著者
小林 卓也
出版者
大阪大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2016-08-26 (Released:2016-09-02)

本研究はフランスの哲学者ジル・ドゥルーズの哲学を独自の自然哲学として提示することを目的としている。この目的を達成するべく、本年度はまず、ドゥルーズ哲学を三つの時期に分類し、その思想的変遷を分析することで、そこからドゥルーズの自然哲学の中心的特徴を取り出すことを試みた。すなわち、ドゥルーズ哲学において自然という主題は、1.『差異と反復』(1968)に代表されるカントの人間主義批判、2.精神分析家フェリックス・ガタリとの共著『千のプラトー』(1980)における自然科学の援用、3.晩年の著作である『哲学とは何か』(1991)における自然という主題の哲学への導入、という三つの時代区分を経て徐々に前景化される。とりわけ、本研究では、『千のプラトー』で援用される地質学の議論を分析し、①「地層」概念があらゆる経験を成立させる超越論的原理として提示されていること、②そこでの人間主体は、独立した認識主体ではなく、地層の運動の一部に組み込まれていること、③地質学の議論は、いかなる人間的特権性も含まない自然内部に諸概念の自律的運動性を見出す「非人間主義」(inhumanisme)であることを明らかにした。これにより、『千のプラトー』の地質学の援用は、超越論的原理(カテゴリー)の探求という『差異と反復』以来の哲学的企図に応えるものであるとともに、そこにおける地層化の議論に見出される自然内部における構成の問題は、『哲学とは何か』において哲学という固有の領域を確保し、哲学史を解体するとともに、哲学的思考に固有の時間性をもたらす「内在平面」の概念化を促すようドゥルーズ哲学を導いたと考えられる。これらの議論から、本研究は、カントの超越論哲学における人間主義批判、非人間主義的な超越論的原理の探求、自然内部における構成の問題がドゥルーズの自然哲学を構成する中心的特徴として理解されるべきであることを確認した。

言及状況

Twitter (4 users, 4 posts, 9 favorites)

「ドゥルーズの自然哲学」で検索してみました。是非もう少し詳細な成果を知りたいところ。https://t.co/acy8wrQnZB

収集済み URL リスト