著者
木鎌 耕一郎
出版者
八戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

平成17年度は、平成16年度に得られた知見に基づき、第二バチカン公会議以降のカトリックとユダヤ教の関係史の中にエディット・シュタイン列聖問題を位置付け、その特殊性と歴史的意義を探った。第二バチカン公会議公文書『キリスト教以外の諸宗教に対する教会の態度についての宣言』(Nostra Aetate)第4項の内容と成立経緯を検討した。さらに、ヨハネ・パウロ二世在位以降を同公文書の理念の具現化の時代と捉え、その言動を重点的に検証した。また合衆国における両宗教間の対話の展開に着目し、その中で見出された対話に介在する問題点を指摘し、その問題点が平成16年度で検討したユダヤ人のアイデンティティにおける問題と密接な繋がりにあることを見出した。また、エディット・シュタインに関する家族が描く、カトリック側からのエディット・シュタイン観とは異なる聖者の人間的な側面に着目し、そうした情報が本件に及ぼす影響や意味について考察した。さらに、2003年2月に公開されたエディット・シュタインがピオ十一世に宛てた手紙に関して、これをホロコーストの時代におけるカトリック教会の政治的姿勢と関連づける解釈の存在を指摘した上で、ユダヤ人問題の政治的解決を「非本質的」と考えていた1933年春時点のエディットの内的状況をテキストに即して明らかにした。研究目的のひとつであった本件が現代の宗教間対話の理論的側面に与える問題提起を明らかにする点については、十分に果たすことができなかった。

言及状況

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こんな研究ありました:エディット・シュタイン列聖をめぐるカトリックとユダヤ教の宗教間対話に関する研究(木鎌 耕一郎) http://kaken.nii.ac.jp/ja/p/16720017

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