著者
月村 太郎
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究の目的は21世紀初頭の国際政治において喫緊の課題となっている民族紛争について、政治学、比較政治学、国際政治学の分析ツールを利用して、特に発生、激化・拡大、予防、解決について論じることであった。得られた知見を纏めると以下のようになる。1.民族紛争の特徴について-民族紛争は一般的に泥沼化する傾向が強い。その第一の原因はリーダーシップの弱さであり、逆説的だがそれ故に立場の急進化が見られる。そこには代行者の存在、中央と出先の温度差が存在する。第二の原因は民族紛争ではゲリラ戦術が採用され、小火器が主に利用されることである。第三には争点がアイデンティティであることが指摘できる。2.民族紛争の発生について-民族紛争発生の原因には基底的原因と直接的原因がある。そして基底的原因の問題性が悪化して直接的原因となるパターンと、基底的原因に何らかの変化が生じてそれが直接的原因となるパターンがある。また民族紛争の発生と貧困化と民主化は密接な関係にある。3.民族紛争の激化と拡大-まず紛争の垂直的次元の成長である激化と水平的次元の成長であると拡大は区別しなくてはならない。激化過程では当事者間のコミュニケーションの減少、欠如が見られ、それが激化に大きく作用し、また激化によって争点が変化することもある。そこでは安全保障ジレンマが影響することもある。民族紛争の拡大には伝播と介入がある。4.民族紛争の予防-予防策のうち、現在の国際社会において許されるのは多民族性を維持しながら国境の変化させない方策である。代表的なものは、連邦制、多極共存、文化的自治があるが、いずれも統治の効率性が低下する。5.民族紛争の解決-解決の主体は外部者である。平和維持は現在盛んに利用されているが、平和維持は紛争を「瞬間冷凍」したに過ぎない。紛争を根本的に:解決するのは平和構築が必要である。軍事介入の場合には、介入者の有権者(=納税者)への説明責任が前提である。研究成果報告書では、以上の特に1.〜3.の観点から、旧ユーゴ内戦を事例研究として取り上げた。

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