著者
小川 由英 外間 実裕 諸角 誠人 秦野 直
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

尿路結石の約80%はシュウ酸カルシウムが成分であり、その傾向は沖縄でも同様であった。シュウ酸カルシウム結石の原因は特発性がほとんどで、過シュウ酸尿症は約1/3、過カルシウム尿症が1/3に認められた。尿中シュウ酸排泄が増加する原因は、食事性が多いとされ、シュウ酸含有食物摂取、脂肪の過剰摂取、シュウ酸分解菌の減少などでシュウ酸自体の吸収が増加する。ヒト腸管内のシュウ酸分解菌は、偏性嫌気性菌であり、Oxalobacter formigenesが結石形成の主たる阻害因子とされている。文献上で報告されているシュウ酸分解菌は、すべて偏性嫌気性菌であった。我々はヒトの腸内からシュウ酸分解菌、すなわちEnteococcus fecalis、Providencia rettgeriiを同定し報告した。これらの菌は、酸素の存在下でも発育できる通性嫌気性菌であり、ヒトの腸に常在させた場合、シュウ酸吸収を減らし、尿中シュウ酸排泄を減少させ、シュウ酸カルシウム結石形成予防効果が期待される。しかし、実際にこれらの菌をヒトに感染させるのは困難である。わが国で用いられている生菌製剤の25製剤のシュウ酸分解能について検討したが、現在のところシュウ酸分解能は確認できていない。また、シュウ酸吸収のラットでのモデルを考案し、上部消化管と結腸が重要な吸収部位であることを証明し、消化管内にカルシウムとマグネシウムがシュウ酸と同時に存在すると、その吸収を阻止することを示した。消化管内のシュウ酸吸収機構に関しては、脂肪酸と胆汁酸などの影響に関しは検討中である。さらに、ヒトの腎不全の際にシュウ酸は尿毒症物質であり、高シュウ酸血症が長期持続すると組織にシュウ酸カルシウムが沈着する。その腎不全の際のシュウ酸代謝では、アスコルビン酸が重要な役割を果たすことを発見したが、その機序が消化管内でシュウ酸に分解され、シュウ酸が吸収されるのであれば、シュウ酸分解菌が応用できる可能性も考えられ、これからの検討課題である。

言及状況

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シュウ酸分解菌O. formigenesを増やすのは難しいらしい。少ない人は少ないまま。シュウ酸の摂取を控えるしかない。 https://t.co/DPpcdfeKqg
尿路蓚酸カルシウム結石の腸内細菌による制御 https://t.co/dcXTfYO7TH

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