著者
藤原 晴彦
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2015-05-29

体表の紋様や体色により捕食者を撹乱する擬態は広範な生物種に認められるが、その形成メカニズムはよくわかっていない。擬態のような複雑な適応形質は1遺伝子の変異ではなく、染色体上の隣接遺伝子群「超遺伝子(supergene)」が制御しているという仮説がある。我々はシロオビアゲハのベイツ型擬態の原因が130kbに及ぶ染色体領域にあり、さらに染色体の逆位によってその領域が進化的に固定されていることを見出した。そこで、本研究では複数のアゲハ蝶をモデルとして(1)supergeneの構造と機能、(2)染色体上のsupergeneユニットの出現と安定化機構、(3)近縁種でのsupergeneの進化プロセスを解明する。転移因子の関与なども含め上記の結果を統合し、ゲノム再編成による擬態紋様形成機構を体系的に解明することを目的とした。本年度は、シロオビアゲハの擬態型dsx-Hが、非擬態型の淡黄色を擬態型雌に特有な淡黄色に切り替えるメカニズムを明らかにするために、両者の合成経路に関与する遺伝子の機能解析を行うとともに、紫外線に対する応答性の違いとそれに関与する遺伝子の働きを解析した。非擬態型淡黄色は紫外線を吸収して青い蛍光を発するのに対し、擬態型淡黄色は紫外線を反射するが、シロオビアゲハの擬態型翅で擬態型dsx-Hをノックダウンするとその領域において紫外線に対する応答性が擬態型から非擬態型に切り替わった。非擬態型の淡黄色papiliochromeIIを作るNBADとキヌレニン合成経路の各遺伝子をノックダウンしたところ、紫外線応答性が切り替わるとともに、鱗粉の電子顕微鏡像も変化したことから、色素合成のみならず物理的な性質もこれらの遺伝子によって制御されていることが明瞭となった。さらに、ナガサキアゲハの擬態型dsx-Hの機能解析を行い、シロオビアゲハの擬態型dsx-Hの機能との比較を行った。

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