著者
登坂 学
出版者
九州保健福祉大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

最大の成果は上海でSNH48のファンに対するインタビューを実施し、そこから重要な知見を得たことである。典型的事例として日本のAKBファンを経て後にSNHファンになったAさん(20代女性)のケースを紹介する。Aさんは高校生の頃(2009年頃)AKBの板野友美のファンとなった。きっかけはネットでAKB48の人気番組「AKBINGO」視聴したことであった(著作権上問題だが、中国では「字幕組」と呼ばれるボランティアが日本の人気テレビ番組を録画したものに素早く中国語字幕を付し次の日にはネット上にアップする)。アイドルに魅了されてからというもの彼女はCD(中に握手券や総選挙の投票券が封入されている)やグッズを買ったり、総選挙の投票のための募金活動(応援会が投票券入りCDを大量購入するため資金調達活動を行う)に身を投じることとなる。SNHには既に約10万元(≒170万円)を消費した。アイドルグループのファンになって日常生活や意識に何か変化はあったか、との問いに「娯楽生活が豊富になった」とし、「微力だとしてもアイドルのために自分の力を尽くしたいと思う」ようになったと述べた。また「ファンコミュニティは一つの社会のようで、一人の学生にとって、前もって社会に足を踏み入れたようなものだと思う。少しビジネスのやり方を学んだし、他者への接し方や処世術を学んだ。」と述べた。ボランタリズムと社会性が涵養されたのである。「劇場」や「アイドル」とは何かとの問いに「劇場は自分にとって同好会のラウンジだ。ここで多くの人に出会ったし、皆は同じ趣味を持っていて、同じアイドルを応援して一緒に様々な思い出を作れたからだと答えた。「アイドルは私にとって一種の信仰、ブラスのエネルギーをもたらす信仰。彼女の成長を見ていると、私はとても幸せな気持ちになる。」コミュニティは「居場所」であり「自己肯定感」を醸成するのである。

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