著者
エティエンヌ バンブネ 小林 卓也
出版者
大阪大学人間科学部社会学・人間学・人類学研究室
雑誌
年報人間科学 (ISSN:02865149)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.49-64, 2010 (Released:2010-00-00)

訳 : 小林, 卓也 エティエンヌ, バンブネ(ジャン・ムーラン・リヨン第3大学)
著者
小林 卓也
出版者
大阪大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2016-08-26 (Released:2016-09-02)

本研究はフランスの哲学者ジル・ドゥルーズの哲学を独自の自然哲学として提示することを目的としている。この目的を達成するべく、本年度はまず、ドゥルーズ哲学を三つの時期に分類し、その思想的変遷を分析することで、そこからドゥルーズの自然哲学の中心的特徴を取り出すことを試みた。すなわち、ドゥルーズ哲学において自然という主題は、1.『差異と反復』(1968)に代表されるカントの人間主義批判、2.精神分析家フェリックス・ガタリとの共著『千のプラトー』(1980)における自然科学の援用、3.晩年の著作である『哲学とは何か』(1991)における自然という主題の哲学への導入、という三つの時代区分を経て徐々に前景化される。とりわけ、本研究では、『千のプラトー』で援用される地質学の議論を分析し、①「地層」概念があらゆる経験を成立させる超越論的原理として提示されていること、②そこでの人間主体は、独立した認識主体ではなく、地層の運動の一部に組み込まれていること、③地質学の議論は、いかなる人間的特権性も含まない自然内部に諸概念の自律的運動性を見出す「非人間主義」(inhumanisme)であることを明らかにした。これにより、『千のプラトー』の地質学の援用は、超越論的原理(カテゴリー)の探求という『差異と反復』以来の哲学的企図に応えるものであるとともに、そこにおける地層化の議論に見出される自然内部における構成の問題は、『哲学とは何か』において哲学という固有の領域を確保し、哲学史を解体するとともに、哲学的思考に固有の時間性をもたらす「内在平面」の概念化を促すようドゥルーズ哲学を導いたと考えられる。これらの議論から、本研究は、カントの超越論哲学における人間主義批判、非人間主義的な超越論的原理の探求、自然内部における構成の問題がドゥルーズの自然哲学を構成する中心的特徴として理解されるべきであることを確認した。
著者
小林 卓也
出版者
京都産業大学
雑誌
京都産業大学論集. 人文科学系列 (ISSN:02879727)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.181-194, 2013-03

本稿の課題は,フランスの哲学者ジル・ドゥルーズと,精神分析を専門とするフェリック ス・ガタリとの共著『千のプラトー』(1980)に見いだされる言語観の内実とその射程を明ら かにすることである。彼らが端的に述べているように,「あらゆる言語(langue)は本質的に 非等質的な,混合した現実である」。しかし,チョムスキーによる生成文法を念頭に置きなが ら,言語学はこうした言語現象の多様性に目を向けようとせず,文法規則や言語の等質的体系 性を抽出することだけに終始しており,そこには,われわれの多様な言語活動を均質化し規格 化することで,自らの科学性を担保する政治的関心しかないと彼らは批判する。ここには,言 語を異質な要素からなる多様体とし,その多様性をいかに捉えるのかという彼らの企図が明瞭 に現れている。本稿は,こうした彼らの言語観がどのような問題意識と結びついているのかを 以下の手順で明らかにする。 まず,『千のプラトー』において彼らがジョン・L・オースティンの発話内行為に見出した 論点を確認し(第一章),それが60 年代のドゥルーズ哲学の延長上にあることを指摘する(第 二章)。というのもドゥルーズこそ,言語の本質を,身体や行為といった物理的なものと,そ れによって表現される意味や出来事といった非物体的なものの二元性という論点から考察して いたのであり,『千のプラトー』の主眼は,その言語の二元性の連接をいかに捉えるのかとい うことにあるからだ。こうした論点からすると,注目されるべきは『千のプラトー』において ルイ・イェルムスレウが占める役割である。イェルムスレウ言語学における表現と内容の連帯 性,および形式と実質という概念の導入は,言語における二元性への問いに一定の回答を与え ている(第三章)。最後に,彼らの議論がいわゆる言語理論の枠内に留まることなく,とりわ け彼らがミシェル・フーコーと共有するある歴史認識と結びついていることを確認し,その理 論的射程を特定したい。
著者
松村 秀幸 小林 卓也 河野 吉久
出版者
公益社団法人大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.16-35, 1998-01-10
参考文献数
92
被引用文献数
10

針葉樹のスギとウラジロモミおよび落葉広葉樹のシラカンバとケヤキの苗木に, 4段階の濃度のオゾンと2段階のpHの人工酸性雨を複合で20週間にわたって暴露した。オゾンの暴露は, 自然光型環境制御ガラス室内において, 1991および1992年に観測した野外オゾン濃度の平均日パターンを基準(1.0倍)とした0.4,1.0,2.0および3.0倍の4段階の濃度で毎日行った。オゾン濃度の日中12時間値(日最高1時間値)の暴露期間中平均値は, それぞれ18(29), 37(56), 67(101)および98(149)ppbであった。人工酸性雨の暴露は, 開放型ガラス室内において, 夕方から, pH3.0の人工酸性雨(SO_4^<2-> : NO_3^<3-> : Cr=5 : 2 : 3,当量比)および純水(pH5.6)を, 1週間に3回の割合で, 1時間あたり2.0〜2.5mmの降雨強度で1回8〜10時間行った。シラカンバとケヤキでは, 2.0倍および3.0倍オゾン区において白色斑点や黄色化などの可視障害が発現し, 早期落葉も観察された。ケヤキでは, pH3.0の人工酸性雨区においても可視障害が発現したが, シラカンバでは人工酸性雨による可視障害は全く認められなかった。スギとウラジロモミでは, オゾンあるいは人工酸性雨の暴露による葉の可視障害は全く認められなかった。最終サンプリングにおけるスギ, シラカンバおよびケヤキでは, 葉, 幹, 根の各器官および個体の乾重量はオゾンレベルの上昇に伴って減少した。ウラジロモミでは, 根乾重量がオゾンレベルの上昇に伴って減少した。一方, pH3.0区におけるウラジロモミおよびケヤキの葉および個体の乾重量はpH5.6区に比べて減少した。また, スギ, シラカンバおよびケヤキの純光合成速度はオゾンレベルの上昇に伴って減少した。シラカンバおよびケヤキでは, 葉内CO_2濃度-光合成曲線の初期勾配である炭酸固定効率もオゾンレベルの上昇に伴って低下した。ウラジロモミではオゾン暴露によって暗呼吸速度が増加した。さらに, pH3.0区におけるウラジロモミおよびケヤキの暗呼吸速度もpH5.6区に比べて減少した。オゾンと人工酸性雨の交互作用は, 供試したいずれの4樹種の地上部と根の乾重量比(T/R)において認められ, オゾンレベルの上昇に伴うT/Rの上昇の程度がpH5.6区に比べてpH3.0区において高かった。