき,社会学者と工学者からなる筆者らの共同研究グループがデザインした,いくつかのリモートコラボレーションシステムについて紹介したい.
著者
田村 俊作 高山 智子 三輪 眞木子 池谷 のぞみ 越塚 美加 八巻 知香子 須賀 千絵
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

公共図書館の医療・健康情報サービスを適切にデザインするための知見を得ることを目的に,医療・健康情報サービスの現状調査を行ない,アクションリサーチによりサービス普及を試行した。がん相談支援センターとの連携によるサービスには可能性があり,大規模図書館を中心にサービスは普及しはじめているが,実施自治体は公共図書館設置自治体の2割に達しておらず,普及に向けて多くの課題があること,特に公共図書館員に関連知識・技能の修得機会を提供する必要のあることが明確になった。
著者
田村 俊作 三輪 眞木子 池谷 のぞみ 齋藤 泰則 越塚 美加 河西 由美子 齋藤 誠一
雑誌
科学研究費補助金研究成果報告書
巻号頁・発行日
2011 (Released:2012-00-00)

研究種目 : 基盤研究(B)研究期間 : 2008~2011課題番号 : 20300087研究分野 : 総合領域科研費の分科・細目 : 情報学・図書館情報学・人文社会情報学 公共図書館の課題対応型サービスが定着するための条件を明確にすることを目的に各種調査を行い、以下の点を明らかにした。①サービスは複合的であり、重点の置き方は図書館により異なる。②図書館員はサービスの多様性を容認している一方、業務負担の増大に対して根強い抵抗がある。③従って、課題対応型のサービスに対する図書館員の理解と参加、および必要な技能の獲得が鍵となる。④また、関連組織との協働型の連携がサービス展開に効果的である。
著者
池谷 のぞみ
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.189-192, 2011

ワークのエスノメソドロジー研究は,理論に依拠しないで「リアリティの中の業務」を理解することをめざす.その結果,1)特定の文脈における学習機会をワークの詳細と関係づけて明らかにすると共に,2)その機会が誰に向けて,その人のワークとの関係でいかにデザインされ,実現されているのかを明らかにすることが可能になる.これを救急医療のカンファレンスとプロジェクト評価会議のフィールドワークに基づく研究事例を通じて示した.従来OJTと一括りにされてきたことを,こうした分析の対象とすることの意義を,職場における学習の再考,特に学習を業務の効果的な遂行と関係づけながら実現を考える上での示唆を提示した.
著者
池谷 のぞみ
出版者
東洋大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1999

救急医療は119番に通報する市民にはじまり、災害救急情報センターで119番通報を受ける受付指令員、救急隊から連絡を受け、医療機関と連絡をとりあう救急管制員、医療機関における医師、看護婦、その他のスタッフなど、多様な専門領域の人々が,それぞれの場所で分業を担うことによって特定の患者を搬送し、治療を受けさせるという一連の活動を可能にしている。この時間および空間をこえたところでの協働作業が可能となるためには、適切な情報環境の構築が重要である。そこで本研究では、救急医療情報システムにおいて、実際にどのように業務が遂行されるのか、すなわちそれぞれの分業の場面において情報がどのように扱われることで互いの協働作業がどのようになされるのかについて、ある大学の救急救命センターを拠点としてエスノメソドロジーの立場に立ったフィールドワークを通じて明らかにすることを試みた。特に、消防庁から患者受け入れ要請を救急救命センターにするためのホットラインに焦点をあて、その通話内容を分析した。実際の患者を目の前にしていない消防庁の管制員が、救急隊の連絡を受けて、それを正確に、医師にとって意味のある形で、しかも迅速に伝達することは容易ではないことが明らかになった。さらに、119番通報が年々高騰するなかで、救急救命センターに患者を搬送する際の判断基準を踏まえた活動の必要性を医師は感じていることがわかった。また、「上申」と呼ばれる、毎朝上級医師に対して行われるカンファレンスについても観察および録画を行い、複数のチームによる、チーム医療のもとでいかに情報の共有が行われ、クオリティ・コントロールがなされるのか、また具体的なケースを扱う中でインターを含めた若い医師に対していかに教育がなされるのかについても明らかにした。
著者
池谷 のぞみ
出版者
東洋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

救急医療は119番通報にはじまって、それを受ける災害救急情報センターにおける救急管制員、現場に派遣される救急隊、医療機関における医師および看護婦をはじめとする医療スタッフなど、多様な領域の人々が分業を担うことによって、短い時間のなかで最適な治療を患者に施すことをめざしている協働作業である。そのためには、適切な情報環境の構築が常に重要な課題のひとつとなっている。今年度は大学病院における救急救命センターにおいてフィールドワークを行った。特に、救急車で運ばれる患者への対応をめぐる、医師および看護婦間の情報伝達と患者への実際の対応に焦点をあて、消防庁からのホットラインへの対応をはじめとして、それを受けた情報伝達、初療の場面から入院までを、研究者がその場にいあわせて録音および録画の技術で補いながら観察記録を行った。当該センターは大規模な改築工事を開始したところで、改築前と後でどのように一連の業務が変わったのか、そのメリット、デメリットを解析し、提言を行うことも求められているため、今後も引き続き同様のデータ収集を行っていく予定である。2001年7月に英国マンチェスターでは、すでに収集したデータをManchester Ethnography Groupで提示し、今後の進め方についてもアドバイスおよび意見交換を行った。さらに、同時期マンチェスターで開催されたIIEMCA(International Institute of Ethnomethodology and Conversation Analysis)主催の会議において、医師による患者に関する情報共有および治療方針の決定、ならびに教育の場として、毎朝行われるカンファレンスに関する研究した成果を発表し、一定の評価を受け、2003年に刊行予定の図書に収録されることになった。
著者
池谷 のぞみ
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告情報システムと社会環境(IS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1999, no.60, pp.23-28, 1999-07-21

社会学の一アプローチであるエスノメソドロジーは、欧米を中心としてシステム開発関連の研究所に雇い入れられるなどの形でシステム設計者との協力関係が作られ、研究が進められている。研究領域は、CSCWが中心であるが、組織におけるコンピュータも含む協同作業という広い観点からなされていることが多く、情報システムの設計とも密接な関係がある。本報告では、状況における実践的行為の内在的な理解に感心を持つエスノメソドロジーを紹介した上で、情報システム設計との接点として、情報システム設計という行為がそれ自体協同作業であり、また規範を提示するという側面を持つこと、さらにエスノメソドロジーがめざす実践的行為の内在的理解がシステム設計に持ちうる意義、という二点を挙げ、それぞれについて考察を試みる。There have been some collaborative relationships developed between sociologists who take an approach called 'ethnomethodology' and researchers or practitioners in system development, especially in Europe and the U.S. The area is usually called CSCW(Computer Supported Cooperative Work) in the broad sense, not necessarily being confined to the development of such systems as groupware. Their interests in the development and use of systems situated in organisational settings where actors carry out cooperative work is closely related to some issues concerning the development of information system in the social context. In this paper, I first discuss ethnomethodological interest in understanding social actions from the actor's point of view, therefore, in understanding social action as practical action whereby social order is accomplished. Then, I show that the conduct of developing information system could be examined as practical action whereby engineers achieving social order in the form of system. It is also discussed that constructing rules for the user types and for their orderly conduct are carried out as part of designing system. Lastly, I point out how the understanding of system users' situated practical actions can be crucial for system development, which in fact is the kind of understanding ethnomethodologists seek to achieve out of their analysis of ethnographic data such as observational notes, recorded interview, or video taped data obtained from their fieldwork.