著者
田村 正人 梨本 正之 石崎 明
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究では,未分化な筋芽細胞株であるC2C12細胞にcanonicalなWntとして知られるWnt3aならびにnon-canonicalなWntであるWnt5aを過剰発現させた細胞株を作製した.C2C12細胞では,骨基質タンパク質の一つであるMEPEを産生していないが,Wnt3a-C2C12細胞ではBMP-2によってMEPEやMMP-13の発現が大幅に誘導された.これらの結果から,骨芽細胞の分化においてWntとBMP-2の2つのシグナルが協調して特異的に骨基質タンパク質やMMPの発現を調節していることが明らかになった.次に,骨芽細胞分化においてWntとBMP-2の2つのシグナルの間でどのように調節しているのか検討した.canonical WntシグナルがBMP-2の誘導するId1 mRNAの発現を調節することを見出した.また,BMP-2はC2C12細胞の筋管形成を抑制するが,Wnt3a-C2C12細胞ではこのBMP-2の筋分化抑制作用が低下していた.すなわち,WntとBMP-2の2つのシグナルの間にクロストークがあることがわかった.さらに,Wnt3aによりOPG濃度は著しく増大した.一方,RANKLの発現はWnt/β-catenin及びBMP-2いずれによっても抑制された.活性型β-catenin応答領域を特定するために-253までの領域の4つのLef/Tcf1認識候補部位の変異レポーターコンストラクトを作製した.転写活性の検討ならびにクロマチンIP法を用いた結合因子の同定を行った.以上の研究からWnt/β-cateninシグナルの標的遺伝子としてOPGを同定し,転写活性化機構の詳細を明らかにした.骨芽細胞においてWnt/β-cateninシグナルとBMPシグナルが協調してOPGを介した破骨細胞の分化と機能を調節している可能性が示された.

言及状況

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こんな研究ありました:Wnt-LRP-DKKシステムとプロテオソーム系を介した骨形成シグナルの解明(田村 正人) http://kaken.nii.ac.jp/ja/p/16390529

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