著者
坂本 佳子
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.71-85, 2021-05-25 (Released:2021-06-10)
参考文献数
171

The ectoparasitic mite, Varroa destructor Anderson and Trueman(Mesostigmata: Varroidae), causes tremendous damage to the beekeeping and pollination industries. These industries rely upon the naïve European honey bee, Apis mellifera L.(Hymenoptera: Apidae), to which the mite has spread from its native host, the Asian honey bee, Apis cerana Fabricius. Researchers around the globe have been building our understanding of the ecology of V. destructor. However, the research has not been regularly reviewed in Japanese, and researchers and beekeepers in Japan have not had access to the most update reports over the past two decades. Here, I review recent developments in the study of the biology and ecology of V. destructor and the resistance of honey bees to the mite in Japanese.
著者
岡部 貴美子 亘 悠哉 飯島 勇人 大澤 剛士 坂本 佳子 前田 健 五箇 公一
出版者
国立研究開発法人森林研究・整備機構
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2020-04-01

見えないウイルスが接近する脅威を、可視化することを目的とする。そのためにマダニが媒介するSFTS等をモデルとし、野生動物の個体群と移動分散、マダニの分散への貢献、マダニの増殖にかかる生物・非生物学的要因、個体群の空間スケールを明らかにし、セル・オートマトンモデルによる予測、フィールド調査による検証、細胞レベルの病理試験等を駆使して精度の高い動物リレーモデルを開発する。これにより、マダニと病原体が野生動物にリレーのバトンのように受け渡され、途上の環境変化によってリレーの方向等に変化が生じ、感染症の溢出・拡大が起こるという仮説を検証し、感染拡大メカニズム解明とそれに基づく対策手法開発に資する。
著者
坂本 佳子
出版者
大阪府立大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

共生細菌ボルバキアに感染したシルビアシジミ(以下、本種)の寄主植物転換の要因を明らかにすることを目的として、日本各地の個体群について1)雌成虫の産卵選好性と2)幼虫の利用能力を調査した。また3)ボルバキア感染状況や性比異常を調査し、4)本種の遺伝的構造との関連性を明らかにした。1)計8ヶ所の個体群を対象として、ミヤコグサとシロツメクサに対する雌成虫の産卵選好性について調査した。その結果、両植物に産卵する個体群とシロツメクサにはほとんど産卵しない個体群が確認され、個体群間で選好性は異なることが明らかになった。2)計4ヶ所の個体群を対象として、両植物による幼虫の飼育を行った。その結果、羽化率には個体群と供試植物による違いは認められず、ほとんどの個体が正常に羽化したが、蛹体重は、いずれの個体群においても、ミヤコグサを与えた区の方が有意に重かった。各寄主植物区における蛹体重は、個体群間で有意に差があった。3)計14ヶ所の個体群を対象として、ボルバキアの感染状況を調査したところ、3系統のボルバキアが検出された。そのうち1系統は雄殺しと性モザイク化を引き起こすことが明らかになった。感染状況は個体群によって異なった。4)計14ヶ所の個体群を対象として、本種のミトコンドリアDNA(mtDNA)と核DNAの遺伝的多様性を調査したところ、ハプロタイプ構成はmtDNA、核DNAともに個体群によって異なった。さらに、ボルバキアがmtDNAのハプロタイプ構成に影響を与えることが示唆された。産卵選好と蛹体重において、異なる形質を持つ個体群間で交配実験を行ったところ、ボルバキア感染系統に関わらず、いずれも各個体群の中間的な形質になり、寄主植物転換におけるボルバキアの関与は明らかではなかった。日本各地の遺伝的多様性と寄主植物選好性の結果から、一部の個体群において、本来の食草であるミヤコグサから帰化種であるシロツメクサに寄主拡大したと考えられた。
著者
植木 哲也 宮野 佳子 坂本 佳子 長井 惠子 橋口 靖 中嶋 弥穂子 中嶋 幹郎
出版者
一般社団法人日本医薬品情報学会
雑誌
医薬品情報学 (ISSN:13451464)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.39-44, 2015 (Released:2015-06-28)
参考文献数
22

Objective: Information on medicines brought to hospital by inpatients is essential to optimize drug use and patient safety.  However, the actual situation and usefulness of identifying such medicines on the emergent admission of patients remain to be clarified.  The objective of this study was to examine the usefulness of identifying the medicines patients bring to the hospital on emergent admission.Methods: We compared the source of information on identifying medicines between two groups of patient: emergent admissions (N=276) and elective admissions (N=50), and also investigated intervention by pharmacists regarding the medicines patients had brought with them.Results: Regarding the source of information to identify the medicines, the rate of utilizing medicine notebooks on emergent admission was significantly lower than on elective admission, and the rate of inquiring with community pharmacies on emergent admission was significantly higher than on elective admission.  The frequencies of intervention by pharmacists in the two groups were similar, and, therefore, the usefulness of identifying the medicines patients brought was noted regardless of the admission course.Conclusion: Identifying the medicines patients bring to the hospital might be useful on emergent admission.  Hospital pharmacists should promote an increase in the medicine notebook utilization rate and reinforce cooperation with community pharmacies.
著者
本橋 英樹 野中 哲也 中村 真貴 原田 隆典 坂本 佳子
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.I_181-I_185, 2014 (Released:2014-11-12)
参考文献数
7
被引用文献数
3

We proposed to take several wave boundaries which make possible multi-way incident into three dimensional analytical boundary and then we made three dimensional tsunami analysis over wide area based on the result of two dimensional analysis. By this proposed technique, the propagation movement of two dimensional tsunami was reflected in three dimensional analysis boundary, and the continuous generation of the tsunami simulation that comprised a macroscopic evaluation of the tsunami and a microscopic evaluation in the vicinity of the site could be shown. This analysis of the continuous generation of tsunami can be expected as a technique to be able to achieve the flood simulation in high accuracy as well as being able to make the evaluation of the power of tsunami load that affects on embankments, bridges, and buildings.
著者
前田 太郎 坂本 佳子 岡部 貴美子 滝 久智 芳山 三喜雄 五箇 公一 木村 澄
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.109-126, 2015
被引用文献数
4

2010年頃から,飛べないニホンミツバチApis cerana japonica Rad. が巣の周辺を這いまわり,多くのコロニーが消滅していく事例が日本各地で見られるようになった。その症状が,セイヨウミツバチAp. mellifera L. で報告されているアカリンダニ症と酷似していることから,原因としてミツバチに寄生するアカリンダニAcarapis woodi (Rennie)の寄生が疑われた。しかし,実際にアカリンダニの存在を確認した例は少なく,2013年3月までの公式報告はわずか4件のみであった(農林水産省,2014)。前田(2015)の2013年度の調査によると,すでに日本の広い範囲でニホンミツバチがアカリンダニに寄生されており,今後さらに寄生地域が拡大していくことが懸念される。アカリンダニの生態や防除法に関しては,ヨーロッパやアメリカを中心に,セイヨウミツバチを用いた研究調査が行われてきたが,日本ではアカリンダニについて正確な情報が十分知られておらず,現状の把握と対策が遅れている状況にある。
著者
水川 瞳 広渡 俊哉 坂本 佳子 橋本 里志
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.241-255, 2010-12-30

スイコバネガ科Eriocraniidaeはほとんどの種がカバノキ科とブナ科の植物を寄主として利用しており,カバノキ科植物に注目すると,日本ではオオスイコバネEriocrania semipurpurellaなどがシラカバBetula platyphylla,ハンノキスイコバネE.sakhalinellaがケヤマハンノキAlnus hirsutaを寄主とすることが知られている.最近の著者らの研究により,カバノキ科のアカシデCarpinus laxifloraを利用するスイコバネガが東海地方と紀伊半島に生息することが明らかとなった.成虫の形態を比較した結果,アカシデを利用するスイコバネガは,後翅の鱗粉が細長いなどの派生形質をオオスイコバネと共有し,オオスイコバネにもっとも近縁であるが,明らかに小型で,♀交尾器のバジナルスクレライトの形態にも差が認められることからEriocrania属の未記載種であろうと考えられた.さらに,大阪府和泉葛城山でアカシデの他にイヌシデC.tschonoskiiから,愛知県段戸高原でサワシバC.cordataといった同属のシデ類からも,スイコバネガ科の幼虫が採集された.これらの幼虫と成虫の対応やオオスイコバネとの関係を明らかにするために,ミトコンドリアDNAの解析(COIおよびND5領域)を行った.その結果,イヌシデ,サワシバなどのシデ類を利用するスイコバネガ類はアカシデを寄主とするものと同一種であり,シラカバを利用するオオスイコバネとは姉妹群関係にある可能性が高いことが推定された.また,両種の分岐点までの遺伝的距離(D)は,ND5およびCOI領域でそれぞれD=0.028,D=0.036であった.Eriocrania carpinella Mizukawa,Hirowatari&Hashimoto sp.nov.アカシデスイコバネ(新称)寄主植物:アカシデ,イヌシデ,サワシバ分布:本州(愛知県,三重県,奈良県,大阪府)成虫は日本産スイコバネガ科の中でも小型(開張6-8mm)で,オオスイコバネ(開張10-14mm)と比較すると前翅の青みが強い.成虫は4月中〜下旬に出現し,幼虫は5月上旬にアカシデ等のシデ類の葉に潜孔する.幼虫は成熟すると葉から脱出して地表へ落下し土繭を作ってほぼ1年を通じて翌春まで地中で過ごす.そのため,一般的にはスイコバネガ類では飼育による幼虫と成虫の対応が困難である.しかし,一部の幼虫については飼育によってアカシデを寄主とすることが明らかになり,さらに分子データによる解析からサワシバとイヌシデを寄主植物として利用しているものと同一種と考えられた。シデ属Carpinusの植物を寄主とする種としてはヨーロッパ産のEriocrania chrysolepidellaが知られているが,極東地域においてシデ属植物を利用する種が見つかったのは初めてである.本種は,カバノキ類を寄主とするオオスイコバネの極東における分布南限である中部山岳地帯のさらに南部の限られた地域(東海地方と紀伊半島)に,オオスイコバネとは異所的に分布している.形態と分子データから両者は姉妹群関係にある可能性が高いことと遺伝的距離に基づく年代推定から,鮮新世の寒冷な時期に共通祖先から寄主転換によって分化し,その後,東海地方や紀伊半島に分布が限定されたと想定された.この仮説については,今後ヨーロッパやロシア沿海州などの材料を含めてさらに検証する必要がある.
著者
坂本 佳子 前田 太郎 岸 茂樹 五箇 公一 森口 紗千子
出版者
国立研究開発法人国立環境研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

1.国内におけるアカリンダニの分布調査:昨年度より引き続き、全国から採集したミツバチ358コロニーを用いて、アカリンダニの寄生状況の調査を昨年に引き続き行い、北海道と沖縄をのぞくほぼすべての都府県での発生を確認した。2.ネオニコチノイド系農薬を曝露したミツバチへのアカリンダニ寄生実験:イミダクロプリド、チアメトキサム、クロチアニジンの3種類の農薬をセイヨウミツバチに経口投与し、アカリンダニに対する対抗行動にどのような影響を及ぼすかを評価した。3.アカリンダニの寄生がニホンミツバチに与える影響:アカリンダニ寄生がミツバチの発熱能力と飛翔能力を低下させることを、サーモグラフィーおよびフライトミルを用いて明らかにした。4.アカリンダニの生存時間:従来報告されていたよりも長く、特に低温かつ高湿度条件では9日間生存していることを確認した。