- 著者
-
小川 由英
諸角 誠人
内田 厚
外間 実裕
- 出版者
- 琉球大学
- 雑誌
- 基盤研究(A)
- 巻号頁・発行日
- 2004
シュウ酸は尿毒症物質であり、透析患者で高シュウ酸血症が長期持続すると臓器や組織にシュウ酸カルシウムが沈着する。透析患者は、動脈硬化も早く、高血圧、心疾患、脳血管障害などの危険も高い。高シュウ酸血症は血管の内皮傷害を惹起し、動脈硬化の原因となる。透析患者は尿毒症のため過酸化状態であり、ビタミンC投与は過酸化状態を改善し、発癌などの悪循環を断ち切るなど多大の恩恵をもたらす。しかし、ビタミンCを大量投与すると透析患者の血中シュウ酸値は高くなり、オキサローシスとなる。1 腎不全患者の血中シュウ酸をキャピラリー電気泳動で初めて測定し、約6年が経過する。約452名の腎不全患者を対象に血清中のシュウ酸前駆物質を測定し、血清シュウ酸とアスコルビン酸とは関連性が強く、ビタミンC投与が高シュウ酸血症の原因となることを示した。エリスロポエチン抵抗性の腎性貧血の際にビタミンCにより、鉄の利用度を増し、貧血を改善する。その際にビタミンC投与により、エリスロポエチン投与量を減少することを発見し、その最適の投与量は100mg/日と考えている。組織の石灰化に関しては、リン酸カルシウムの沈着がほとんどであるが、シュウ酸濃度が100μM以上であると不安定過飽和状態となり、シュウ酸カルシウム沈着の危険が高まる。常にこの値を超えるのは原発性過シュウ酸尿症の場合である。副甲状腺機能亢進症症例における腎性骨症に関して、経時的な組織の変化を報告したが、副甲状腺全摘前後の骨代謝パラメータとシュウ酸とは有意な相関は見られなかった。2 グリオキシル酸の解毒機構として、AGT(アラニングリオキシル酸アミノ転移酵素)が肝細胞のペルオキシゾームに局在し、グリコール酸より代謝されるグリオキシル酸をペルオキシゾームにおいて解毒する。また、肝細胞の細胞質と他の臓器にもグリオキシル酸還元酵素が存在し、シュウ酸産生を最小限に抑える。AGTの補酵素であるビタミンB6欠乏もオキサローシスの原因であり、透析患者では水溶性ビタミンが欠乏しがちである。ビタミンB6欠乏ラットで、グリオキシル酸、グリコール酸、ハイドロキシプロリン、ハイドロキシピルビン酸、キシリトールなどがシュウ酸産生を増加することを示した。これらの前駆物質の摂取を透析患者では制限する必要がある。この食事制限はオキサローシスの治療上非常に重要な示唆である。3 キャピラリー電気泳動に質量分析器を装着して、シュウ酸関連物質を測定し、測定感度を数倍上げることが可能となり、血清シュウ酸とグリコール酸の測定法を改良することが出来、また、従来の測定がそれぞれ正しいピークを測定していたことを確認できた。これは大きな収穫であり、シュウ酸に関しては更に数十倍の感度で測定できる方法に辿り着きそうである。