著者
武藤 多津郎 山本 紘子 宮地 栄一
出版者
藤田保健衛生大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

我々はこれまで遺伝性アルツハイマー病(FAD)の原因遺伝子の一つであるプレセニリン1(PS1)の突然変異がもたらす脂質とくに糖脂質代謝への影響を明らかにし、それが神経細胞の情報伝達に如何なる影響を与えるのかを主に脂質ラフトの観点から研究を展開してきた.その結果現在まで下記のような事実を明らかにした.1)変異PS1の発現する神経芽細胞腫では、グルコシルセラミドのsteady state levelが著減しており、したがって全ての種類のガングリオシドもまた著減している.2)この異常は、同じ変異PS1を発現するトランスジェニックマウス脳組織を用いた解析でも確認された.3)これら異常の原因を詳細に調べたところ、グルコシルセラミド合成酵素蛋白量が変異PS1の発現により著明に減少することが明らかとなり、この変異PS1の有するγ-セクレターゼ活性が前記酵素を切断・分解している可能性が示唆された.4)さらに、最終年度ではこうした変異PS1を発現する神経芽細胞腫を用いてパッチクランプ法でイオンチャネル機能を及ぼす影響を調べたところ、変異型細胞ではNaチャネル機能大きな異常が存在することを見出した(論文作成中)5)また、上記のグルコシルセラミドの本症病態発現に於ける意義を探るため、この中性糖脂質に対する自己抗体を有する疾患を同定するためのスクリーニングを神経患者血清を用いて実施し、陽性となる疾患を同定した.これら疾患は何れも亜急性の記憶・認知機能障害を呈する疾患であった(FEBS Lett 2006)

言及状況

Twitter (1 users, 1 posts, 0 favorites)

>我々はこれまで遺伝性アルツハイマー病(FAD)の原因遺伝子の一つであるプレセニリン1(PS1)の突然変異がもたらす脂質とくに糖脂質代謝への影響を明らかにし、それが神経細胞の情報伝達に如何なる影響を与えるのかを主に脂質ラフトの観点… http://t.co/j7Md0a6GLg

収集済み URL リスト