著者
坂本 佳子
出版者
大阪府立大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

共生細菌ボルバキアに感染したシルビアシジミ(以下、本種)の寄主植物転換の要因を明らかにすることを目的として、日本各地の個体群について1)雌成虫の産卵選好性と2)幼虫の利用能力を調査した。また3)ボルバキア感染状況や性比異常を調査し、4)本種の遺伝的構造との関連性を明らかにした。1)計8ヶ所の個体群を対象として、ミヤコグサとシロツメクサに対する雌成虫の産卵選好性について調査した。その結果、両植物に産卵する個体群とシロツメクサにはほとんど産卵しない個体群が確認され、個体群間で選好性は異なることが明らかになった。2)計4ヶ所の個体群を対象として、両植物による幼虫の飼育を行った。その結果、羽化率には個体群と供試植物による違いは認められず、ほとんどの個体が正常に羽化したが、蛹体重は、いずれの個体群においても、ミヤコグサを与えた区の方が有意に重かった。各寄主植物区における蛹体重は、個体群間で有意に差があった。3)計14ヶ所の個体群を対象として、ボルバキアの感染状況を調査したところ、3系統のボルバキアが検出された。そのうち1系統は雄殺しと性モザイク化を引き起こすことが明らかになった。感染状況は個体群によって異なった。4)計14ヶ所の個体群を対象として、本種のミトコンドリアDNA(mtDNA)と核DNAの遺伝的多様性を調査したところ、ハプロタイプ構成はmtDNA、核DNAともに個体群によって異なった。さらに、ボルバキアがmtDNAのハプロタイプ構成に影響を与えることが示唆された。産卵選好と蛹体重において、異なる形質を持つ個体群間で交配実験を行ったところ、ボルバキア感染系統に関わらず、いずれも各個体群の中間的な形質になり、寄主植物転換におけるボルバキアの関与は明らかではなかった。日本各地の遺伝的多様性と寄主植物選好性の結果から、一部の個体群において、本来の食草であるミヤコグサから帰化種であるシロツメクサに寄主拡大したと考えられた。

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