著者
松井 永子
出版者
岐阜大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

アレルギーの遺伝的要因として、アレルギー疾患で高値となることが多い血清IgE産生に関わるサイトカインシグナル伝達系の中で、特にIgE産生の抑制系に関与する蛋白質の遺伝子に着目し、アレルギー疾患発症の原因遺伝子について検討した。1、IgE産生抑制系に関与する遺伝子変異の同定アレルギー患者においてPHA刺激によるPBMCsから産生されるIFN-γ産生量を検討したところ、IFN-γ産生量は血清IgE値と負の相関関係を示すことが明らかになった。さらに、PHA刺激によるIFN-γ産生量とIL-12やIL-18などのサイトカインで刺激した場合のIFN-γ産生量を比較すると、IFN-γ産生量に解離がみられるアレルギー患者が存在した。そこで、Th1サイトカインのシグナル伝達系のなかでIL-12Rβ1鎖、β2鎖、IL-18Rα鎖、IFN-γR1鎖遺伝子の遺伝子配列を検討したところ、9つの変異が検出された。2、インベーダーアッセイ法による各変異遺伝子の検出検出されたIL-12Rβ1鎖、IL-12Rβ2鎖、IL-18Rα鎖、およびIFN-γR1鎖遺伝子における変異の出現頻度を検討した。IL-12Rβ1鎖遺伝子における3つのミスセンス変異において、M365T変異、およびG378R変異の出現頻度はアレルギー群に有意(p=0.023)に高く、R361W変異はアレルギー群にのみ変異が検出された。IL-12Rβ2鎖遺伝子の4つの変異において、A604V変異の出現頻度はコントロール群に比較して、アレルギー群において有意(p<0.002)に高く、R313G変異、1856 del 91変異、およびH720R変異はアレルギー群のみに検出された。Il-18Rα鎖遺伝子950 del 3変異においてはアレルギー群に有意(p=0.035)に高く変異が出現していた。IFN-γR1鎖遺伝子L467P変異はアレルギー群のみに変異が検出された(p=0.007)。今後、アレルギー素因となる遺伝子変異をパネル化し、組み合わせることにより、同定された遺伝子異常に対応した治療方法を選択することができる。このことにより、より効果的なアレルギー疾患の治療を行うことが可能であると思われる。さらには原因遺伝子異常がアレルギー疾患を惹起するメカニズムを明らかにすることにより、かかるメカニズムに対応した、アレルギーの治療薬の開発することも可能であると考える。

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こんな研究ありました:アレルギーの病因遺伝子群の総括的同定と機能解析に基づくオーダーメイド治療の確立(松井 永子) http://kaken.nii.ac.jp/ja/p/14770355

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